脳の病気と老年期のこころの外来

神経精神医学(Neuropsychiatry)と呼ばれる専門分野を担当する外来です。脳神経疾患の精神症状、精神科疾患にともなう運動症状、診断・治療に脳神経内科・精神科双方の専門性を要するその他の状態を診療の対象とします。脳神経内科と精神科の両領域に精通した医師が中心となり、精神面・認知面・運動面の全てに配慮した治療やケアを提供いたします。
当院にはMRI(3テスラ)、高解像度CT、核医学検査(DATスキャン、MIBG心筋シンチ、脳血流シンチ)、脳波など、診断に必要な高度な検査機器がそろっています。

診察の対象となる病気・状態

1.パーキンソン関連疾患の精神症状

パーキンソン病やその類縁疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症など)は、動作緩慢や歩行障害などの運動障害を主症状とします。通常、これらの疾患の診断・治療は脳神経内科が担当します。しかし、これらの疾患の経過の途中において幻覚・妄想、重度のうつ、焦燥や興奮などの精神症状が高い頻度で出現するため、しばしば精神科医による診察や治療が必要となります。
パーキンソン関連疾患の精神症状の薬物療法は複雑です。なぜなら、抗精神病薬がパーキンソニズムを悪化させ、抗パーキンソン薬が精神症状を悪化させるというシーソーの関係にあるからです。運動面・精神面の双方のバランスに配慮した治療やケアには、高度な専門的判断が必要となります。

 

2.初老期・老年期発症の精神障害

精神疾患の4分の3が思春期から青年期に発症すると言われています。一方、初老期(45歳以上)、老年期(65歳以上)に精神症状が出現することも決してまれではありません。
初老期・老年期発症の精神障害の原因として脳神経疾患(前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、微小な脳血管障害など)が高い頻度で認められます。初老期・老年期発症の精神症状正しい診断や適切な治療には、脳神経内科と精神科の双方についての専門的な知識・技術が求められます。

 

3.薬剤性パーキンソニズム

初老期・老年期の人が向精神薬をはじめとする薬物を服用すると、動作緩慢、歩行障害、手足・顔のふるえなどの運動障害が出現することがあります。このような状態を薬剤性パーキンソニズムと呼びます。薬剤性パーキンソニズムの治療の原則は原因薬剤の減量・中止ですが、それによって精神状態が悪化してしまったのでは本末転倒になり兼ねません。また、一見すると薬剤性パーキンソニズムと思われるケースが、詳しい診察・検査によってパーキンソン病の合併であると判明することもあります。このような場合、パーキンソン病治療薬の内服によって大幅に運動障害が改善する可能性があります。薬剤性パーキンソニズムの正しい診断、適切な対処のためには、脳神経内科と精神科の双方についての専門的な知識・技術が求められます。

 

4.若年性認知症

いわゆる生産年齢(65歳未満)に発症する認知症を若年性認知症と呼びます。若年性認知症には老年期に発症する認知症と異なる対応が必要となります。第一に、この年齢の人たちが果たすことを求められている社会的・経済的な役割をサポートするための配慮が必要になります。第二に、若年性認知症は背景疾患や出現する症状も多様であるため、診断・治療に高度な専門的知識を要します。
例えば、前頭側頭型認知症は初老期(65歳未満)に発症することの多い疾患です。上述のとおり、脱抑制や常同行動など、介護者にとって対処の難しい精神・行動症状をきたします。また、進行性核上性麻痺という疾患は初老期に脱抑制などの精神・行動症状で発症し、その後に動作緩慢やバランス障害などの運動障害が出現することがあります。老年期においてはもの忘れで発症することの多いアルツハイマー病も、初老期発症のケースでは言語障害(失語症)や視空間認知障害が初発の症状であることが珍しくありません。

 

受診の方法

予約制です。当院予約センターでご予約ください。
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診療内容についての問い合わせ

東京都立松沢病院 患者・地域サポートセンター
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