腎臓病の食事

腎臓とは

1. 腎臓のしくみと働き

腎臓はソラマメに似た形をした臓器で腰の辺りに左右1個ずつあります。腎臓は、糸球体という小さな血管がたくさん集まっている場所です。腎臓の主な働きは、たんぱく質の代謝により生じた血液中の老廃物や毒素を尿中に排泄します。その他、体内に含まれる電解質の濃度を一定に保つ、赤血球を作るホルモンや血圧調整、骨の代謝に関わるホルモンを作るなどの重要な役割を担っています。

2. 腎臓病の症状

初期には自覚症状がないことが多く、気付かないうちにゆっくり進行していることがあります。腎臓病の主な症状として、たんぱく尿、血尿、むくみ(浮腫)、高血圧、尿量の変化などがみられ、さらに、赤血球が作りにくくなるため、貧血を引き起こすこともあります。

3. 腎臓病の検査

  1. 尿検査
    たんぱく質、血液などが漏れ出ていないかを調べます。
  2. 血液検査
    尿素窒素、クレアチニン、カリウム、ナトリウム、カルシウム、リンなどの量を調べます。
  3. その他
    必要に応じて、画像検査や腎生検なども実施されます。
健康診断等でたんぱく尿や血尿が出たら、医療機関を受診しましょう。

食事療法のポイント

症状に応じて、食塩やたんぱく質、カリウムなどの制限が必要なことがあります。医師の指示を守りましょう。

1. 食塩を減らしましょう

腎臓の負担を軽くするためには、食塩制限が必要です。食塩摂取量は1日6g未満が適切とされています(ただし、1日3g未満の過度の食塩制限は推奨されていません。)。

  • 令和元年国民健康栄養調査の結果では、成人男性の1日平均食塩摂取量は10.9gです。

(1) 食品の選び方

加工品や塩蔵品をさけて、生の食品を選びましょう。

加工品、塩蔵品、生の食品のイラスト

(2) 調理の工夫

  • 煮物や汁物などは、天然のだしをきかせましょう。薄味でもおいしく食べることができます。
だしをとることができる食品のイラスト
  • 香りや風味を生かしましょう。
調味料のイラスト

(3) 食事のとり方

汁物はできるだけ飲まないようにしましょう(1日に1/2杯以下、汁椀半量が目安です)。
汁物(みそ汁・すまし汁・スープなど)は、汁椀1杯で食塩1.5~2gです。

  • 食卓で使う調味料は、量に気をつけましょう。
調味料別の含有塩分量のイラスト
  • 外食や惣菜は食塩量が多くなりがちです。注意しましょう。
    食塩量の表示を参考にしましょう。

2. たんぱく質をとり過ぎないようにしましょう

  • 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品には、たんぱく質が多く含まれます。決められた量を守りましょう。
  • たんぱく質の制限が必要な方に適した食品として「低たんぱく質食品」(特別用途食品)が市販されています。
    具体的な使い方については、管理栄養士に相談しましょう。
たんぱく質とエネルギーのイラスト
  • 特別用途食品とは健康増進法26条に基づく国の許可が必要な食品のこと。
    詳しくは福祉保健局食品衛生の窓をご覧ください。

3. エネルギーは適量をとりましょう

エネルギー摂取量が不足すると、体のたんぱく質が分解されて腎臓に負担がかかります。また、肥満や糖尿病のある方は、エネルギーの過剰摂取にも注意が必要です。

(1) エネルギーを高める方法

  • 油・砂糖・でんぷん製品を利用する
油・砂糖・でんぷん製品を利用するの製品のイラスト
  • 調理の工夫
調理の工夫

(2) エネルギーを高める食品

低甘味性糖質や中鎖脂肪酸を使用した食品が市販されています。具体的な使い方については、管理栄養士に相談しましょう。

食品分類種類特徴
低甘味性糖質粉末甘味料砂糖に比べ甘味度が低いため、多く使用できる。
ゼリー類少量でも高カロリーを摂取できる
中鎖脂肪酸MCTクッキー
MCTゼリー
MCTパウダー
腸における吸収が早い
血液中の脂質を増やしにくい


4. その他の制限が必要な場合

(1) カリウムの制限が必要な場合

医師の指示によりカリウム制限が必要な場合は、以下のことに注意しましょう。

  • 肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などのたんぱく質が多く含まれる食品はカリウムが多いので、とり過ぎないようにしましょう。
  • カリウムは水に溶けるので、野菜や芋は小さく切って水にさらしたり、茹でこぼしてから調理しましょう。
カリウム制限についてのイラスト
  • 生の果物やジュースは避けましょう。
  • その他、カリウムの多い飲み物には注意が必要です。
食品名1回分目安量カリウム量
緑茶(玉露)湯のみ1杯(120ml)408mg
緑茶(せん茶)湯のみ1杯(120ml)32mg
ほうじ茶湯のみ1杯(120ml)29mg
抹茶1杯分(1g)27mg
インスタントコーヒー1杯分(3g)108mg
レギュラーコーヒーカップ1杯分(150ml)98mg
紅茶カップ1杯分(150ml)12mg
ウーロン茶カップ1杯分(150ml)20mg
野菜ジュース(トマト・にんじん・セロリ等)200g400mg
りんごジュース(100%濃縮還元)200g220mg
オレンジジュース(100%濃縮還元)200g380mg
炭酸果実色飲料(無果汁)200g2mg

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より

(2) 水分の制限が必要な場合

医師の指示により、水分の制限が必要な場合は、お茶や水などの飲み物の他、汁物などの水分量にも注意しましょう。

食事療法が必要な場合は、管理栄養士にご相談することをお勧めします。