脳卒中センターについて

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狭心症や心筋梗塞などの心臓血管系の救急患者を集中治療するCoronary Care Unit(CCU)病棟は治療成績の向上に大きく貢献しています。
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害についても脳卒中の専門医療スタッフによる脳卒中専用病棟での濃厚な治療とリハビリテーションが大きな効果を生むことがわかってきました。

大久保病院では脳卒中診療の向上を目的に、平成18年10月に脳卒中診療のCCUともいうべきStroke Care Unit(SCU)3床をハイケアユニット内に設置しました。

平成19年8月にはSCU3床と脳神経外科病床24床・リハビリテーション科14床からなる脳卒中センターを開設し、脳神経外科・神経内科・リハビリテーション科を統合した脳卒中科としての運営を始めました。
平成20年1月からは病床再編を行い、SCU3床と準急性期脳卒中病床たるStroke Unit(SU)42床で診療を行いました。
平成26年からは脳卒中発症直後の集中治療を行う脳卒中ケアユニット(SCU)3床、準急性期の脳卒中診療を行う脳卒中ユニット(SU)と自宅退院を目標とする地域包括ケア病棟を合わせた45床を脳卒中センターとして運用しています。
従来型の脳卒中診療との違いは、医師・看護師・リハビリスタッフ・患者支援グループなどの専門スタッフが入院早期からチームとして組織的・計画的に診療を行うことにあります。脳卒中専門病院でも、例えば脳梗塞は神経内科、脳出血は脳神経外科が担当するというような区別をもつ施設が多いようですが、当院ではそれぞれの診療科が同時にひとりひとりの患者さんの診療を受け持つスタイルをとっています。それぞれの得意とする領域を合致させて急性期治療とリハビリが同時進行してゆきます。診療科の垣根がなく、多職種が協調して早期回復を目指しています。
2014年から2016年の3年間に当院に入院された脳卒中発症1週間以内の急性期患者数は418人でした。疾患別では脳梗塞75.6%、脳出血21.3%、くも膜下出血3.1%で、8人にt−PA治療を行いました。入院後ほぼ一両日中にリハビリ科医師の診察に基づいてリハビリが開始されます。活動度に応じたリハビリや嚥下機能検査に基づいた摂食療法などを取り入れ、状況に応じて土曜日や休日のリハビリも行っています。重症者も多い急性期施設ながら自宅退院率は67.3%、回復期リハビリテーション施設転院23.9%と非常に良好であり、これは集中的で切れ目のない脳卒中診療の効果と考えております。

脳卒中救急診療の概要

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当院での脳卒中の診療は病院へ到着前から始まります。電話にて脳卒中が疑われる症状や発症時刻を確認し、救急車での来院を要請します。脳梗塞発症から4.5時間以内に投与可能なt-PA治療が行えるように救急外来と同時に医療事務・検査科・放射線科・病棟などが準備を始めます。
病院到着時に意識障害・言語障害・運動麻痺・感覚障害などについての診察を行ない、頭部CT検査に急行します。頭部CTにて脳出血やくも膜下出血などの出血性脳卒中の診断ができます。

また、脳梗塞ではt-PAが使用できるか否かの判定ができます。迅速な診断確定は治療成績に大きく影響するため、来院からCT撮影までに要する時間が25分以内であるということがアメリカのガイドラインではひとつの目安となっています。当院では脳卒中診療に対して病院全体が組織的に対応する体制をつくることで来院からCT撮影までを平均15分に止めています。また、脳梗塞の場合には、その部位や範囲・病型などを確定し有効な治療を行うため、緊急MRI検査を行っています。この検査によってCT検査だけでは判らなかった情報が得られるため、t-PAをより安全に投与できる、病型に合わせた治療薬が選択できるなどの効果を得ています。来院からMRI撮影までの所要時間はおよそ35分であり、当院の先進的な取り組みと考えております。また血栓回収術などの脳血管内治療にも対応しています。

脳卒中発症直後の患者さんは重症度に応じて集中治療室(ICU)またはSCUにて入院治療を開始します。それぞれの病態に最適な治療計画を用いて集中治療を行なうことで、症状の悪化を防ぎ早期回復を目指しています。脳卒中患者さんが緊急入院した情報はリハビリ科へも伝達される仕組みを作り、入院直後から状況に応じたリハビリテーション・プログラムが点滴治療などと同時に開始されます。
脳卒中は突然起こる病気のため、どのように対処すべきかご不安になられる方も多いと思います。当院では患者支援グループが入院早期から面談し、診療計画に沿ってアドバイスを行っております。