小児総合医療センター看護部

研修・教育制度

教育目標

  • 「子どもの権利章典」を遵守し、看護実践できる能力を育成する
  • 「こころ」と「からだ」を統合した新しい医療にふさわしい看護の専門的知識・技術を高める
  • QOC(Quality Of Career)を高める

小児総合医療センター教育体制

院内研修

院内研修は、「都立病院看護職員キャリア発達支援ガイドライン」に沿った研修体系となっており、レベル毎の目標達成に向けて計画・実践評価しています。

院内研修

基礎コースでは小児看護を学ぶための
4つの柱の基、研修を計画しています。

新人看護師教育体制

チーム支援型教育体制による教育体制を実施しています。
「チーム支援型教育体制」とは、チーム全体で新人看護師を教育支援し、すべてのスタッフがそれぞれの役割を持ち、新人の教育に関わる方法です。
職員全体で新人看護職員を支えながら、徐々に職場に適応していけるような体制を整え、新人看護職員の不安の緩和を図っていきます。

チーム支援型教育体制による教育体制

研修責任者

  • 新人研修プログラムの策定、企画及び運営に対する指導及び助言を行う
  • 研修全過程と結果の責任を有する

教育担当者

  • 病棟や外来、手術室など各部署で新人研修の運営を中心となって行う者
  • 実地指導者への助言及び指導を行い、また新人看護職員への指導、評価も行う

実地指導者

  • 新人看護職員に対して、臨床実践に関する実地指導者、評価者を行う者

研修体系 レベルⅠ~エキスパート

レベルⅠ

「看護師としての基礎を確立できる」ことを目標に研修を計画しています。
4月から6月の約3か月間は新人看護職員臨床研修期間に位置付けています。看護職員としての自覚を持ち、職場で適応できる能力を養うため、小児看護の基本的な知識の習得や採血、吸引、オムツ交換、輸液・シリンジポンプの取り扱いなど技術演習などを行い安全に看護実践できる能力を身につけていきます。配属部署での業務を開始し、院内研修では、「小児救急看護」「多重課題」のシミュレーションや「安全管理」「看護倫理」の事例検討、小児専門病院ならでは「子どもの成長発達」など実践に即した研修を多く取り入れています。

1年間の研修

【1年間の研修】

4月オリエンテーション・看護技術演習・看護記録Ⅰ
5月多重課題・コミュニケーション
6月子供の成長発達と自立支援・看護記録Ⅰ・メンタルヘルスケア・病院経済
7月フィジカルイグザミネーション
9月小児救急看護
10月小児緩和ケア・看護倫理・安全管理
11月感染管理・静脈内注射
12月ケーススタディ発表
3月ポートフォリオのまとめ

レベルⅡ

「受け持ち看護師として自立できる」ことを目標に研修を計画しています。
自立した看護を実践する能力を養うため「受け持ち看護師の役割」、「コミュニケーション」、患者が抱える苦悩を理解し適切に対応できる力を身に着ける能力を養うため、「小児緩和ケア」などを研修で学びます。

1年間の研修

【1年間の研修】

5月受け持ち看護師の役割・退院支援
6月フィジカルアセスメント・看護記録Ⅱ・病院経済
7月プレパレーションとディストラクション・安全管理
9月移行期医療・コミュニケーション
10月看護倫理
11月小児緩和ケア・感染管理
1月ケーススタディ発表

レベルⅢ

基礎教育の集大成の年となります。「チームリーダーとしての基礎を確立できる」ことを目標に研修を計画しています。
「リーダーシップ」、AYA世代がん患者における現状と課題について学び自立支援方法を知るため「移行期医療」、研究的視点を持った「ケーススタディ」研修を通じて自己の課題を見出し、自分の目指す看護を考えながら学びます。

1年間の研修

【1年間の研修】

4月リーダーシップ・感染管理
6月移行期医療・退院支援
7月小児緩和ケア・看護記録Ⅲ
9月救急看護
10月安全管理・キャリア発達支援
11月看護倫理・病院経済
1月ケーススタディ発表
3月実地指導者導入研修

