がん検診の概要

がん検診とは

がん検診とはどのようなものか、メリットやデメリット、がん検診に関する現状など、がん検診の基本情報をまとめています。

検診と健診

がん検診の「検診」と似た表現として、「健診」という言葉があります。

「検診」は、「特定の病気を見つけて早期治療に繋げるために行われる検査」のことで、がん検診や歯科検診などがあります。そのため、「がん検診」は、がんになっているかどうかに特化した検査のことです。

一方、「健診」は、健康診断の略で、健康状態を確認することで、病気を予防することを目的としています。

職場や居住地の自治体等で実施しており、身体計測、視力・聴力、血圧、尿検査、胸部X線など基本的なものが中心です。また、40歳以上の方では生活習慣病の予防の観点から、「特定健康診査(メタボ健診)」が行われており、血液、コレステロール、心電図等の検査が追加されます。

がん検診の種類

がん検診は、  「対策型がん検診」と「任意型がん検診」に分けることができます。

<対策型がん検診>

国や自治体など、集団全体の中で、当該がんの死亡率を減少させることを目的に、公共の政策として行っているがん検診を指します。区市町村が行っている「住民検診」がこれに該当します。

公共の政策として実施しているため、個人の費用負担については、無料又は少額となっています。

また、国において、検診に伴う利益と不利益のバランスを考慮した上で、科学的にがんの死亡率が低下されると認められている方法で行われているのが特徴ですが、実施している団体により、対象年齢や検査項目に違いがある場合もあります。受診については、居住地の自治体や職場などにお問い合わせください。

<任意型がん検診>

任意型がん検診については、特定の個人が、自らの死亡リスクを下げるために自主的に受診するもので、医療機関や検診機関で実施している人間ドックやがんドック等が該当します。

任意で受けるものであるため、費用については、全額自己負担となっており、その金額も医療機関ごとに異なります。(ただし、健康保険の保険者によっては、人間ドック等の受診費用の一部を補助する制度が設けられている場合もあります。)

当センターでは、がんの発見に特化した「日帰りがんドック」を実施しています。

がん検診の対象

がん検診の対象は、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(厚生労働省)において指定されている「胃がん」、「大腸がん」、「肺がん」、「乳がん」、「子宮頸がん」の5つのがんです。

この厚生労働省の指針の中で、検診項目や対象年齢、受診間隔などについて具体的に示されています。当センターにおいても、この5つのがんに対応した精密検診等の外来診療や日帰りがんドックを提供しています。

なお、自治体や職場で行っているこれらのがん検診の実施時期や内容については、居住地の自治体の保健衛生担当部署や職場の福利厚生担当部署にお尋ねください。

<指針に基づくがん検診の実施方法>

がん検診の種類

対象年齢

検診の頻度

検査方法

胃がん検診

50歳以上(※)

2年に1回(※)

問診、胃X線検査又は胃内視鏡検査

大腸がん検診

40歳以上

1年に1回

問診、便潜血検査

肺がん検診

40歳以上

1年に1回

質問(問診)、胸部X線検査及び喀痰細胞診

乳がん検診

40歳以上

2年に1回

質問(問診)、マンモグラフィ(視診・触診は推奨しない)

子宮頸がん検診

20歳以上

2年に1回

問診、視診、子宮頸部の細胞診及び内診

※胃がん検診の胃X線検査については、当分の間、40歳以上、1年に1回の実施が可能となっています。

がん検診の流れ

がん検診を受けた結果、
①特に異常が無い場合は、次回、改めてがん検診を受診してください(検診により、1年後又は2年後となります。)
②精密検査が必要となった方(要精密検査)については、医療機関等による精密検診(精密検査)を受診することとなります。精密検査の実施方法は、要精密検査となった臓器により異なります。当センターでは、外来でこれらの検査を実施しています。
③精密検診(精密検査)の結果、がんが発見された場合は、入院や外来による治療が必要となります。前がん状態やがんの疑いがある所見が見つかった場合は、定期的な経過観察(再受診)を行い、様子を見る場合もあります。

当センターが担うがん検診

当センターでは、呼吸器内科、消化器内科、乳腺腫瘍外科、婦人科の各診療科において、厚生労働省が指針で検診を定めている5つのがん(胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん)に関する精密検診(精密検査)や地域の医療機関から紹介を受けた方に関する外来診療や各種検査を行っています。

また、個人検診として、受診を希望する方に、一般コースA(消化器系がん+肺がん)、一般コースB(消化器系がん)、プレミアムコース(消化器系がん+肺がん等)、レディースコース(乳がん)、レディースコース(子宮がん)のがんドックや低線量CT肺がん検診を実施しています。

精密検査の結果、がんが発見された場合、都立多摩総合医療センターを始めとする専門の医療機関に紹介します。また、消化器内科では、大腸のポリープ切除など、外来で対応可能な内視鏡治療を行っています。

がん検診に関する法体系

がん対策基本法

がん対策の一層の充実を図るため、日本におけるがん対策の基本事項を定めた法律です。平成18年に策定され、平成19年4月1日から施行されています。 

がん対策の基本理念の策定、国・地方公共団体・医療保険者・国民・医師及び医療関係者・事業主のそれぞれの役割分担の明確化、国によるがん対策推進基本計画の策定、都道府県によるがん対策推進計画の策定などが盛り込まれています。

