肝臓病について~肝炎・肝硬変・肝がんなどの症状やセルフチェック法を解説~

2019年6月21日 肝臓内科

肝臓と人物のイラスト

投稿者:肝臓内科医員 久保田 翼、肝臓内科医長 今村 潤、肝臓内科部長 木村 公則

目次

はじめに

肝臓は沈黙の臓器と言われてきました。その理由は、肝臓の病気はある程度進行しないと症状が出現しないことが多いからです。このため、肝臓の病気が見つかったときにはすでに病状がかなり悪化していて、もとの状態に戻るのが難しいことが少なくありません。

肝臓の病気は症状がみられにくいために放置されてしまうことがしばしばあります。たとえば頭痛やお腹の痛みなどの場合には、その症状の辛さ、大変さから、医療機関を受診することになるケースは多いものです。しかし、肝臓病ではこのような症状がみられにくいために、どうしても自分で気がつくことが遅くなりがちです。ですから、健診で肝機能の異常を指摘されて精密検査を指示されたときは、症状がなくても医療機関を受診するようにしてください。ほかの病気の検査の際に指摘された場合も同様です。

この記事では、肝臓の病気でみられる症状について説明します。これを読むことであなたが肝臓の病気をもっている場合、自分の病気に早く気づいたり、病気が悪くなるまえに病院を受診して治療を受けたりすることができるようになります。さらに、家族や友人など、あなたの大切な人が肝臓の病気になったときも、早くそのことに気づいて、病院を受診するようにアドバイスをすることができるようになります。

肝臓病とは?

まず、肝臓病について簡単に説明します。肝臓病とは肝臓の病気のことです。肝臓の状態に着目して、大きく肝炎、肝硬変、肝がんの3つに分けると理解しやすいです。

肝炎とは?

肝炎は肝臓の炎症のことで肝細胞が壊れることにより起こります。肝炎の原因としては、肝炎ウイルスの感染、アルコールの摂取、肥満など、様々な原因で起こります。肝炎がどれくらいの期間続いているかによって、急性肝炎と慢性肝炎に分けられます。急性肝炎は6ヶ月以内に落ち着くもののことをいい、それ以上の長い期間持続する肝炎を慢性肝炎といいます。慢性肝炎で軽い肝炎が長く続く場合には、あまり症状を認めません。肝臓は障害に耐える力、いわゆる耐用能がとても強いため、少し傷ついただけでは悲鳴をあげません。しかし、軽い慢性肝炎でも長い間10年や20年あるいはそれ以上続いて、肝臓に線維(コラーゲンなど)が蓄積し、肝細胞が再生する力を失うと肝機能が低下します。こうして肝硬変に進行します。肝炎を調べるためには、血液検査でAST(GOT)・ALT(GPT)・γGTP等をチェックします。AST・ALTは肝細胞に多く含まれており、肝炎で肝細胞が壊れる際に血液中に流出し、測定値が上昇します。短期間にたくさんの肝細胞が壊れる急性肝炎では、AST・ALTが数千に上昇することも珍しくありません。重篤な劇症肝炎になると、命にかかわることもあります。γGTPは肝細胞や胆汁の通り道である胆管に多く含まれており、これも肝炎の指標となります。

肝硬変とは?

肝炎が長く続くと、肝細胞の破壊と再生が繰り返され、肝臓に線維組織がたまってきます。これを肝臓の線維化といい、線維化が進行した状態が肝硬変です。肝硬変になった肝臓は硬く、表面がでこぼこした不整な状態になります。肝細胞が線維組織に置き換わり、肝臓の基本単位である肝細胞の数が少なくなるため、肝機能の低下がみられます。血液検査では、肝臓が作るタンパク質であるアルブミンが低下したり、血小板数の減少が見られたりします。肝硬変ではさまざまな症状が見られ、特に肝臓の働きを十分に保てなくなった非代償性肝硬変でははなはだしいです。食道静脈瘤を初めとするいろいろな合併症を伴いやすくなります。

肝がんとは?

