急性膵炎

30~70歳代の男性に多く(男女比2:1)、種々の原因で膵酵素が活性化し、膵臓が自己融解する病気です。原因としてアルコール過飲、胆石、薬、高脂血症などがあり、近年、総胆管結石が胆管末端に嵌頓して急性膵炎が発症することが多くなりましたが、原因不明の膵炎もみられます。膵臓が壊死とする重症例は死亡率が高くなるため、病気の重症度を把握して、早期に治療を開始することが大切です。

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症状

心窩部から背部の持続性痛みが特徴で、胸膝位で軽減し、飲酒や脂肪摂取により増悪します。悪心、嘔吐、発熱を伴うことも多く、血圧が低下しショック状態となり、また、意識障害をきたすこともあります。

診断

血液・尿検査で血液・尿中のアミラーゼ上昇、リパーゼ上昇、エラスターゼ上昇、白血球増多、炎症反応陽性、肝機能異常、腎機能異常などがみられます。慢性膵炎があると、膵酵素が上昇しないことがあります。確定診断にはCTによる画像診断が必須です。

腹部エコー・CT

膵の腫大と、輪郭の不明瞭化、膵周囲の浸出液を証明できれば急性膵炎と診断できます。腹水や胸水がみられることもあり、胆嚢や総胆管に結石があれば、これが原因であるといえます。腹腔内に炎症が波及すると腸間膜脂肪織の炎症、腸管の動きも悪くなり、腸閉塞に似た腸管の拡張がみられます。
腎機能が悪くなく、ヨードアレルギーや喘息がなければ必ず造影CTを行い、膵臓の壊死の程度、周囲への炎症の波及を評価し、膵炎の重症度を判定することが大切です。

MRI

CTと同様な所見が認められるが、通常、緊急時には使用されない。膵臓の浮腫の状態、膵管や胆管の状態の把握、総胆管結石の有無の診断に有用です。

重症化すると、ショック、呼吸困難、意識障害、出血傾向、腎機能障害、発熱などがみられ、集中治療室での全身管理が必要になります。

治療

  1. 絶飲食、輸液、全身管理(呼吸、循環動態のモニタリング)
  2. 薬物療法(タンパク分解酵素阻害剤、抗生物質、鎮痛剤)
  3. 膵壊死巣の除去手術
  4. 膿瘍ドレナージ、仮性嚢胞ドレナージ
  5. 総胆管結石に対する内視鏡的採石術
  6. 栄養療法

急性膵炎を疑えば造影CTが必須です。エコーよりはるかに情報量が多く、重症度を把握でき適切な治療を行えます。