海外渡航を予定されている方へ

海外渡航を予定されている方へ

黄熱の発生地域(成田空港検疫所)

海外渡航前に必要なワクチンの種類は渡航先によって、そしてこれまでにどのようなワクチン接種を受けたかによって異なります。また出発までにどの位の時間的余裕があるかもワクチン接種ができるかどうかを判断するうえで重要です。

海外渡航前に必要なワクチンには、a)入国のために必要なワクチン接種と b)自分を病気から守るため(自己防衛のため)のワクチン接種があります。

現在入国のために要求されるワクチン接種は黄熱ワクチンの接種だけです。しかし、黄熱の流行国すべてが黄熱ワクチン接種を要求してはいません。ですから、渡航先によっては要求されなくとも自己防衛のために黄熱ワクチン接種が望ましい場合もあります。

黄熱ワクチンは当院では接種していません。

ご希望の方は東京検疫所または成田空港検疫所にご相談ください。

一般的に出発前に接種しておいたほうがよいワクチン

A)欧米諸国へ行く成人

マラリアの流行地域(成田空港検疫所提供)

破傷風ワクチン、またはジフテリア・破傷風2種混合ワクチンだけでよいでしょう。ときに、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチンを接種した方がよい場合もあります。麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘などにかかったこともワクチン接種したこともない人はワクチン接種をすませてから出発したほうがよいでしょう。

B)欧米諸国へ行く小児

原則として日本で接種が勧奨されているワクチンはすべて接種をすませ、任意接種のおたふくかぜワクチンや水痘ワクチンも接種したほうがよいでしょう。日本脳炎ワクチンは帰国後まで接種を延期してもよいと思います。

生後間もなく出発する場合は、赴任先で現地の予防接種スケジュールに従ってワクチン接種を受けるのもよいと思います。しかし、欧米諸国の多くでは一般的にBCG接種を行っていないので、BCGはすませてから出発したほうがよいでしょう。

C)アジア・アフリカ・中南米へ行く成人

少なくとも破傷風ワクチン、またはジフテリア・破傷風2種混合ワクチンとA型肝炎ワクチンの接種は受けてください。時間的に余裕があれば、狂犬病ワクチン、B型肝炎ワクチン接種を受けます。地域によっては日本脳炎ワクチン追加接種、ポリオ生ワクチン追加接種、腸チフスワクチン、髄膜炎菌ワクチン、黄熱ワクチンの接種が必要です。

D)アジア・アフリカ・中南米へ行く小児

日本で接種が勧奨されているワクチンはすべて接種をすませ、任意接種のおたふくかぜワクチンや水痘ワクチンも接種し、さらにポリオ生ワクチンを1回追加します。  生後数ヶ月で出国する場合も、すべてのワクチン接種を赴任先で予定せず、BCGとポリオ生ワクチン1回はすませてから出発したいものです。生後6ヶ月位まで日本にいられる場合は、BCG、ポリオ生ワクチン2回、ジフテリア・百日咳・破傷風3種混合ワクチン3回の接種が可能でしょう。

勧奨のワクチン接種が一通りすんでいる子どもの場合は、狂犬病ワクチン、A型肝炎ワクチンなどの接種も考えます。地域によっては腸チフスワクチン、髄膜炎菌ワクチン、黄熱ワクチンの接種が必要になります。

マラリアのワクチンはまだ実用化されていません。

感染症流行地の最新情報はこちら(外部リンク)

参考

海外渡航者のための感染症情報(外部リンク)

狂犬病曝露前免疫について

日本では昭和32年以降、昭和45年にネパールでイヌに咬まれて帰国後に発病した1例、平成18年にフィリピンでイヌに咬まれて帰国後に発病した2例以外には発生の報告がありませんが、狂犬病は現在もなお世界各地で発生しています。東南アジア、南アジア、アフリカ、中南米諸国ではイヌの狂犬病が多発しています。北米ではスカンク、アライグマ、コウモリの狂犬病が発生しています。中南米ではイヌやネコの狂犬病以外にコウモリ、特に吸血コウモリの狂犬病が問題になっています。

このような地域に長期間滞在する人はあらかじめ狂犬病ワクチン接種を受けてから出発することをお勧めします

狂犬病曝露前免疫は1ヶ月おきに2回狂犬病ワクチンを接種し、その6ヶ月後に3回目を接種して基礎免疫完了としています。時間的余裕がない場合は、2回でもかなりの効果が期待できますので、出発前の接種をお勧めします。