肝がんは肝臓に発生するがんです。何もない健康な肝臓にできることはまれで、多くの場合は慢性肝炎や肝硬変で炎症や線維化のある肝臓に発生します。肝がんができてもそれだけでは症状が出現しないことがほとんどです。そのため、昔は肝がんが進行し末期になり病院を受診してようやく診断されることが少なくありませんでした。現在では、慢性肝炎や肝硬変の患者さんは肝がんのリスクが高いことが分かっていますので、定期的に通院して腹部超音波検査等の画像検査を受けることで、早期に発見されることが多くなっています。

肝臓病の主な症状

上で、肝臓病は状態に応じて肝炎、肝硬変、肝がんに分けて理解できると書きました。症状も、この分類にしたがって説明します。

肝炎の症状

慢性肝炎では皮膚のかゆみを伴うことがあります。軽い肝炎が長く続く場合には、他には症状がないことも多いですが、炎症が強い場合には倦怠感を認めることがあります。急性肝炎で短期間に多数の肝細胞が壊れる場合には、発熱、頭痛、体のだるさなど、風邪に似た症状を認めることがあります。また、食欲が落ちたり、吐き気やお腹の痛みを感じたりすることなどがあります。血液中のビリルビンの濃度が上昇する黄疸が出現して、皮膚や白目の部分が黄色くなったり、尿が濃い茶色っぽくなったりすることがあります。皮膚に発疹がみられることもあります。

肝硬変の症状

肝硬変は、肝臓の働きがある程度保たれている代償性肝硬変と肝臓が十分に機能しなくなった非代償性肝硬変の2つに分けられます。いずれでも種々の症状を認めますが、非代償性肝硬変では特に多くなります。
肝機能が悪化しアルブミンというタンパク質を十分に合成できなくなると、血液中のアルブミン濃度が低下して浸透圧が低くなり、血管の中から外へ水分がもれるようになります。この結果、腹水がたまったり足がむくんだりするようになります。
肝臓の働きの一つにアンモニアなど不要になった物質の分解があります。肝機能が悪化し血液中にアンモニアが増えてくると、意識状態が悪くなります。これが肝性脳症です。おかしな言動が見られるようになり、両手のひらを羽ばたくような動き(羽ばたき振戦)が見られることもあります。
肝臓の働きを維持できない肝不全の状態になってくると、急性肝炎のときと同じように黄疸が出現することもあります。
肝硬変では食道や胃の表面を流れる血管が拡張して盛り上がる静脈瘤を合併することがあります。発達した静脈瘤は出血しやすく、何かのきっかけで大量に出血して吐血の原因となります。

肝がんの症状

肝がんは初期には症状がみられにくいですが、進行して肝臓の組織を侵食していくと、肝機能が悪化して肝硬変と同様の症状が出現するようになります。肝がんが大きく育つと、お腹が張る感じや腹痛が出現したりします。肝がんからお腹の中に出血して、突然の激痛が出現することもあります。肝がんが骨に転移することによる痛みが見られることもあります。

肝臓病の種類

肝臓の病気には種々あり、肝炎や肝硬変を引き起こすものだけでも様々です。個々の肝臓病について紹介します。

A型肝炎

A型肝炎ウイルスに感染することによるもので、一過性の急性肝炎が主な症状です。口からウイルスが入ることにより感染します。

B型肝炎

B型肝炎ウイルスに感染することで起こります。血液を介して感染しますが、性交渉によることもあります。
急性B型肝炎は比較的緩徐に発症し、全身のだるさ、食欲の低下、吐き気、嘔吐、褐色尿、黄疸などの症状が出現します。重症の肝炎になり、肝不全により死亡することもまれにあります。これを劇症化といいます。劇症化しない場合、数週間で肝炎はピークを過ぎ、治ります。成人してから初めて感染した場合は、多くは免疫の力によりウイルスが排除され、持続感染になることは少ないです。
慢性B型肝炎は、生まれたときや乳幼児の頃にB型肝炎ウイルスに感染した場合に、高率に慢性化することによります。少数ですが急性肝炎後に慢性化することもあります。免疫がウイルスを排除しようとして攻撃を始め、この際に、ウイルスが感染している肝細胞を一緒に破壊してしまうために、肝炎が起こります。肝臓で炎症が持続することにより肝硬変に進行したり、肝がんができやすくなったりします。
B型肝炎に対してはインターフェロン治療や核酸アナログ製剤が有効であり、病状に応じて使われています。

