分野 上部消化管外科

食道癌、胃癌、食道や胃の粘膜下腫瘍(GIST:ジスト)などの腫瘍性病変の手術治療を行っています。日本食道学会食道外科専門医準認定施設、日本胃癌学会認定施設(A)に認定されており質の高い治療が可能です。それぞれの病気の詳細は国立がん研究センターのがん情報サービスが発行している以下のパンフレットをご活用ください。

食道がんPDF(PDF 1.2MB)
胃がんPDF(PDF 2.9MB)
消化管粘膜下腫瘍(GIST)PDF(PDF 1.7MB)

治療の特徴

体に優しい低侵襲手術

上部消化管外科チームでは体にやさしく負担の少ない低侵襲手術を積極的に行っています。食道癌、胃癌、GISTに対する手術は、以前は胸やお腹を大きく切開する開胸・開腹手術が一般的でした。しかし最近では5mm〜1cm程度の穴を数カ所あけて手術を行う低侵襲な内視鏡下手術(胸腔鏡・腹腔鏡手術)が普及してきています。内視鏡下手術は開胸・開腹手術と比較して傷が小さいため手術後の痛みが少なく、体の回復がはやいです。そのため早期の社会復帰が可能であり、また集学的治療が必要な患者さんでは手術後早期に抗がん剤治療などの次の治療を開始できるという利点があります。一方内視鏡下手術は直接臓器を触りながら手術を行うことができないため技術的に難しいという欠点があります。われわれ上部消化管外科チームには内視鏡下手術の指導者としての技術を認定する日本内視鏡外科学会技術認定取得者3名を擁しており、進行癌に対しても癌の根治性を重視した上で積極的に安全かつ適切な内視鏡下手術を実践しています。

ロボット支援下手術

食道癌、胃癌に対しては主に手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を使用したロボット支援下手術を行っています。「ダヴィンチXi」による精細な3D画像と多関節機能をもつ手術器具を使用することでより精密で質の高い胸腔鏡下・腹腔鏡下手術が可能となりました。当院ではロボット支援下手術の経験が200例を超えており、十分な経験のもとに安全なロボット支援下手術を行っています。詳細は以下のページを御覧ください。

ロボット手術についてPDF(PDF 924.8KB)

手術1
手術2

正確な診断

内視鏡検査やCT検査などの画像検査を用い、腫瘍の広がりや、リンパ節転移の有無、他臓器への浸潤などを正確に診断することは手術の適応を決定したり、適切な術式を選択するうえで極めて重要です。上部消化管グループでは消化器内科や放射線科および東京都がん検診センター消化器科と連携し、正確で質の高い診断を行っています。週1回の外科と消化器内科の症例検討会で患者さんの治療方針を検討しています。

厳重な術前・術後管理

手術後は合併症(手術による副作用)が起きる可能性がゼロではありません。特に大きな手術の後や、ご高齢・余病のある患者さんでは合併症の発症リスクが高くなります。余病(糖尿病、心臓病、腎臓病、脳梗塞など)のある患者さんに対しては他科と連携しながら、手術前から十分な準備を行い、厳重な手術後の管理を行います。
万が一合併症が起きた場合は、迅速に対応し早急に治療を開始することで、できるだけ重症化しないよう厳重な術後管理を行っています。またリハビリテーション科と連携し、術後早期から(必要な場合は手術前から)リハビリを開始することで、術後の筋力低下や呼吸機能の低下を防ぎ、早期に日常生活に戻っていただけるようサポートします。

集学的治療

進行した食道癌・胃癌の場合、化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を併用した治療を行います。化学療法や放射線治療を行い腫瘍を縮小させてから手術を行う術前治療や、手術後に癌の再発率を下げるための術後補助化学療法など、患者さんの状態や癌の進行度にあわせて適切な治療を行います。治療方針は基本的に各疾患の治療ガイドラインに基づいて計画しています。その上で患者さん一人ひとりの年齢・持病・生活状況等を考慮し、最も適した治療をご本人やご家族と一緒に考えていきます。

栄養管理・指導

食道や胃の手術後は食事の内容、1回の食事の量、食べる速さなどを工夫していただく必要があります。当院では手術が決まった患者さんに対して、手術前から栄養士による栄養管理・指導を開始します。手術がおわり退院した後も、外来で食事・栄養指導を定期的に行うことで、患者さんの食事に対する不安をできるだけ解消します。また糖尿病や高コレステロール血症など特に栄養管理が必要な持病をもつ患者さんに対しても適切な指導を行います。

術後のフォロー

癌の治療は手術をして終わりではありません。術後5年間は癌の再発がないか検査していく必要があります。治療ガイドラインにもとづき外来診療を行い、癌の進行度、患者さんの状態によって適切な術後フォローを行います。
また地元のかかりつけ医の先生と密に連携をとりますので、当院から遠いところにお住まいの患者さんも安心して治療をうけていただけます。

治療実績

胃切除

201820192020202120222023
胃全摘開腹910510105
腹腔鏡15184900
ロボット支援108101010
幽門側胃切除開腹1012181289
腹腔鏡50351626103
ロボット支援142533364449
幽門保存胃切除開腹000000
腹腔鏡010000
ロボット支援134001
噴門側胃切除開腹010021
腹腔鏡8193341
ロボット支援13461114
胃局所切除開腹000010
腹腔鏡158138711
合計124133104120102104

胃がん手術の件数と術式の割合

食道切除

201820192020202120222023
食道亜全摘胸腔鏡14161215146
ロボット支援000004
開胸001000
合計141613151410
  • 2020年は新型コロナウイルス感染症による影響で手術件数が減少しましたが、2021年に入り手術件数は戻ってきています。

上部消化管外科チーム医師

石橋雄次 (平成14年札幌医科大学卒) 医長

  • 資格等
    日本外科学会外科専門医・指導医
    日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医
    日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員
    手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格・プロクター(指導資格)
    日本食道学会食道科認定医
    日本消化器病学会消化器病専門医
    日本がん治療認定機構がん治療認定医
  • 主な経歴
    順天堂大学 消化器・低侵襲外科
    国立がんセンター中央病院 外科

斎藤範之(平成24年群馬大学卒)

  • 資格等
    日本外科学会外科専門医
    日本消化器外科学会消化器外科専門医
    日本食道学会食道科認定医
    手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格
    日本がん治療認定機構がん治療認定医

古田隆一郎(平成27年獨協医科大学卒)

  • 資格等
    日本外科学会外科専門医
    日本消化器外科学会消化器外科専門医
    手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格
    日本がん治療認定機構 がん治療認定医

畑尾史彦(平成6年山形大学卒) 医長

  • 資格等
    日本外科学会外科認定医・専門医・指導医
    日本消化器外科学会消化器外科専門医
    日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員
    日本内視鏡学会専門医・指導医
    日本肥満学会肥満症治療専門医・指導医
    日本肥満症治療学会評議員
    日本静脈経腸栄養学会学術評議員・TNT講師
    日本外科代謝栄養学会教育指導医・評議員・総務委員・広報委員
  • 主な経歴
    東京大学医学部附属病院 胃食道外科
    東京大学大学院臓器病態外科学

今村和広(平成2年山梨医科大学卒) 副院長

  • 資格等
    日本外科学会外科専門医・指導医
    日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医
    日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員
    手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格・プロクター(指導資格)
    Robo-Doc Pilot国内B級
    日本食道学会食道科認定医
    日本内視鏡学会専門医
    日本がん治療認定機構がん治療認定医
  • 主な経歴
    東京大学医学部附属病院 胃食道外科
    東京大学大学院臓器病態外科学