食道癌、胃癌、食道や胃の粘膜下腫瘍(GIST:ジスト)などの腫瘍性病変の手術治療を行っています。日本食道学会食道外科専門医準認定施設、日本胃癌学会認定施設(A)に認定されており、質の高い治療が可能です。
それぞれの病気の詳細は国立がん研究センターのがん情報サービスが発行している以下のパンフレットをご活用ください。
食道がんPDF(PDF 1.2MB)
胃がんPDF(PDF 2.9MB)
消化管粘膜下腫瘍(GIST)PDF(PDF 1.7MB)
患者さまへのご挨拶
東京都立多摩総合医療センター上部消化管外科チームは、食道や胃の良性、悪性疾患に対する外科治療を行います。
私たちは「患者さんが自分の家族ならどのように治療するか」を信念とし日々診療を行っています。
手術に関しては体への負担が少ない内視鏡下手術を時代に先駆けて行ってきました。2018年に手術支援ロボット「ダビンチ」を導入してからは、胸腔鏡・腹腔鏡下手術よりも精度の高い手術が可能なロボット支援下食道・胃切除を積極的に行っており全国でトップクラスの手術件数です。また総合病院の利を活かし各科のエキスパートと協力しながら、がん専門病院では対応できない重度の持病のある患者さんにも治療を検討します。
私たちは術後の外来診療、救急対応にも力を入れています。食道や胃の手術後には自宅で食事が思うように食べられない、体力が落ちたなどの症状がでることがあります。また腸閉塞などの緊急を要する合併症を発症することがあります。そのような際に迅速に対応できる診療体制を整えています。手術させていただいた患者さんが術後も安心して生活できるように責任を持って診療いたします。
「食道や胃に病気があり手術が必要」と言われたら私たちの外来を受診していただけましたら幸いです。患者さん一人ひとりにあった最適な治療法を一緒に考えていきます。
東京都立多摩総合医療センター
上部消化管外科
医長 石橋雄次
治療の特徴
体に優しい低侵襲手術
上部消化管外科チームでは体にやさしく負担の少ない低侵襲手術を積極的に行っています。
食道癌、胃癌、GISTに対する手術は、以前は胸やお腹を大きく切開する開胸・開腹手術が一般的でした。しかし最近では5mm〜1cm程度の穴を数カ所あけて手術を行う低侵襲な内視鏡下手術(胸腔鏡・腹腔鏡手術)が普及してきています。内視鏡下手術は開胸・開腹手術と比較して傷が小さいため手術後の痛みが少なく、体の回復がはやいです。そのため早期の社会復帰が可能であり、また集学的治療が必要な患者さんでは手術後早期に抗がん剤治療などの次の治療を開始できるという利点があります。一方、内視鏡下手術は直接臓器を触りながら手術を行うことができないため技術的に難しいという欠点があります。
われわれ上部消化管外科チームには内視鏡下手術の指導者としての技術を認定する日本内視鏡外科学会技術認定取得者5名を擁しており、進行癌に対しても癌の根治性を重視した上で積極的に安全かつ適切な内視鏡下手術を実践しています。
ロボット支援下手術
食道癌、胃癌に対しては主に手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を使用したロボット支援下手術を行っています。
「ダヴィンチXi」による精細な3D画像と多関節機能をもつ手術器具を使用することでより精密で質の高い胸腔鏡下・腹腔鏡下手術が可能となりました。当院ではロボット支援下手術の経験が380例以上、ロボット支援下手術指導医が3名在籍しており、十分な経験のもとに安全なロボット支援下手術を行っています。詳細は以下のページを御覧ください。


正確な診断
内視鏡検査やCT検査などの画像検査を用い、腫瘍の広がりや、リンパ節転移の有無、他臓器への浸潤などを正確に診断することは手術の適応を決定したり、適切な術式を選択するうえで極めて重要です。消化器内科や放射線科と連携し、正確で質の高い診断を行っています。週1回の外科と消化器内科の症例検討会で患者さんの治療方針を検討しています。
厳重な術前・術後管理
手術後は合併症(手術による副作用)が起きる可能性がゼロではありません。特に大きな手術の後や、ご高齢・余病のある患者さんでは合併症の発症リスクが高くなります。余病(糖尿病、心臓病、腎臓病、脳梗塞など)のある患者さんに対しては他科と連携しながら、手術前から十分な準備を行い、厳重な手術後の管理を行います。
万が一合併症が起きた場合は、迅速に対応し早急に治療を開始することで、できるだけ重症化しないよう厳重な術後管理を行っています。またリハビリテーション科と連携し、術後早期から(必要な場合は手術前から)リハビリを開始することで、術後の筋力低下や呼吸機能の低下を防ぎ、早期に日常生活にお戻りいただけるようサポートします。
集学的治療
進行した食道癌・胃癌の場合、化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を併用した治療を行います。化学療法や放射線治療を行い腫瘍を縮小させてから手術を行う術前治療や、手術後に癌の再発率を下げるための術後補助化学療法など、患者さんの状態や癌の進行度にあわせて適切な治療を行います。治療方針は基本的に各疾患の治療ガイドラインに基づいて計画しています。その上で患者さん一人ひとりの年齢・持病・生活状況等を考慮し、最も適した治療をご本人やご家族と一緒に考えていきます。
栄養管理・指導
食道や胃の手術後は食事の内容、1回の食事の量、食べる速さなどを工夫していただく必要があります。当院では手術が決まった患者さんに対して、手術前から栄養士による栄養管理・指導を開始します。手術がおわり退院した後も、外来で食事・栄養指導を定期的に行うことで、患者さんの食事に対する不安をできるだけ解消します。また糖尿病や高コレステロール血症など、特に栄養管理が必要な持病をもつ患者さんに対しても適切な指導を行います。
術後のフォロー
癌の治療は手術をして終わりではありません。術後5年間は癌の再発がないか検査していく必要があります。治療ガイドラインにもとづき外来診療を行い、癌の進行度、患者さんの状態によって適切な術後フォローを行います。
また、食道癌や胃癌の手術後の緊急を要する退院後の後遺症(腸閉塞など)に対しても迅速に対応します。
かかりつけの先生やご紹介いただいた先生との密な連携
手術後も安心してかかりつけの先生に診察していただけるように、当科での治療内容や検査結果はかかりつけの先生やご紹介いただいた先生に定期的に報告します。また、かかりつけの先生や紹介元の先生が、早急な受診・治療が必要な状態(進行食道癌、胃癌による狭窄症状や出血)と判断し、当科にご連絡いただいた際は迅速に対応します。