C型肝炎

C型肝炎ウイルスの感染によるもので、血液を介して感染します。
急性C型肝炎ではB型肝炎の場合と同様に、急性肝炎に伴う症状を認めます。劇症肝炎になることはまれですが、感染後に70%程度と高率に慢性化します。
感染が持続するようになったC型慢性肝炎では、肝臓で炎症が持続することにより肝硬変に進行したり、肝がんができやすくなったりします。
かつては副作用の強いインターフェロン治療が行われていましたが、近年では副作用の少ない経口薬が登場し、ほとんどの患者さんでウイルスを排除できるようになっています。

アルコール性肝炎

お酒の飲み過ぎは肝臓を悪くする原因になります。飲酒によりアルコール性脂肪肝になり、さらにアルコール性肝炎になります。アルコール摂取を続け、肝炎が長く続くことによりアルコール性肝硬変に進行します。1日の飲酒量がアルコールに換算した量で60gを超える場合、アルコールの多量飲酒者になります。血液検査ではγGTPが飲酒の状況により変動しやすいため、しばしば治療の指標として使われます。

自己免疫性肝炎

免疫の異常により、自身の肝細胞が攻撃されることにより発症すると考えられている肝炎です。中年以降の女性に多く見られます。免疫の働きを抑えるステロイドによる治療が有効である場合が多いです。

原発性胆汁性胆管炎(旧称:原発性胆汁性肝硬変)

肝臓の中で胆汁の流れがうっ滞し、それに伴い肝細胞の破壊と線維化が徐々に進行する病気です。中年以降の女性に多く見られます。原因はよくわかっていませんが、何らかの免疫の異常が関与していると考えられています。

薬剤性肝炎

薬剤性肝炎は、薬やサプリメントが原因で起こる肝機能障害です。血液検査の結果、判明することが多く、症状がないままに原因薬剤を中止することで治る方も多いです。まれに、程度の強い肝機能障害になる方もいます。この場合、カラダのだるさ、食欲低下、吐き気、嘔吐、黄疸、褐色尿など、急性肝炎の症状を認めることがあります。

脂肪肝

脂肪肝は、中性脂肪が肝臓に多く蓄積した状態です。いろいろな原因で起こりますが、食べ過ぎや運動不足、飲酒によるものがよく知られています。腹部超音波検査を行うと脂肪が貯まったことにより肝臓が白っぽく見える脂肪肝を呈していることが分かります。健康診断の結果、脂肪肝を指摘されることも多いです。脂肪肝だけでは、症状を認めることはほとんどありません。
お酒をほとんど飲まない人の脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼びますが、このNAFLDの中に、肝炎が持続して徐々に線維化が進行する一群があることが最近分かってきました。これが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)です。NASHでは、肝炎が改善しなければ肝硬変や肝がんに進行していきます。肥満や生活習慣病の治療により病状が改善します。診断のためには、肝生検という肝臓の組織を採取して調べる検査が有効です。

肝がん

肝臓に発生するがんを肝がんと呼びますが、その95%は肝細胞がんです。4%が肝内胆管がん、残りは混合型肝がん・胆管嚢胞腺がん・肝芽腫等の、まれながん種から成ります。一般に肝がんというときは、大多数を占める肝細胞のことを指すことが多いです。肝細胞がんは慢性肝炎や肝硬変を背景に発生することがほとんどです。病状に応じて、外科的切除・ラジオ波焼灼療法・肝動脈塞栓術・抗がん剤(分子標的薬)・放射線照射等、様々な治療法が選択されます。

