三叉神経痛について

顔面の痛み:三叉神経痛とは?

三叉神経は主に顔面の知覚を司っている神経です。一方、顔面神経はほぼ運動系神経で、顔面の筋肉を動かす役目をしています。そのため、一般に用いられる”顔面神経痛”とは三叉神経痛の間違いです。三叉神経が脳に入りこむ部分を脳血管が圧迫すると三叉神経痛が起こります。少数ながら脳腫瘍や脳血管異常などが原因となる場合もあります。

症状

三叉神経痛の発症年齢は50歳代以降が多く、女性に多いと言われています。一側顔面に電気が走るような、短いながら鋭い痛みが断続的に襲ってくることが特徴です。顔を洗う、食事をする、歯を磨く、会話をするなどの動作で痛みが誘発されます。虫歯と間違え、歯科治療を受ける例が散見されます。

治療

三叉神経痛にはテグレトールやリリカという内服薬が有効ですが、内服治療で充分な効果が得られないときや眠気・ふらつき・肝機能障害などの副作用が生じた場合には手術を考慮します。
手術には主に3通りの方法があります。ひとつ目は圧迫している血管を三叉神経から離す神経血管減圧術で、原因の根本的な治療法です。治療効果に優れ即効性もありますが、全身麻酔での開頭を要します。ふたつ目は頬から針を刺し、三叉神経をブロックする方法です。侵襲性や合併症が少なく、即効性があるため最初の手術治療としても確立されています。また、神経血管減圧術の効果が不充分な場合や再発時、あるいは全身麻酔での手術が適さない場合に用いられます。三つ目はガンマナイフによる治療です。全身麻酔が不要であり、高齢者の治療に用いられています。効果の発現に1ヶ月程度かかるとされています。

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当院では神経血管減圧術の他に三叉神経ブロックのひとつである経皮的三叉神経節グリセロール注入術を行っています。経皮的三叉神経節グリセロール注入術はレントゲン撮影室で静脈麻酔と局所麻酔を使って行います。三叉神経が3つに別れる三叉神経節に針をさすため、第三枝が通る卵円孔をレントゲン撮影で探します。局所麻酔をして、頬から三叉神経節へ針を挿入します。針が正しい位置に挿入されていることを確認後、グリセロールという液体を注入します。このグリセロールは痛みを感じる神経を麻痺させて痛みを感じなくさせますが、触覚を感じる神経への影響が少ないとされています。鎮痛効果が手術直後から得られるのも特徴です。手術による痛みの改善率は74-93%と報告されており、効果の持続期間は36~47ヶ月とされています。痛みがぶり返したときには繰り返して治療することができます。神経血管減圧術の効果が不十分な場合や再発した場合、全身麻酔が適さない場合などでも効果が期待できます。通常、1泊2日の入院で治療可能です。合併症としては顔面の一部がしびれたように感じる知覚障害が20~38%程度に生じます。また、低頻度ながら感染(無菌性髄膜炎、口唇ヘルペスなど)、脳神経麻痺(複視、顔面神経麻痺、聴力障害など)、内頚動脈損傷などが生じる可能性が報告されています。