また、基本的な対策として、「がんの予防及び早期発見の推進」、「がん医療の均てん化(医療技術等の格差解消)の促進」、「研究の推進」、「がん患者の就労」、「がん教育の推進」などが示されています。

がん対策推進基本計画

平成19年6月に、がん対策基本法に基づき、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため策定された計画で、都道府県が策定するがん対策推進計画の基にもなっています。

その後、がんを取り巻く環境の変化等に応じて3回改定され、現在の計画は第4期として令和5年3月に改定され、令和5~10年度までの6年間を実施期間としています。

全体目標として、「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す。」を掲げ、その下に分野別目標として、「1. 科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実」、「2. 患者本位で持続可能ながん医療の提供」、「3. がんとともに尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」を掲げています。がん検診への対策として、① 受診率向上対策、②がん検診の精度管理、③科学的根拠に基づくがん検診の実施について盛り込まれており、目標値として、対策型検診の受診率60%、精密検査受診率を90%としています。

東京都がん対策推進計画

平成20年3月に、がん対策基本法に基づき策定された、東京都におけるがんの予防や治療等のがん対策に関する総合的な計画です。

その後、都におけるがんの現状と課題を踏まえて2回改定され、現在の計画は第二次改定として平成30年3月に改定され、平成30年度~令和5年度までの6年間を実施期間としています。

目標として、「がん患者を含めた都民が、がんを知り、がんの克服を目指す」という全体目標の下、「1 科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実」、「2 患者本位のがん医療の実現」、「3尊厳を持って安心して暮らせる地域共生社会の構築」の3つを掲げています。

がん検診に関しては、目標1の中で、「受診率向上に向けた関係機関支援の推進」、「がん検診受診に関する普及啓発の推進」、「科学的根拠に基づく検診実施に向けた支援の推進」、「職域におけるがん検診の適切な実施に向けた支援の推進」について様々な取り組みが記載されています。

目標値として、国のがん対策推進基本計画と同様、がん検診の受診率50%、精密検査受診率を90%としています。さらに、国のガイドライン等、科学的根拠に基づくがん検診実施を全ての区市町村で実施することを目標としています。

がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針

がんの予防と早期発見を推進するため、国が定めたがん予防のための教育やがん検診の実施について定めたガイドラインとなります。

平成20年3月に策定され、現在に至るまで複数回改正されています。

がん検診の関係では、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの臓器について、対象者(年齢・性別等)、検診の頻度、検診項目(どのような検査を行うか)、検査実施機関の体制等について定められています。

がん検診の現状

令和2年の実績では、がんは都民の死因の第1位であり、死亡原因全体の約3割(28.2%)を占めています。都においては、「東京都がん対策推進計画」(平成30年3月・第二次改定)の中で、がん検診の受診率の目標は50%としています。がん検診の受診率の実績をみると、都や区市町村等の様々な取り組みや健康意識の高まりなどを受け、上昇傾向が続いています。都の調査では、下表のとおり、令和2年度の時点で、子宮がん検診以外は目標値の50%を超えています。 

精密検査については、国の「がん対策推進基本計画(第3期)」で90%を目標としていますが、令和元年度の都の実績では、目標値に達しているがんはありません。

がん検診のメリット・デメリット

がん検診の受診に当たっては、メリットとデメリットがあります。これらを踏まえた上で、受診することが大事です。これらのメリット・デメリットを踏まえ、科学的根拠に基づいて国が推奨しているがん検診として、「胃がん」、「大腸がん」、「肺がん」、「乳がん」、「子宮頸がん」が定められています。

メリットデメリット
①早期発見・早期治療ができる
 がんは早期発見・早期治療を行うことができれば、その多くが治る病です。また、発見が早期であるほど、治療に要する期間も短くなるため、身体的・経済的な負担は減少します。定期的な受診を繰り返すことで、早期発見の確率は相対的に上がります。
①がんが100%見つかる訳では無い
 様々な機関で検診技術や精度の向上に取り組んでいますが、検査自体について100%の精度が保証されている訳ではないのが実情です(「偽陰性」 と言います)。ただし、定期的にがん検診を受けることでこのリスクは相対的に低下します。

②がん以外の病気の発見の可能性
 がん検診を受診した結果、がんになる前の病変(子宮頸がんの異形成、大腸ポリープ等)を見つけることも可能です。その結果、治療や定期的な経過観察等の対応を図ることが可能となります。

②不要な精密検査を受ける可能性がある
 がんでなくても、検査した画像やデータに何らかの異常が発見される場合があります(「偽陽性」と言います) 。この場合、精密検査や経過観察が必要となりますが、がんへの不安や、結果的に不要な精密検査を受けることになってしまうことがあります。
③受診による安心感
 検診の結果、「異常なし」の判定が出た場合、精神的な安心感を得ることができます。ただし、異常が無くても過信はせず、定期的にがん検診を受診していただくことが必要となります。
③非常に小さいがんの発見
 検査の結果によっては、将来的に生命に影響を及ぼさないような非常に小さながんが見つかる場合もあります。それに伴い、本来は不要であった治療が行われる可能性があります(「過剰診断」と言います)。 
 ④検診に伴う身体への負担
 がん検診は、なるべく体への負担を減らして行っていますが、放射線検査に伴う被ばく、細胞や組織に針を刺す生検など、検査の実施に伴う苦痛や偶発症などが生じることがあります。