骨転移の脊髄圧迫に対する手術と定位照射(第II相臨床試験)UMIN000030056
概要
背骨の転移によって脊髄圧迫を来たしている患者さんに対して「手術と定位放射線治療(いわゆるピンポイント照射)」を行います。
対象となる患者さん
- 診断:癌の診断および骨転移の診断がついている
- 画像所見:骨転移による脊髄圧迫が認められる
- 全身状態:良好(手術に耐えられる)

骨転移の脊髄圧迫に対する標準治療
骨転移によって脊髄が圧迫されると障害部位以下の脊髄は機能を失い、下肢麻痺など重篤な状態に陥ります。
標準治療は「手術と術後の放射線外照射(30Gy/10回)」です1)。しかし標準治療の成績にも限界があり、より高線量の放射線治療を行うことによって治療成績を改善させる試みがなされています2)。
1) Patchell RA, Tibbs PA, Regine WF, et al. Lancet 2005; 366: 643-8.
2) Tao R, Bishop AJ, Brownlee Z et al. Int J Radiation Oncol Biol Phys, 95(5), 1405-1413, 2016
定位放射線治療
定位放射線治療とは、多方向からの放射線を高い精度で腫瘍に集める技術を指し、狭い範囲に放射線を照射することからピンポイント照射とも表現されます。高い精度の照射が可能となった結果、周囲の正常臓器を避け、かつ腫瘍に対して高線量の投与が可能となりました。
分離手術後に定位放射線治療を用いた高線量照射を行うことで臨床成績の改善を目指します。
治療法


起こり得る副作用
副作用の現れ方には個人差があるため、その頻度や程度などを完全に予測することはできません。以下に起こり得る主な副作用を列挙します。
1) 手術後に現れる可能性のある副作用
- 感染…手術した傷が化膿します。抗生剤の投与や場合によって再手術を必要とします。
- 神経障害…手術中に神経を操作したことで痛みや痺れ、麻痺が出ることがあります。
- 深部静脈血栓症…足の静脈の中に血栓(血の塊)ができ、足が腫れや、肺の血管が詰まって呼吸困難が生じることがあります。
- その他…手術ストレスによる内臓の合併症など
2) 定位照射によって照射中・照射直後に現れる可能性のある副作用
- 皮膚炎…日焼けのような症状に対して、塗り薬で対応します。
- フレア現象…照射後一時的に疼痛が増強します。
- (頸部・胸部の照射)咽頭炎・食道炎…嚥下時の疼痛やつかえ感を認めます。
- (腹部・骨盤の照射)腸炎…下痢症状があれば下痢止めを使用します。
- その他:倦怠感、悪心など
3) 照射後数ヶ月~数年して現れる可能性のある副作用
- 皮膚炎…皮膚が硬くなったり、潰瘍になったりします。
- (胸部の照射)放射線性肺炎…熱・咳・息苦しさなど
食道炎…食道の潰瘍、狭窄など - (腹部・骨盤の照射)腸炎…下痢や出血など。
- 放射線性脊髄症…頻度は稀ですが、下半身麻痺など重篤な症状となりえます。
- 圧迫骨折
2021年7月 伊藤 慶 更新