院長のごあいさつ

院長のごあいさつ

 

東京都立小児総合医療センター院長 廣部誠一

 ホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。

 本年4月1日より新院長に就任しました、山岸敬幸(やまぎしひろゆき)と申します。小児循環器、臨床遺伝を専門領域とする小児科専門医で、慶應義塾大学医学部小児科教授、同予防医療センター特任教授を経て、このたび着任いたしました。東京都のこどもたちとそのご家族を中心に、わが国のより良い小児医療を目指して力を尽くしたいと思います。

 当院は、2010年3月、東京都立の清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘病院(精神科)、府中病院小児科が、現在の場所に移転して統合され「東京都のこども病院」として開設されました。この場所は「多摩メディカルキャンパス」と称され、その中で当院は「からだの病棟」と「こころの病棟」を併せ持ち、産科や成人の各診療科を有する総合病院である多摩総合医療センターと一つの構造体を形成してつながっている、全国的にも先進的な「こども病院」です。メディカルキャンパス内には、ほかに神経病院、府中療育センターが近接しており、互いに連携しています。次に述べる5つの運営理念は当院の設立時に創られましたが、2022年に地方独立行政法人組織へ移行し、開設15年を迎えた今も変わりなく、当院が果たす使命が揺らぐことはありません。

1. 東京都における小児医療の拠点

 救命救急医療、高度専門医療、周産期医療、臨床研究が当院の柱です。
 北米型のERであらゆるこどもを受け入れ、トリアージにより緊急度を判定し、救命救急科と総合診療科が中心になって診療します。ER受診数は100人/日前後で、一般的な症状を訴えるこどもの中にも必ず数%の重症例が隠れていて、そのようなこどもはPICU(小児集中治療室)で集中治療科が対応します。動くことが難しい重症なこどもをドクターカーで出向いて搬送することも可能で、ECMO(体外式膜型人工肺)下での搬送もできるのは当院の特徴です。
 専門医療では、小児がん拠点病院として、特に難治性のがん治療に力を入れています。さらに先天性心疾患、先天性気管狭窄、鎖肛、口唇口蓋裂、尿道下裂、頭蓋、顔面の先天異常、股関節、手足の先天異常など、あらゆる小児内科系、外科系疾患に対応し、腎移植の症例数も多く、多職種からなる全人的・包括的なチーム医療が当院の強みです。
 周産期医療では多摩総合医療センターと連携して、安心・安全なお産に貢献しています。地域の産婦人科からの緊急新生児搬送の要請を受け、新生児用ドクターカーが年間300件以上出動しています。さらに胎児診断チームが、地域の産婦人科と連携します。
臨床研究に関しては、臨床試験科に設置している、臨床研究支援センターのチームが各科の臨床研究を支援、推進しています。

2. 「こころ」と「からだ」を総合した医療

 「からだ」を治す医療はもちろん、最近、重症化・低年齢化が懸念されている「こころ」の症例にも精神科医療チームがトリアージシステムの導入、個室の整備などで専門的に対応できるのが当院の特徴です。「こころ」と「からだ」は切っても切れない関係にあり、からだの治療後、成長の過程で精神的サポートが必要になることもあります。そのような場合でも「こころ」の専門家によるリエゾンチームが早期から介入し、「こころ」と「からだ」をそれぞれの専門家が連携して総合的に診療します。

3. こどもの成長とともに歩む医療

 胎児期、出生から小児、思春期、成人期へとこどもの成長に合わせて、必要な医療を継続的に提供します。特に、思春期以降も治療が必要な小児慢性特定疾患、難病、AYA(Adolescent and Young Adult)世代のがん患者には、継続した管理が必要です。当院の移行期看護外来では、こどもの成長の過程を見極めながら自立支援プログラムを開始し、多摩総合医療センターや神経病院と連携して移行医療を進めていきます。

4. こども中心の医療

 当院のこども患者権利章典では、どの年齢のこどもでも「説明を受け医療に参加する権利」があることを保証し、年齢に応じた同意説明、アセント(賛意を得る)、プレパレーション(幼児への事前説明)にチームで取り組んでいます。もちろん病気の治療が最大の目標ですが、積極的な治療がこどもにとって時に不適切な場合もあり、何がこどもにとって最善かを家族と多職種で話し合うプロセスを大切にします。多職種の緩和ケアサポートチームにより身体的・心理的な苦痛の緩和を手助けし、生活の質を向上させる活動もしています。

5. 社会とともに創る医療

 成長発達を見守ることが必須であるこどもの医療を充実させるには、病院だけでなく、学校、福祉施設、市区町村や保健所などの行政機関が、地域社会として力を合わせる必要があると考えています。当院の「こども・家族支援部門」では早期退院、早期社会復帰に向けて、医師、看護師、心理士、SW、保育士等がチームで活動しています。昨今の医療的ケア児の増加に対しては、在宅診療科が設置されました。こどもたちを地域社会で育むために、医療機関、訪問診療、市区町村、保健所、特別支援学校などの連携をますます強化していきます。 

 東京都の小児医療の拠点として、「こどもまんなか」の質の高い医療を提供するため、職員一同、チームワーク良く、笑顔あふれる病院を運営してまいります。皆様のご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

2024年4月1日 院長 山岸敬幸