患者向け広報誌「OKUBO」
第8号 婦人科

大久保病院
婦人科 菊地孝行 医員
身体への負担が少ない腹腔鏡手術
婦人科の手術には、開腹手術、腹腔鏡手術、子宮鏡手術などいくつかありますが、ここでは腹腔鏡手術についてお話しします。
通常の開腹手術では腹部を10cmほど切開して行いますが、腹腔鏡手術ではお腹を大きく切ることはありません。お腹の中の様子を映し出す「腹腔鏡カメラ」を入れる穴(約12mm)を1つと、手術の器具を入れる穴(約5~10mm)を3つほど開けて行います。手術の際に開ける穴の位置や数は病気の種類や腹腔鏡手術の方法によって大きく変わることはありません。
おへそ周辺の穴から入れた腹腔鏡カメラでお腹の中の様子をモニターに映し出し、医師はそれを見ながら手術します。切開した部分は5~10mm程度と非常に小さいので傷口は表面の皮膚を一針縫うくらいで済みます。

腹腔鏡手術の主な手術方法に「腹壁吊り上げ式」と「気腹式」があります。これは腹腔鏡手術を安全に行うためのもので、吊り上げ式は腹壁をテント状に吊り上げることで、気腹式は腹腔内に炭酸ガスを注入し膨らませることで、手術する部分を見やすくします。
吊り上げ式は子宮筋腫などの手術を非常にやりやすくします。一方、子宮内膜症など少し細かい作業を伴う手術を行う際には気腹式で対応しています。

当院で行う手術は子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、卵巣腫瘍など主に良性疾患のものが中心となります。卵巣腫瘍は腫瘍を取り出して病理検査をしないと良性か悪性かの確実な診断はできないのですが、術前に画像検査や血液検査をしっかり行い、良性と強く考えられる場合に行っています。術中に悪性が疑われる場合には迅速病理診断を行い、診断を確定します。万が一、悪性だった場合には悪性腫瘍に対応した開腹手術に切り替えます。
子宮筋腫に関しては子宮筋腫の大きさや個数で開腹もしくは腹腔鏡かの術式を決定します。おへそをこえてしまうような巨大筋腫や多量の出血が予想される場合は、安全性を考慮し、開腹手術を選択します。安全性が担保される場合は、身体的負担の少ない腹腔鏡手術を行っています。
当院ではこれまで腹腔鏡手術においては筋腫のみを摘出する筋腫核出術を行っていましたが、2025年度からは挙児希望のない方には腹腔鏡下での子宮全摘術も選択肢として提示するようになりました。初年度は十数件でしたが、今後はさらに数が増えることと思います。
子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症は、月経痛や貧血、性交痛などの症状を引き起こし、多くの女性が悩みを抱える疾患です。まずは侵襲度が低い内服薬での治療が優先されますが、治療効果がみられない場合には、手術療法が検討されます。また、これらの疾患は妊娠への影響も大きく、不妊症の原因になっていることも多々あるのが事実です。
当院には、科長の高田淳子先生をはじめ、産婦人科専門医が常駐しています。普段は他人に言えない婦人科疾患の悩みやつらい症状などを気軽に相談していただけたらと思います。症状や現状を踏まえた、患者さんにとって適切な治療方法をご提案させていただきます。また、現在だけでなく、今後の女性としての将来のことも気軽に相談してください。将来のライフプランも踏まえながら、患者さんの状況に応じた治療方針を一緒に考えていきましょう。
腹腔鏡手術のメリットとデメリット

腹腔鏡手術のメリットは、開腹手術と比べて回復が早いということです。腹腔鏡手術の場合、術後4日目には退院となりますが、早い方では術後3日で退院されることもあります。基本的には短期間の入院となります。退院してから通常の生活に戻るのも早いといえます。ちなみに開腹手術の場合は、術後1週間で退院となりますので、腹腔鏡手術に比べて4日ほど長く、退院後の回復期間も含めて長くなります。
また、腹腔鏡手術では切開する部分が非常に小さいので、身体に傷が残らないという整容性でも大きなメリットだと思われます。
先ほどもお話しましたが、婦人科の良性疾患であってもすべての人で腹腔鏡手術が適応されるわけではありません。しかし、身体への負担は少なく、回復までの時間も短縮される腹腔鏡手術は、積極的に検討される手術方法でしょう。
デメリットとして、開腹手術に比べて腹腔鏡手術は巨大な筋腫や癒着が強い症例などでは、手術時間が長くなる、大量出血の対応に限界があり、開腹手術に移行する可能性があります。当院では、そのような合併症を予防するための準備を入念にしています。リスクを最大限に減らすべく画像検査で病巣の位置や大きさをしっかり把握して、そのほかの検査結果も合わせて複数の医師で確認し、どのような手術方法が適切なのか話し合い、手術にのぞんでいます。
未来のための婦人科受診
当院には、近隣の不妊治療施設から子宮筋腫や子宮内膜症、卵管水腫といった不妊の原因と考えられる病気の患者さんが紹介されてきます。ご紹介いただいた患者さんは当院で手術を行い、その後、前の施設に戻り不妊治療を行います。子宮筋腫の手術を受けた場合は、子宮破裂のリスクが高まるため、術後3か月以降で妊娠を許可しています。体外受精などを考えている方に対しては、その3か月の間に採卵(卵巣から卵子を採る治療)を行ってもらい、子宮が万全の状態になった際に受精卵を移植することを提案しています。
子宮筋腫の手術をした人に対しては、産科の先生のお考えにもよると思いますが、基本的には帝王切開での出産を勧めています。子宮の筋層に手を加えない卵巣腫瘍や内膜症の癒着を剥離する手術の場合では、通常のお産である経腟分娩が可能です。
以前、巨大な筋腫が多発している患者さんが不妊治療施設から紹介されていきました。その方は筋腫の数が非常に多く、出血のリスクが高かったので、開腹手術で筋腫を取り除きました。術後に、念願だった妊娠をされ、無事に出産したと聞いたときは自分のことのようにうれしかったです。女性にとって妊娠・出産というのは、人生の一大イベントだと思いますが、そこに貢献できたことを思うと、産婦人科医冥利につきる思いです。
現代社会では、ライフスタイルの変化で妊娠・出産する女性の年齢が上がってきています。「子どもが欲しい」と思ったもののすぐには妊娠せず、婦人科を受診して初めて、不妊症の原因が発覚するようなケースが実際には多いと感じています。そのようなケースでは、不妊治療から妊娠・出産までにさらに長い時間がかかってしまう状況が現実に起きています。
そこで、日頃から月経の経血量が多い人や月経周期が乱れる人、月経痛が非常に重いという人は、婦人科を受診して検査をする、また特に症状がなくても結婚の際にはブライダルチェックを受けたりすることが、これからのライフプランの実現のためには必要なことかもしれません。ご自身の健康、未来のためにも、身体の声に耳を傾け、聞き逃さないでほしいと思います。私たち産婦人科医は、そのようなお悩みを抱える方に寄り添い、女性の健康をサポートできるよう努めています。

★詳しくは、婦人科のウェブページをご覧ください。

