産婦人科(羊水検査・帝王切開)

診療科のご案内

羊水検査について

羊水とは

淡黄色の液体で、この中に胎児が浮いていて、外力から常に守られています。胎児は羊水の中で自由に動き回り、呼吸の練習や尿を出す練習をしています。
羊水は絶えず胎児に飲み込まれ、循環しているため、常に入れ替わっています。そのため、その中には胎児由来の細胞が含まれています。

羊水検査で分かること

羊水検査によって染色体異常(数や構造の異常)が分かります。染色体に異常があっても表現型が正常な場合や、異常がどのような症状を起こすか分からないことがあります。また、染色体異常以外の原因による胎児の疾患や先天異常については診断できません。

羊水検査の限界

微細な染色体異常や遺伝子異常までは診断できません。また、染色体モザイク(正常細胞と異常細胞が両方存在する状態)の場合は、正確に診断できないことがあります。羊水が採取できない場合や母体血液の混入など何らかの理由により培養がうまくいかず、結果が出ないことがあります。

羊水検査の時期と対象者

  1. 妊娠15週から17週の時期(多くは16週以降)に行うのが適当と考えられています。
    以下の方で、検査を希望し検査の意義について理解が得られた場合に羊水検査を行います。
    ・自分自身またはご主人が染色体異常の保因者であると言われた方
    ・染色体異常児を分娩したことがある方
    ・35歳以上で妊娠した方
    ・児が重篤な疾患に罹患する可能性のある方

羊水検査の危険度

採取後の流産率は妊娠15~16週の場合0.3~0.5%と言われています1)。また破水(羊水が流出すること)は0.1~1.7%と言われています2)3)。
それ以外の合併症として、次のことが起こる場合があります。

  1. 子宮内感染
  2. 血管損傷(血腫ができる、胎盤が剥がれるなど)、胎児損傷
  3. 羊水塞栓(羊水内の細胞が母親の血管内に入り、肺の血管に詰まる疾患)
  4. 母体が感染症の場合、母子感染
  5. 母体がRh(-)の場合、Rh感作など

羊水検査の手順

羊水検査は原則として入院(1泊2日)して行います。約2週間で結果が出ます。

  1. ベッドに横になります
  2. 腹壁を消毒します
  3. 超音波で胎児を確認しながら、腹壁から細い針を子宮内に刺入します
  4. 約20mlの羊水を採取します
  5. 針を抜き、超音波で止血と胎児を確認します。
  6. 30分から1時間はベッド上で安静にします。検査後は、感染予防のため胎児に影響のない抗生物質と流産予防のため子宮収縮抑制剤を服用していただきます。
●画像の説明●

NIPTコンソーシアム HPより引用

羊水検査の費用

羊水検査に保険適応はなく、自費の検査になります。約14~17万円位かかります。

検査の申し込みについて

実際に染色体異常の結果が出た場合の対応について、ご夫婦で十分にお話合い下さい。検査については上記のようなリスクを伴うこと、正確な結果が出ないこともあることをご理解の上、ご希望の方は担当医師にお申し出下さい。
検査の申し込みはご夫婦連名でご記入願います。
なお、キャンセルをされる場合は、担当医師までご連絡ください。

参考文献

  1. ?Elias S. Amniocentesis and fetal blood sampling. The Johns Hopkins University Press 77,2010
  2. ?The Canadian Early and Mid-trimester Amniocentesis Trial(CEMAT) Group:Randomised trial to assess safety and fetal outcome of early and midtrimester amniocentesis.Lancet 351:1998
  3. ?Mungen E,et al:Pregnancy outcome following second-trimester amniocentesis:a case-control study.Am J Perinatol23:2006

 

以前に帝王切開を受けたことのある妊婦の皆様へ

帝王切開でお産をすると、次の妊娠で子宮の筋肉が破裂したりあるいは陣痛が発来しにくいといった問題が起こることがあります。したがって以前に帝王切開を受けたことのある方の次の分娩様式をどうするか(経膣分娩か帝王切開か)という選択は産科学の大きなテ-マのひとつです。どちらの分娩様式にも危険がともないます。

