腎代替療法を考える~透析治療・腎移植について~

2019年10月31日 腎臓内科

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投稿者:腎臓内科医長 太田 哲人

目次

はじめに

我が国では、生活水準や生活環境の向上、高度な医療水準の維持などにより、高齢化社会となり、平均寿命が男性81歳、女性87歳を超える時代となりました。すでに超高齢化社会に突入しており、2025年には高齢者人口(65歳以上)は約3500万人に達すると推計されます。高齢化に伴い高血圧、糖尿病、動脈硬化性疾患などの生活習慣病が増加し、心不全・腎不全・脳血管障害などの合併症を抑えることが高齢者の健康長寿の延伸に重要であります。慢性腎臓病の終末像として末期腎不全となると腎代替療法(透析治療・移植)が必要となります。

今回は腎臓の働きと慢性腎臓病・腎代替療法について簡単にご説明いたします。

腎臓とは?

腰の両側にある、ソラマメのような形をした長さは10㎝くらいの、左右1対の臓器です。腎臓は24時間働きつづけ尿をつくります。
腎臓の働きは心臓から送られた血液をフィルターでろ過することにより、血液中の老廃物や余分な水分を尿として体の外に排出する働きをします。

慢性腎臓病とは?

3か月以上持続する尿異常(蛋白尿・血尿)、腎形態異常、または腎機能が正常の60%未満まで低下した状態を言います。正常の腎機能の15%以下となると末期腎不全といいます。症状としてはむくみ(浮腫)・高血圧・貧血・電解質異常・尿毒症(気分不快・食欲低下・嘔吐)などが出てきます。

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腎不全の治療法は?

現在の医療では、慢性腎臓病は不可逆的な(元の正常な状態には回復しない)ものであり、徐々に末期腎不全に至り(透析が必要となる)ますが、原疾患(腎不全の原因)を調べ治療することにより、病気の進行を遅らせることが可能な場合がありますので、原疾患の検索・診断・治療が重要となります。例えば、糖尿病が原疾患であるならば、食事療法・血糖コントロールが腎障害の進行に重要です。また抗がん剤治療を含めた様々な薬剤でも腎障害を生じる可能性がありますので、腎機能のチェックは重要となります。

腎代替療法とは

慢性腎臓病が進行し末期腎不全に至ると、回復する可能性がなく、尿毒症や高カリウム血症(不整脈・心停止)・心不全など重大な問題を引き起こすので、透析治療や腎移植を行う以外には方法はありません。
一般的には腎機能が正常の10%以下となるもしくは、薬でコントロールできない尿毒症症状・体液過剰(むくみ・心不全)・高カリウム血症・アシドーシス(酸血症)が出現した場合には、腎代替療法へ移行します。
末期腎不全の治療手段(腎代替療法)としては、血液透析治療・腹膜透析治療・腎移植があります。

血液透析(HD)とは?

腕にあらかじめシャント(動脈・静脈をつなぐ手術)を作製しておき、その血管に針を刺して血液を体外に取りだし透析器を介して血液を浄化して体に戻す治療です。
標準的には週3回透析を行う医療機関へ通院し1回3~5時間かけて行います。

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腹膜透析(PD)とは?

腹膜透析は腹腔内に直接透析液を注入し、一定時間貯留しておくと腹膜を介して、血液中の尿毒素・水分・塩分が透析液に移動します。老廃物が移動した透析液を体外へ取り出すことで血液浄化が行われます。腹膜透析治療を行うにはあらかじめ手術で腹膜カテーテルを腹腔内に埋め込む必要があります。腹膜透析は血液透析とは異なり血圧変動がほとんどなく自分の腎臓の機能(残腎機能)が保たれやすいので尿量が保持されやすい特徴があります。通院頻度も安定すれば月1回の外来通院となります。
末期腎不全の治療で適切な時期に腹膜透析治療をはじめることで尿量や残腎機能をできるだけ保持する目的で腹膜透析を行うことを強調しPDファーストと呼んでいます。
また、長期の透析や高齢化に伴い、心血管系の合併症や血液透析が困難になった場合、通院透析治療が困難になった場合に、身体的負担の少ない腹膜透析を選択することをPDラストと呼んでおります。高齢者にとってPDは心血管系への負担が少ないこと、残腎機能が維持できること、少ない透析量でも可能なことなどがメリットであります。
当院でも腎代替療法として腹膜透析治療を、患者さん・その家族とも相談し適応する場合には積極的に選択導入し、当院での最高齢者は95歳の方までお元気に通院していただいております。

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腎移植とは?

透析治療以外の腎代替療法として腎移植があります。生体腎移植と献腎移植とがあります。生体腎移植はドナー(提供者)が医学的・倫理的問題がなければ、誰でもなれます。
日本では生体腎移植のドナーは親族(6親等以内の血族)・配偶者と3親等以内の姻族となっております。移植後は拒絶反応の対策のために、免疫抑制剤の内服は必須で感染症の予防、免疫抑制剤の副作用に注意していく必要があります。移植後安定すれば、1~2か月毎に外来通院することとなります。

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最後に

今回は慢性腎臓病おける腎代替療法についてご説明しました。患者さんの生活スタイル・生活環境に応じた適切な治療を選択する必要がありますので、主治医とよく話し合って最適な治療法を選んでいくことが重要です。

参考資料

腎不全 治療選択とその実際 2019年版 
日本腎臓学会, 日本透析医学会,日本移植学会, 日本臨床腎移植学会, 日本腹膜透析医学会 編

執筆者紹介

太田 哲人(おおた あきひと)

がん・感染症センター都立駒込病院 腎臓内科 医長
専門分野:腎疾患全般
資格: 医学博士
日本内科学会認定内科医・総合内科専門医
日本腎臓学会腎臓専門医
日本透析医学会透析専門医・指導医

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