輸血と血液型の関係~違う血液型はなぜ輸血できないのか?~

2018年11月5日 輸血・細胞治療科

イラスト

投稿者:輸血・細胞治療科 部長 奧山 美樹 (輸血・細胞治療科のページ

皆さんは自分の血液型をご存知でしょうか? A型ですか?それともB型ですか?

このいわゆる「ABO血液型」の他にも、「Rh血液型」や「MNS血液型」、「Lewis血液型」など、実はたくさんの血液型があります。しかし、ここでは一番有名で、臨床的にも重要な「ABO血液型」についてお話しします。

目次

血液型が違うと何が違う?

血液型が違うと赤血球表面にある抗原と、血漿中にある抗体に違いがあります。
実は、この抗原と抗体の違うことが輸血の時に同じ血液型を使用しなければならない理由です。
それでは、抗原と抗体について詳しくみていきましょう。

血液型の抗原

A型の人は赤血球の表面に「A抗原」といわれる物質を持っています。そのため「A型」とよばれるのです。とすれば、同様にB型の赤血球には「B抗原」があることは想像できますね。
ではAB型は?これも同様で「A抗原」と「B抗原」の2種類とも持っています。
それではO型はどうでしょう?同様に「O抗原」を持っている・・・わけではありません。O型は、その他の型と違っては「A抗原」も「B抗原」どちらも持っていません。反応する抗原が“ない”=“ゼロ(0)”からのちにO(オー)型になったともいわれています。

血液型に対する抗体

赤血球の表面には抗原がありますが、血漿中すなわち赤血球のまわりには抗体があります。
この抗体は、自分の体に存在しない特定の抗原に反応するために作られます。例えば、A型の人はA抗原を持っていますが、B抗原は持っておらず、B抗原に反応する「抗B抗体」が赤血球のまわりにたくさん流れているのです。逆にB型の人は「抗A抗体」を持っています。
そしてO型の人は「抗A抗体」と「抗B抗体」の両方を持っていて、AB型の人はどちらも持っていません。

表にまとめてみます。

血液型持っている血液型抗原持っている抗体
AA抗原抗B抗体
BB抗原抗A抗体
Oなし抗A抗体と抗B抗体の両方
ABA抗原とB抗原の両方なし

抗原と抗体で何が起こる?

では、この抗原と抗体によって、体内では何が起こっているのでしょうか。

抗体は抗原を攻撃する

「抗体」というのは特定の抗原に対して攻撃する役割を果たします。
通常は例えばウイルスなどの病原体が体内に入ってきたときに作られて、その病原体を攻撃することで病気になることを防ぎます。免疫といわれるものです。しかし、上の表で示した血液型に対する「抗体」は、なぜか生まれつき持っています。
つまり、今まで一度も体に入ってきたことがないのにも関わらず、「抗体」が作られているのです。不思議ですよね。
そのため、血液型を合わせないで、たとえばA型の人にB型の赤血球が入ると、持っている抗体がその赤血球を攻撃してしまうことになります。そして体の中で大量の赤血球が壊されて大変なことになります。
これが輸血をするときに血液型を合わせなければならない理由です。

O型は異型適合血

型が違うと抗体が反応するから、血液型を合わさなければいけないことはおわかりいただけたでしょうか。でも、例外があるんです。上の表をよく見ると何か気づきませんか?
実は、血液型が違っても抗体が攻撃しない組み合わせがあります。たとえば、A型の人にO型の輸血をしたらどうでしょう。A型の人は抗B抗体を持っていますが、O型赤血球にはB抗原はありませんから抗B抗体による攻撃は受けません。ということは、輸血しても問題はないことになります。
このように、“型は違うけれど問題はない血液”のことを「異型適合血」といいます。
冒頭で述べたように、輸血の時は型を合わせるのが大原則ですが、たとえば大出血をして大量に血液が必要となり、一致した血液型では足りない、というような緊急事態の時はこの「異型適合血」で輸血を行う場合もあるのです。

造血幹細胞移植で血液型が変わる

血液の疾患に対して、造血幹細胞移植という治療法があります。
移植の詳細についてはここでは触れませんが、ドナーさんから提供していただいた造血幹細胞を患者さんに移植する治療です。そして造血幹細胞というのは分化して血液になっていく大元の細胞です。
したがって移植後はドナーさんの幹細胞から作られた血液が患者さんの体の中を流れることになります。ということは、もし患者さんとドナーさんの血液型が違っている場合には、患者さんの元々の血液型からドナーさんの血液型へ変わっていくことになるのです。こういう場合は、移植後は違う型の輸血を受けることになります。
通常、血液型は一生変わりませんが、こんな例外があるのです。不思議ですよね。

駒込病院では

駒込病院では年間100例以上の造血幹細胞移植を行っています。したがって、血液型が変わる患者さんもたくさんいます。
私たち輸血・細胞治療科ではその変化に応じて適切に検査を行い、安全で適正な輸血医療を提供するよう心がけております。

執筆者紹介

奥山 美樹(おくやま よしき)

写真

がん・感染症センター 都立駒込病院 輸血・細胞治療科 部長

専門分野:輸血学、血液内科学、免疫学
資格:日本内科学会認定医、
日本血液学会専門医・指導医、日本輸血・細胞治療学会 認定医、日本輸血・細胞治療学会 細胞治療認定管理師、日本輸血・細胞治療学会 評議員、日本輸血・細胞治療学会 関東甲信越支部 理事、日本アフェレーシス学会 評議員

関連する記事
関連記事はありませんでした