腎泌尿器外科 - 腎盂・尿管がん

ダヴィンチ手術による腎尿管全摘除術〜腹膜を傷つけない後腹膜アプローチ

腎盂・尿管がんの標準治療は腎尿管全摘除です。当科では、原則的に全ての患者さんに対してダヴィンチ手術による腎尿管全摘除を行っております。
当院のダヴィンチ腎尿管全摘除の特長として、腹膜を傷つけない後腹膜アプローチで実施しています。腎臓・尿管・膀胱は、腸が収まっている腹膜に覆われた腹腔の外(後ろ側)に位置する臓器であり、腹膜を傷つけない方法で手術が可能です。腹膜に傷がつくと、腸の癒着による腸閉塞のリスクとなります。また、手術の際に万が一がん細胞がこぼれ落ちることがあれば、腹膜が開いていると腹膜播種のリスクとなります。これらのリスクを極力回避すべく、私たちは独自に工夫した後腹膜アプローチによるダヴィンチ腎尿管全摘除を行っています。
ダヴィンチ腎尿管全摘除では、側腹部と下腹部に5つから7つの小さな孔(5mmから2cm程度)から腎臓・尿管・膀胱の手術操作を行い、一塊となった腎臓・尿管・膀胱の一部を孔の傷を繋げた5-6cmの皮膚切開から摘出します。
手術翌日から食事・歩行が可能で、入院期間の目安は4-6日程度です。
医学的理由でダヴィンチ手術の適応がない場合は、ガスレス・ロボサージャン手術や腹腔鏡手術とロボサージャン手術のハイブリッド低侵襲手術による低侵襲手術で腎尿管全摘除を行います。術後経過はダヴィンチ手術と同様です。
ご病状によっては、生来の傷である臍を利用して、傷が目立たない臍単一創からのガスレス・ロボサージャン手術で腎尿管全摘除を行います(写真:1円玉の直径2cm)。

ロボサージャン・ガスレス・シングルポート手術の外観

臍単一創からの腎尿管全摘除の利点は、傷が目立たないことの他、術直後の傷の痛みがより軽微なことです。

注目情報治療成績(調査対象:2013年11月〜2023年1月にダヴィンチ腎尿管全摘除、ロボサージャン・ガスレス・腎尿管全摘除あるいはハイブリッド低侵襲・腎尿管全摘除を施行した120件)周術期輸血率 2%(全例が術前からの高度貧血症例). 術後合併症 (Clavien grade 3以上) 0%.

腎盂・尿管がんの診断

腎盂・尿管がんが疑われる方には、CT・MRIを行い、尿細胞診の結果と合わせ、総合的に診断をつけます。それでも診断が難しい場合、手術室で麻酔(全身麻酔もしくは腰椎麻酔)をかけて尿管鏡という細い内視鏡を用いた検査で確定診断をつけます。

化学療法(GC療法、G-CBDCA療法、パドセブ®)

転移がある、あるいは強く疑われる場合や、手術の病理結果で追加治療が望ましいと判断された場合は、原則的にゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチンによる抗がん剤治療を行います。4週間で1サイクルの治療となりますが、入院と外来を組み合わせて行います。その他、ご病状に合わせて他のレジメンを選択することもあります。

免疫療法(キイトルーダ®、バベンチオ®、オプジーボ®)

化学療法後の転移のある腎盂・尿管がんに対して有効な治療手段で、効果の持続を期待できる治療法です。