肝臓病のセルフチェック法

医師のイラスト

次に、簡単にできる肝臓病のセルフチェック法について説明します。

健康診断などで肝機能異常を指摘されたことがある

肝機能異常を指摘されたことがあるけれども、医療機関で詳しく調べていない人は、検査を受けることをおすすめします。

定期的に健康診断や医療機関での検査を受けていない

肝機能異常は症状を認めないことがあります。健康診断や医療機関での血液検査などをしばらく受けていない人は、受診することをおすすめします。

家族に肝炎や肝臓の病気の人がいる

ウイルス性肝炎は血液や性交渉を介して感染することがあります。家族に肝炎や肝臓の病気の人がいるなら、医療機関でのチェックをおすすめします。

C型肝炎の検査を受けたことがない

C型肝炎は血液検査で分かります。検査したかどうか分からない人は受診してください。

B型肝炎の検査を受けたことがない

B型肝炎も血液検査で分かります。気になる人は受診してください。

輸血を受けたことがある

過去に輸血を受けたことがある人は、肝炎ウイルスに感染している可能性があります。

臓器移植をうけた

臓器移植をうけたことがある人も、肝炎ウイルスに感染している可能性があります。

鍼治療を受けたことがある

鍼治療でウイルス性肝炎に感染することがあります。

入れ墨をいれている

入れ墨をいれている人もウイルス性肝炎に感染している可能性があります。

ボディピアスをしている

ボディピアスでも肝炎ウイルスは感染することがあります。

透析を受けている

長い間透析を受けている人はウイルス性肝炎のリスクです。

肥満気味である

太っている人はそれが原因で脂肪肝や肝硬変になることがあります。

大酒家である

お酒をたくさん飲む人はお酒が原因の肝臓病になることがあります。

白目が黄色い気がする

白目が黄色い場合、黄疸の症状の可能性があります。

体がかゆい

黄疸では、皮膚や白目が黄色くなるだけでなく、カラダのかゆみもみられます。

血がとまりにくい

血がとまりにくいのは肝機能低下の症状の一つです。

足がむくむ

足がむくむのは肝硬変の症状の一つです。

お腹が張る

腹水がたまるのは肝硬変の症状の一つです。

右のあばら骨のあたりの痛みがある

肝炎や進行した肝がんのため、右のあばら骨のあたりに痛みを感じることがあります。

上記に当てはまる人は、肝臓病のリスクがあります。当科外来では随時、初診患者さんも受け付けています。早期発見、早期治療のために気になる人は受診を検討してください。

おわりに

繰り返しになりますが、肝臓病では特に初期には症状がないことがめずらしくありません。肝臓病のリスクがないかどうかチェックし、また健診などを活用するようにしてください。

当科では肝臓病を専門分野として診療を行っています。多くの病院では、肝臓病は消化器領域の一分野として消化器内科医が診療していますが、当院では消化器内科と異なる診療科として、肝臓内科が独立して存在しています。肝臓に関するお悩み、ご相談についてはぜひ当院の肝臓内科にお任せいただければと思います。

執筆者紹介

久保田 翼(くぼた つばさ)

がん・感染症センター都立駒込病院 肝臓内科 医員
専門分野:肝疾患
資格:日本内科学会 認定内科医、 日本消化器病学会 消化器病専門医

今村 潤(いまむら じゅん)

がん・感染症センター都立駒込病院 肝臓内科 医長
専門分野:肝疾患、肝癌の診断と治療
資格:日本内科学会認定内科医・指導医、 日本消化器学会専門医・地方会評議員、 日本肝臓学会認定肝臓専門医、 日本消化器内視鏡学会専門医

木村 公則(きむら きみのり)

がん・感染症センター都立駒込病院 肝臓内科 部長
専門分野:肝疾患、ウイルス肝炎の治療
資格:日本内科学会認定内科医・指導医、 日本消化器病学会専門医、 日本肝臓学会認定肝臓専門医・評議員、 日本がん治療認定医

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