治療実績
胃切除
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
胃全摘 | 開腹 | 9 | 10 | 5 | 10 | 10 | 5 | 7 |
腹腔鏡 | 15 | 18 | 4 | 9 | 0 | 0 | 0 | |
ロボット支援 | 1 | 0 | 8 | 10 | 10 | 10 | 10 | |
幽門側胃切除 | 開腹 | 10 | 12 | 18 | 12 | 8 | 9 | 5 |
腹腔鏡 | 50 | 35 | 16 | 26 | 10 | 3 | 0 | |
ロボット支援 | 14 | 25 | 33 | 36 | 44 | 49 | 52 | |
幽門保存胃切除 | 開腹 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
腹腔鏡 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
ロボット支援 | 1 | 3 | 4 | 0 | 0 | 1 | 0 | |
噴門側胃切除 | 開腹 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 1 | 1 |
腹腔鏡 | 8 | 19 | 3 | 3 | 4 | 1 | 0 | |
ロボット支援 | 1 | 3 | 4 | 6 | 11 | 14 | 9 | |
胃局所切除 | 開腹 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
腹腔鏡 | 15 | 8 | 13 | 8 | 7 | 11 | 15 | |
合計 | 124 | 133 | 104 | 120 | 102 | 104 | 99 |

食道切除
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食道亜全摘 | 胸腔鏡 | 14 | 16 | 12 | 15 | 14 | 6 | 0 |
ロボット支援 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 11 | |
開胸 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
合計 | 14 | 16 | 13 | 15 | 14 | 10 | 11 |
上部消化管外科 2024年実績
1.2024年の胃切除の手術件数は99件、食道切除の手術件数は11件でした。
ピロリ菌の感染率の低下による胃癌患者さんの減少、内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD)の適応拡大にともない、以前よりも手術総数自体は減少しましたが、ロボット支援下胃切除術の手術件数は71件と全国でもトップクラスです。
また2023年より導入したロボット支援下食道切除術の件数は増加傾向で、2024年は食道切除の全症例をロボット支援下に行いました。
2.2025年は内視鏡下手術の指導資格である内視鏡外科学会技術認定医が5人となりました。さらに質の高い手術を目指していく予定です。
3.4月21日より年間25,000件の実施件数を見込んだ内視鏡室14室、リカバリーベッド21床を有する新館がオープンしました。
いままで検査・手術をお待たせしていた期間を大幅に短縮できる見込みです。
上部消化管外科チーム医師
石橋雄次 (平成14年札幌医科大学卒) 医長
- 資格等
日本外科学会外科専門医・指導医
日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員
手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格・プロクター(指導資格)
日本食道学会食道科認定医
日本消化器病学会消化器病専門医
日本がん治療認定機構がん治療認定医
胃癌治療ガイドラインシステマティックレビュー委員 - 主な経歴
順天堂大学 消化器・低侵襲外科
国立がんセンター中央病院 外科
岡山卓史 (平成22年九州大学卒)
- 資格等
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医
手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格
日本がん治療認定機構 がん治療認定医
斎藤範之(平成24年群馬大学卒)
- 資格等
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医
日本内視鏡外科学会 技術認定医
手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格
Robo-Doc Pilot 国内B級
日本食道学会 食道科認定医
日本がん治療認定機構 がん治療認定医
古田隆一郎(平成27年獨協医科大学卒)
- 資格等
日本外科学会外科専門医
日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本内視鏡外科学会 技術認定医
手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格・プロクター(指導資格)
日本がん治療認定機構 がん治療認定医
畑尾史彦(平成6年山形大学卒) 医長
- 資格等
日本外科学会外科認定医・専門医・指導医
日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員
日本内視鏡学会専門医・指導医
日本肥満学会肥満症治療専門医・指導医
日本肥満症治療学会評議員
日本静脈経腸栄養学会学術評議員・TNT講師
日本外科代謝栄養学会教育指導医・評議員・総務委員・広報委員 - 主な経歴
東京大学医学部附属病院 胃食道外科
東京大学大学院臓器病態外科学
今村和広(平成2年山梨医科大学卒) 副院長
- 資格等
日本外科学会外科専門医・指導医
日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員
手術支援ロボット「ダヴィンチ」術者資格・プロクター(指導資格)
Robo-Doc Pilot国内B級
日本食道学会食道科認定医
日本内視鏡学会専門医
日本がん治療認定機構がん治療認定医 - 主な経歴
東京大学医学部附属病院 胃食道外科
東京大学大学院臓器病態外科学