レベルⅣ・Ⅴ

「看護活動のリーダーとしての基礎を確立出来る」、「幅広い視野を持ち、高度な看護活動を実践することで役割モデルとなることができる」ことを目標に研修を計画しています。社会資源を理解し在宅の現状、在宅移行支援の必要性と地域連携について学ぶ「つなげる!つながる看護」研修や、レベルⅠからジェネラルまで看護研究の指導ができる職員を育成し、小児総合医療センターで行われている看護を院外に示すことの一助にする「看護研究指導者育成」研修があります。

レベルⅣ・Ⅴ

【年間研修名】

  • つなげる!つながる看護
  • 看護記録Ⅳ「アセスメント力向上」、「監査者育成」
  • 教育担当者研修
  • 病院経済「問題解決」
  • 看護研究指導者研修
  • 看護研究

エキスパートコース「小児看護」

1年半をかけて、小児看護分野における質の高い看護実践と指導的役割を果たすエキスパートを養成するコースです。院内外の様々な職種の講師から小児看護に必要な専門的な知識と技術を学びます。このコースには、他の都立病院からも職員が参加します。 『小児看護のスペシャリストを目指す』という同じ志を持った職員と交流が持てることも魅力の一つです。

エントリーラダー

経験者採用者は多様な背景を持ち、その経験や能力はさまざまです。経験者がどれだけの看護実践能力があるのかを的確に把握し、個人に合わせた指導方法を決定するためにエントリー・ラダーを活用します。経験者の看護実践能力を確認した上で、不足部分を補うように研修をプログラムします。教育をする側と受ける側が共通理解を持ち、当院の職員として新たに一歩を踏み出せるようにサポートします。

先輩看護師からのコメント

病棟(身体科)

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病棟(身体科)

基礎レベル職員の活躍(レベルⅢ)

私が働いている病棟は消化器科、心療内科、形成外科、内分泌科の混合病棟です。様々な疾患をもつ子ども達への看護実践により幅広い知識・技術を身につけることができます。また、入院が長期に渡る子ども達の成長発達を促す関わりについても学ぶことができます。はじめは、疾患も年齢も様々な子ども達の個性に対応することが難しく悩むことがありました。そのような時は先輩の温かい指導と助け合える仲間の存在に支えられて乗り越えることができました。今は子どもの個性を慎重に捉え看護を提供していくことの重要さを感じつつ、個性に合わせた看護の魅力を感じています。子ども達が元気になっていく姿や成長した姿を近くで感じられた時、この仕事を選んで良かったと強く思います。

NICU

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NICU

小児看護エキスパート修了者(平成30年度受講者)

私は、自分自身の看護師経験の中で小児看護の経験が少なかったため小児看護を深く学びたいと思い、小児看護エキスパートを受講しました。また看護研究に興味があり自分のキャリアプランを前進させる良い機会だと思い受講しました。エキスパートコースは都立病院合同開催であるため、他の病院の研修生と一緒に学ぶことができました。一緒に同じ目標に向かっていく仲間との良い出会いがあり、時には悩みを相談し合うこともありました。大変ながらも充実した研修となりました。研修修了後は自分自身の視野も広がり看護師として自信がもてるようになり前進できたと感じています。

手術室

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手術室

ジェネラル研修受講者(看護研究指導者育成研修)

私が看護研究に取り組んだ時、自身で解決できない疑問や壁に直面しました。その際、研究に精通している方々から助言を受け、研究を看護実践につなげることができました。今度は、自分が研究に取り組む誰かの力になりたいと思い看護研究指導者育成研修を受講しました。研修では、研究や事例検討に関わるスタッフへの指導や助言を行う上での知識・方法をグループワークや講義を通して学びました。研修で学んだことを活かしながら、研究に取り組んでいるスタッフの疑問が少しでも解消できるようアドバイスしています。看護研究は苦労もありますが、未来のこどもたちへより良い看護を提供できるよう取り組んでいます。

