放射線治療に関するよくある質問にお答えします

放射線治療の副作用や、IMRTとは?など実際に治療を受ける患者さんからよくいただく質問に、駒込病院放射線治療部の各分野の担当者がお答えします。

放射線治療の副作用にはどのようなものがありますか?

治療の範囲、強さによって副作用は異なります、原則として治療を行う部位に副作用が出ます。抗がん剤の副作用や、腫瘍による症状と区別がつかないこともしばしばあります。治療の強さや範囲によって症状が出る頻度も異なりますので、放射線治療担当医にお尋ねください。
副作用には治療中、治療直後に問題に症状が出る急性期障害(一般的に一過性の症状です)と、しばらくしてから問題になる晩期障害があります。
頭皮に放射線が及ぶと脱毛が起こります。
口に治療が及ぶと口内炎、口腔乾燥、味覚障害(味が分からなくなる)が起こります。
胸部の治療では、食道に照射が及ぶと食事のつかえ(食道炎)が、肺に放射線が当たると治療後しばらくしてから肺炎が起こることがあります。
腹部、骨盤部に治療をすると主に胃や腸に影響が出て、吐き気や下痢の症状が出ることがあります。
皮膚に強い線量が照射されると、発赤したり、皮膚がむけたりという、皮膚炎(日焼けのような症状)がでます。

手術を勧められました、放射線治療で済ませることはできませんか?

放射線治療と手術には、局所治療(治療した範囲に直接的な効果がある)である、がんの根治を目指せる、という様な共通点がありますが相違点もあります。
放射線治療にない手術の利点としては、放射線治療では反応が予想できないものも直接腫瘍を取り除ける、切除したものがどのような腫瘍であるかを後から評価できる、病変の広がりを目視で確認できる、などです。
患者さんの状態、病期を鑑みてよりよい治療成績が報告されている方法をお勧めします。放射線治療を希望されて受診する患者さんにも、放射線腫瘍医としても手術をお勧めすることもあります。たとえば乳がん、胃がんなどを手術をせずに放射線治療だけで治してほしいというご希望をお持ちの患者さんがしばしば受診されますが、いずれも手術をお勧めしています。
最近では放射線治療の適応範囲がガイドライン等ではっきり示されるようになりました。一定の病期の声門部がんや肛門がんなど、機能を温存するために手術よりも放射線治療が優先されることもあります。
また、治療技術の発展により肺がんや肝細胞がんのなどの定位照射が可能になり、高齢の方や、具合が悪く従来の手術ができない方に対しても根治性の高い治療が行われるようになっています。

治療期間中に気を付けることはありますか?

治療の範囲や強さにより、患者さんごとに注意点は異なりますので、開始時に確認してください。一般的な注意事項としては以下のようなものがあります。

  • 身体に印(マーキング)が付く場合は、治療が終了するまで消さないように管理していただく必要があります。その場合は浴槽での入浴は避け、シャワー浴にしてください。また、こすったりしないようにしてください。
  • 治療する範囲の皮膚への刺激は避けていただきます。皮膚炎が強い場合は入浴や衣服などに工夫が必要になります。

治療期間中の運動は控えた方がいいですか?

放射線治療中は、毎日の治療や病気そのものの影響などにより疲労しやすい状態にあります。最後まで治療が出来るよう、無理のない範囲で行ってください。散歩やストレッチなどの適度な運動は、気分転換や体力維持のために続けていただいて構いません。

治療期間中にお酒を飲んでもいいですか?

飲酒を行うと、血管が拡張して治療部位の炎症を強めてしまう可能性があります。治療期間中の飲酒は控えていただくよう説明しています。飲酒の再開に関しても、担当医とご相談ください。

治療前後で予防接種を受けても良いですか?

外来で治療をされている、または治療後在宅で療養されている患者さんの場合は、一般的な予防接種は基本的には受けていただいてよいと思います。がん患者さんでは感染症が重篤化しやすいので、特に担当の医師から勧められた場合は接種を受けることをお勧めしています。ただし、放射線治療中、化学療法中には接種が不適切なものもありますので、接種を受ける機関で治療の内容を申告してください。

治療前後で健康診断を受けても良いですか?

ケースバイケースで一概には説明できません。ただし、外来で治療中である、ないし治療後自宅で療養されている患者さんの場合は、通常通り検診を受けていただいてもよいと考えます。ただし、短い間隔で内視鏡検査やCT検査(多くの場合オプション検査)が重複することは望ましくないと考えます。
また、病変や治療が健康診断の結果に影響することがありますので、検査を受ける際に受診先で治療の状況を申し出てください。

腫瘍はいつごろ小さくなりますか?

病気によってそれぞれです。治療中、治療後にすぐに小さくなることもありますし、形として残っていても増大が止まって、その後ゆっくり小さくなることもあります。反応に乏しく増大する場合もあります。
多くの病態では治療後1-2か月で、CTや内視鏡などの評価を行います。それより前では反応がはっきりしない、または治療による炎症により評価が難しいことがあるためです。
症状をよくするために治療を行った場合は、病変の大きさよりも症状の改善が重視されるので、画像評価を行わないこともあります。
乳がんの術後照射のように腫瘍を取り除いた後に治療を行うこともあります。この場合腫瘍は治療前からありませんので、目に見える効果は出ません。再発のリスクを下げることが治療の目的です。

IMRTとは何ですか?

日本語では強度変調放射線治療とよばれます。英語でIntensity Modulated Radiation Therapyといい、頭文字をとって「IMRT」と読んでいます。放射線はそのまま照射すると平坦に照射されますが、照射中に放射線をブロックする装置を事前にプログラムした通りに動かすことで放射線強度に濃淡をつけることが可能になります。IMRTとはこの技術を利用して、放射線を照射したくない正常臓器には線量を最小限に抑え、腫瘍部分に線量を集中させる治療の総称です。主に腫瘍と放射線に弱い正常臓器が隣接しているような場合に利用されます。

IMRT
IMRT

左の図はIMRTの時の照射のアニメーションです。(クリックすると拡大表示できます)緑が前立腺のターゲット、ピンクが照射を避けたい直腸です。直腸の部分が治療される時間が短くなるように、早く通り過ぎるように設定されているのがわかりますか?
右の図のように濃淡のある線量分布になります。黒いところほど放射線が強く照射されています。このような照射野を複数の方向から組み合わせると治療したいターゲットに合わせた線量分布が出来上がります。

トモセラピーとは何ですか?

放射線治療装置の商品名のひとつです。外見はCT装置と似ており、治療中に患者さんの周りを回転しながら放射線を照射していきます。CT撮影と同様に患者さんが横たわっている寝台がスライドしながら治療を行いますが、CT撮影に比べると治療時間が長く、15~20分程度で1回の照射(治療)が終わります。当院ではトモセラピーを用いて主に前立腺癌や頭頸部腫瘍のIMRTを行っております。

サイバーナイフとは何ですか?

放射線治療装置の商品名のひとつです。産業用ロボットアームの先端に放射線を照射する装置が搭載されています。ロボットアームの動きを最大限に活用して、腫瘍に放射線をさまざまな方向から照射することができる装置です。主に限局した5 cm以下の小さい腫瘍に対し、通常よりも量の多い放射線を照射する治療に用います。

2021年7月更新 清水口卓也