帝王切開後の経膣分娩における危険性

今回の陣痛により前回手術をした子宮の切開部分の傷がさける「子宮破裂」という状態になることがあります。その前兆として創部に限局した痛みを伴う場合もありますが、まれに何の症状もなく子宮が裂け、分娩後にそれが発見され開腹手術で子宮を修復することがあります。子宮破裂が疑われたときは帝王切開を行いますが、胎児にとっては致命的で母体にとっても非常に危険です。

帝王切開についての危険性

初回の手術に比べて、術中の出血量が多くなったり傷の治りも悪い場合があります。そのために輸血が必要になったり、場合によっては子宮を摘出しなければならなくなることも稀にあります。また、開腹手術は腸などの癒着の原因となり腸閉塞を引き起こすことがあります。そのためにも帝王切開を何度もおこなうことは避けるべきです。個人差はあると思われますが一般的には帝王切開は3回くらいまでが限界と考えられています。

当院の方針について

分娩方法については前回で帝王切開になった理由・経過、また、前回の切開部の子宮壁の厚さ、骨盤の大きさ・形、胎児の大きさ等を検討し総合的に判断します。経膣分娩の安全性が高いと思われる方については、なるべく経膣分娩の方向でおすすめしています。経膣分娩が非常に危険で好ましくないと思われた場合は、最初から帝王切開を受けることをおすすめします。(37週ごろの手術となります。) 経膣分娩を選択した場合でも、分娩開始後の経過に異常がある場合は帝王切開に変更することがあります。ご自分でも何らかの異常を感じたら職員にすぐ連絡してください。前回の帝王切開手術が未熟児などで特殊な術式であった方、術後の経過が順調で はなかった方等は慎重な検討が必要となりますので、必ずお申し出ください。

骨盤位で妊娠10ヶ月を迎えられる皆様へ

骨盤位(さかご)のお産が通常の頭位のお産より危険が大きいということはある程度ご存知と思いますが、医学的な問題点と当院の骨盤位分娩に対する方針を知っていただきたいと思います。必ず熟読の上、分娩方法について担当医師とご相談ください。

骨盤位の危険性について

骨盤位では微弱陣痛・遷延分娩・膀帯脱出などの分娩異常を伴いやすく、その結果、新生児仮死・死亡・外傷などの可能性が頭位分娩に比べると高くなります。分娩外傷としては頭蓋内出血、頭蓋骨・鎖骨・手足の骨折、上腕神経叢麻癖などの神経麻痒、斜頚、腹腔内臓器損傷、股関節脱臼などがあります。新生児仮死の結果として脳性麻痩などの重度の後遺症が残ることもあります。 しかし一口に骨盤位とはいっても状況によりその危険性は様々であり、骨盤位の中でも最も安全なタイプのものは頭位の分娩と安全性は変わらないという意見もあります。また骨盤位の場合、帝王切開でも新生児仮死・死亡・外傷などの危険性は頭位の児よりも高く、帝王切 開によっても危険性は必ずしも完全に回避できるものではありません。このような観点からも骨盤位全例を帝王切開にすることには反対との意見もあります。また帝王切開では母体に対するリスクは経膣分娩に比べ大きくなりますので帝王切開が一番いいとは必ずしもいえません。

当院の方針について

経膣分娩の危険性を左右する要因には、胎位(臀位か足位か)・母体の骨盤の大きさや形・妊娠週数や胎児の大きさ・初産か経産かなどがあり、それらを産婦人科医が総合的に判断します。最初から帝王切開を選択するのが好ましいと考えた場合には、予定帝王切開をおすすめします。検討の結果、骨盤位の中では相対的に安全性が高いと考えられる場合には経膣分娩をおすすめしています。
帝王切開を選択した場合には通常37週くらいで手術の予定を組みます。経膣分娩を選択された場合でも、分娩の途中で状況に応じて(分娩の進行が非常に遅い・途中で胎位が変わる・臍帯が脱出する等)には、その時点で帝王切開へと方針の変更をおすすめすること があります。