児童思春期
精神科病棟

動物イメージ
児童思春期精神科病棟

教育委員としての役割

私は、教育委員として院内研修の企画・運営を行っています。院内研修では講義で学んだことを演習で実施し、研修生が研修内で学びを深められるような研修内容・プログラム構成に努めています。研修中に、身体疾患や精神疾患の専門的な看護について研修生同士で意見交換することが、看護の視野や感性を広げる良い機会となっており当院が小児総合病院である大きな強みだと感じています。更に、研修生が院内研修での学びを臨床現場で実践し、知識・技術を習得できるように教育委員と各職場の指導者が連携を取りながら、院全体で看護の質を高められる教育体制の構築に努めています。

専門・認定・特定認定看護師の紹介

当センターには専門看護師(精神看護と小児看護の2分野)や認定看護師(精神科看護、小児救急看護、感染管理、新生児集中ケア、集中ケア、緩和ケア、皮膚・排泄ケア、手術看護、がん化学療法看護、がん性疼痛看護の10分野)特定認定看護師「呼吸器関連」、「動脈血液ガス分析関連」、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」、「循環動態に係る薬剤投与関連」がおり、専門性の高い看護を実践し、活動しています。
一般に、専門看護師には専門看護分野における6つの役割(実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究)があり、認定看護師には特定の看護分野における3つの役割(実践、指導、相談)があります。当センターの専門・認定看護師は、センター内で上記役割を果たすだけでなく、府中市・国分寺市・国立市・立川市など近隣地域の病院やクリニック、訪問看護ステーション、保育園、市役所、学校、児童館などへ出向いて「出張勉強会」を行い、地域との関わりも大切に活動しています。こうした活動は、保健医療福祉の発展や看護現場における看護ケアの広がりと質の向上に貢献することを目的としています。例年、「専門・認定看護師連絡会主催のセミナー」を企画・開催しています。
特定認定看護師は、医師が不在でも、患者にとって相対的医行為が「今」必要であると判断した場合、手順書(あらかじめ示された医師の指示書)をもとにタイムリーに実践することができます。行為ごと安全に行えるように医師、病棟スタッフ、関連各科と相談しながら進めています。

専門看護師(Certified Nurse Specialist)

精神看護専門看護師

発達障害の特性や精神疾患の症状の影響で周囲の環境とうまくいかず、現実の自分に即した自尊感情が育っていない子ども達に対して、私たち看護師が全体像を捉えてケアにつなげていけるように活動しています。また、ワーキンググループの運営、地域の医療機関・学校・保育園等に直接訪問して行う専門認定看護師連絡会の出張勉強会などを通して、院内外のネットワーク作りや地域連携にも取り組んでいます。


小児看護専門看護師

子どもと家族に寄り添う看護を目指しています。子どもの健康問題だけでなく、家族の抱える様々な問題を一緒に考えます。子どもの成長や発達についての心配事に対応し、慢性疾患を持っている子どもの療養の場が病院から自宅へ移行しても、ご家族が安心して、子育てのできる環境づくりを、ご家族と共に創って行きたいと考えています。また、医療や親子に関連した絵本の紹介や病気の親を持つ子どもやそのきょうだいに対してのケアも行っています。


認定看護師(Certified Nurse)

精神科看護認定看護師(日本精神科看護協会認定)

児童・思春期の子どもたちはその成長過程において、家族や周囲の人との葛藤を抱え、それが身体症状や精神症状、衝動行為や問題行動として表現されます。精神科看護師として、子どもの症状や行動の裏にある気持ちを理解することに努め、子どもの成長・発達やこころのケア、また家族へのケアや学校を始めとする関連機関との連携、ケアチーム連携などの活動にも携わっています。困難事例に対しても、現場のスタッフと一緒に考えながらよりよい支援につなげたいと考えています。


小児救急看護認定看護師

「救急」というと急変時の対応に特化していると思われるかもしれませんが、そればかりではありません。急な発熱や嘔吐下痢、ケガなどの家庭での対応(ホームケア)や事故予防についてはホームケア指導用パンフレットを用いてご家族にお話ししたり、ER(救急室;emergency room)で行われている院内トリアージを実施する看護師を育成したり、縫合処置場面では子どもの頑張る力を引き出せるように関わったりしています。また、院内の災害対策に関する活動なども行っています。子どもたちの笑顔を支えられるよう取り組んでいきたいと思っています。


