検査科の専門領域

当院検査科は神経疾患専門病院の検査部門として神経疾患に特化した検査体制を取っております。特に、生理検査部門と病理検査部門は当院の開設以来、それぞれ神経生理と神経病理の特殊検査を行える検査施設です。

業務内容

院内実施項目(PDF 400.9KB)

検体検査室

血液検査、生化学検査、免疫・血清検査、一般検査、輸血検査など多岐にわたる検査を行っています。細菌検査は外注ですが、インフルエンザやRSウイルス、CDトキシンなど院内感染対策として院内で実施しています。ICUの検査機器や血液保冷庫の管理も担当しております。また、日常の精度管理の実施の他に、日本医師会や日本臨床衛生検査技師会のほか、試薬メーカーのコントロールサーベイなどの外部精度管理にも参加して、精度の高い検査結果を提供しています。さらに、栄養サポートチーム(NST)や院内感染予防対策チーム(ICT)などのチーム医療にも積極的に参加しています。

生理検査室

神経筋疾患やてんかんなどの中枢性疾患の診断や病状評価,治療効果の判定において,神経生理学的検査は欠かすことのできないものです。通常の神経生理学的検査は簡便に行うことができる一方,その方法や結果の解釈には熟練した技術が必要です。当院では,日本臨床神経生理学会の認定医および同学会認定技師が在籍しており,豊富な経験をベースに日々研鑽を積み重ねております。

一般に行われる神経生理検査には以下のようなものがあります。

(1)心電図検査

 心電図検査は、心臓の電気的な活動を記録するための検査です。患者さんの手や足、胸に電極を取り付け、電極から得られる電気信号を記録します。この検査では、心臓の拍動などの異常を調べることができ、心臓病や不整脈などの診断に役立ちます。

(2)肺機能検査

 肺機能検査は、患者さんの肺の機能を評価するための検査です。患者さんの肺がどれだけ効果的に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出できるかを調べることができます。この検査は、呼吸器疾患や機能障害に関連する問題や異常を特定するのに役立ち、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症などの肺疾患の診断やモニタリングを行うことができます。

(3)超音波検査

超音波検査は、音波を使用して身体の内部組織や臓器を可視化し、診断する検査です。音波を発生させる超音波プローブを患者の体表に当て、反射された音波のパターンをコンピュータで解釈して画像を生成します。非侵襲的でありながらも高い詳細度で、内部の組織や臓器の形状、大きさ、構造を視覚的に表示することが可能です。腹部(肝臓、腎臓、膵臓など)、心臓、血管、甲状腺、神経、筋肉などの異常や病変を検出するために利用されます。

(4)脳波検査

 脳波検査は、脳の電気的な活動を計測するための検査です。この検査では、頭皮上に電極を配置し、脳から発生する微弱な電気信号を記録します。これにより、脳の活動やパターンを評価し、神経学的な異常や疾患を診断するのに役立ちます。脳波は、特定の状態や活動によって変化する特徴的な波形を持っており、てんかん、睡眠障害、脳病変、意識障害などの診断に利用されます。

(5)針筋電図検査

 筋電図検査は、筋肉の電気的な活動を測定し記録するための検査で、神経系や筋肉の異常を診断し評価するために行われます。検査では細い針状の電極を筋肉に挿入し、その筋肉の電気的な活動を記録します。患者さんには安静な状態を保つか、特定の動作を行ってもらいます。これにより、筋肉の電気的な活動パターンや筋肉の収縮に関する情報を取得することができます。筋電図検査では、神経筋障害、筋疾患、神経系の損傷などを調べるのに役立ち、神経筋疾患、筋ジストロフィー、神経根の損傷、運動ニューロン疾患など、さまざまな状態の診断やモニタリングすることが可能です。

(6)末梢神経伝導検査

 末梢神経伝導検査は、末梢神経の機能を評価するための神経学的な検査の一つです。この検査は、神経伝導速度や神経の異常な反応を評価することで、神経系の損傷や疾患の診断やモニタリングを行うことができます。患者さんに電極を取り付け、末梢神経に電気的な刺激を与えることで、神経がどれくらい速く信号を伝えるか、その際の電気的な応答や筋肉の反応時間を記録します。末梢神経伝導検査は、多くの神経障害や疾患の診断に役立ち、糖尿病による末梢神経障害や、神経根の圧迫、ギラン・バレー症候群などを評価することができます。

(7)誘発電位検査

 誘発電位検査は、神経系の機能を評価するための検査手法の一つです。特定の体の部位に刺激を与え、その刺激に対する脳の反応を記録します。これにより、感覚情報の伝達や処理に関連する神経経路の異常や疾患を評価することが可能です。具体的には、視覚刺激、聴覚刺激、または電気刺激などを用いて、感覚神経に対する反応を引き起こします。この刺激によって発生する電位は、脳や神経系の活動を示すものであり、これを計測することで感覚神経や脳の機能に関する情報を得ることができ、感覚神経の機能障害や神経疾患の評価ができます。

病理検査室

当院は神経病理の研修が可能な専門病院として日本神経病理学会の認定施設となっており、神経病理を専門とする医師と臨床検査技師で業務を行っております。

1. 術中迅速診断

対象は脳脊髄腫瘍および中枢神経感染症で、年間約50件、切除手術と開頭・針生検に対応しております。脳腫瘍については原則として全例で凍結検体を保存し、必要に応じて大学病院に遺伝子検査を依頼しております。

2. 組織検査

院外からの脳腫瘍、神経筋疾患のコンサルテーションも受け付けております。神経組織に加えて、脊椎手術の対象となる後縦靭帯等の周辺組織も対象となります。てんかん手術検体では大切片による標本を作製、脳腫瘍では特殊染色と多数の免疫組織化学染色をルーチンで行っております。筋生検ではパラフインブロック以外に凍結ブロックを作製し、約20種類の組織化学的染色を行っております。全例で電顕ブロックも作製し、必要に応じて超薄切片による電顕的観察も行います。神経生検は近年その適応が大きく減り、電顕ブロックは全例で作製しております。神経筋検体の診断は主に神経内科の医師が担当しております。

3. 細胞診

年間の総数は多くはありませんが、その約80%が脳脊髄液です。

4. 病理解剖

解剖は近年減少傾向にありますが、当院の在宅からも受け入れております。全て神経疾患で、多くが筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含めた神経変性疾患です(図1)。ALSでは横隔膜を含む呼吸筋と右横隔神経(エポン包埋標本)の採取を行います。ALSを含めた神経変性疾患では、全例で凍結検体を保存し、必要に応じて東京都医学総合研究所でウエスタンブロットを行っております。また、当院の剖検室は感染防止対策剖検室(バイオクリーンルーム)に改修されており、プリオン病の解剖が可能です。剖検例は原則として全例でCPCを行い、脳外科と神経放射線科を主体とした外科病理カンファレンスも開催しております。

そのほか日本神経病理学会、日本脳腫瘍病理学会、日本病理学会などの全国学会に加えて、地域の病理医との交流の場として日本神経病理学会関東地方会、東京脳腫瘍研究会、多摩脳腫瘍研究会に参加しております。

図1


図1孤発性ALSの剖検例。上位下位運動ニューロン変性と共に海馬顆粒細胞や脊髄前角細胞にTDP43陽性封入体を認める。