感染管理認定看護師

病院に関わる全ての人々を医療関連感染から守るために活動しています。未来ある子どもたちを感染の危険から守ります。感染対策の基本は適切な手指衛生です。うつらない、うつさないため、一緒に感染対策を実践できるよう支援していきます。


新生児集中ケア認定看護師

ハイリスク新生児の病態変化を予測し、重篤化の予防に努めています。新生児に対して生理学的安定と発達促進のための最新で最善の看護ケアを実践できるように活動しています。また、親子関係形成のための育児ケア、母乳育児ケアを積極的に取り入れ、家族としてのスタートを支援しています。自施設では例年3回、新生児蘇生法の講習会を企画・開催しています。


集中ケア認定看護師

急性期から慢性期まですべての重症な小児患者に対する最前で最善のケアを実践できるよう活動しています。また、小児の成長発達を踏まえた小児の呼吸、循環、体温の特徴とケアをはじめ、小児の重症化を回避するために、小児の急な変化に早い段階で気づくためのポイントなどの勉強会も実施しています。愛すべき小児のためにケアを実践していきたいと思っています。


緩和ケア認定看護師

緩和ケアの対象は、がんや終末期の患者のみではありません。生命を制限する病気とともに生きる子どもと若者が対象となります。そのような子どもと家族の苦痛を早期に発見し、的確にアセスメントし支援を行うことで、QOLの向上を目指し活動しています。また、看護実践をしている皆さんと協働してケアを行うとともに、私たち看護師自身のこころのケアの支援も行います。皆さんと一緒に、病気とともに生きる子どもたちのための支援を考えていきたいと思っています。


皮膚・排泄ケア認定看護師

創傷ケアやストーマケア・失禁ケアなど排泄障害をもつ患者または小児を対象に専門的なケアを行っています。子どもの皮膚は脆弱で、手術や全身状態悪化等から、褥瘡や皮膚障害を発生しやすい状況にあります。また、先天的疾患によって小児期から排泄障害があるということは、子どもと家族のQOLが変化しやすい状況にあります。このような状況を少しでも改善し、笑顔が見られるよう、ケアを行っていきたいと思います。


手術看護認定看護師

手術看護認定看護師は、手術決定から回復期にある患者や家族に対して看護を提供しています。日々進歩する医療の中で、手術の高度化・医療機器の進化に対応しながら、子どもの成長発達や状態に合わせた手術看護を行っています。また、子どもと家族が手術を乗り越えていけるような関わりを持ち、支えていくための取り組みも行っています。安全で安心な手術医療の提供を目指し、手術の侵襲を最低限にできるよう予防の看護に努めています。


がん化学療法看護認定看護師

化学療法を受ける子どもたちは、治療を受ける中でも日々成長しています。治療に伴う症状を、子ども自身やご家族がマネジメントすることができるように、成長段階に応じた支援を行っています。治療の選択における意思決定支援をはじめ、化学療法を受ける子どもが少しでも安楽に、そして安心して治療を受けることが出来るようにしたいと思っています。


がん性疼痛看護認定看護師

がんによる疼痛を緩和することで、子どもたちのQOLは向上し、その子らしい日常生活を送ることができると思っています。そのため、『痛み=薬による治療』だけではなく、精神的苦痛の緩和等、個別性に合わせた疼痛緩和を行います。子どもやご家族が笑顔で過ごすことが出来るように支援します。


特定認定看護師

特定行為研修を終了した特定看護師は、医師の判断で実施してきた医療行為のうち38行為の診療補助を医師が事前に作成した手順書に基づいて、医師の判断を待たずに実施できます。現在当院には特定認定看護師としてPICUに1名在籍しており、呼吸器関連などの5区分、14行為を医師と協働しながら実践しています。適切な時期にタイムリーに介入する事で症状緩和や重症化予防に取り組んでいます。今後は、あらゆる区分を学んだ研修修了者が増え、病院内での活動に加えて地域・在宅など病院にとどまらず、様々な場で実践していきたいと思っています。