乳腺外科

概要

乳癌の治療は手術療法、放射線療法、薬物療法が集学的に行います。当院ではエビデンス(科学的根拠)に基づき治療を行っております。しかし、すべての患者さんが同じ治療が適切とは限らず、患者さんの希望、生活スタイルを考え、ご本人と相談の上、治療を決めていきます。
患者さんのQOLを損なうことなく、再発率が低い治療方法を目指していきます。

診療内容

乳腺専門外来を初めて受診された患者さんはマンモグラフィ(乳房のレントゲン)を撮っていただき、その後、診察を行います。必要に応じて乳腺超音波検査を行い、細胞診検査(病変に細い注射針をさし、細胞を採取し顕微鏡で良悪性の診断を行う検査)、もしくは針生検検査(局所麻酔を行い病変に太めの針を刺し組織を取り顕微鏡で良悪性の診断を行う検査)を行います。来院日から約1から2週間後に細胞診、針生検の結果を説明いたします。

乳癌の診断がついたならば、必要に応じて各種検査を行います。乳房MRIは乳癌の拡がりをみるための検査であり、これにより、術式(温存手術か、乳房切除か)を判断します。
進行度の高い場合は全身の転移の有無を調べます。CTでは肺、肝転移の有無を確認し、骨シンチグラムで骨転移有無を確認します。

手術

検査結果を吟味し患者さんと相談し希望に沿う形で手術を行っております。当科では温存手術を推奨し2015年は373症例中262症例(温存率70%)に温存手術を行っておりますが、進行度の低い方に対しては希望により、形成外科と合同で乳房再建手術もおこないます。

センチネルリンパ節生検

センチネルリンパ節とは、リンパ管に入ったがん細胞が最初にたどり着く腋窩リンパ節のことで、がんのリンパ節への転移を見張っているという意味で"見張りリンパ節"とも呼ばれます。センチネルリンパ節生検は、手術の前に乳がんの近くに色素、あるいは放射性物質を局所注射し、これを目印にして、センチネルリンパ節を摘出し、このリンパ節にがんが転移していないかどうかを調べる(術中迅速診断)ことをいいます。

この検査でセンチネルリンパ節に転移がない場合、腋窩リンパ節の手術を省略しております。当院でも1998年から行い腋窩リンパ節手術に関する術後合併症も減少しております。

早期乳癌

当院では早期乳癌であるならば局所麻酔で日帰り手術も行っております。日帰り手術は入院の必要もなく、患者さんのQOL向上に役立つと考えております。2015年は温存手術262例の内83例(31.5%)に対して行っております。

乳房同時再建手術

進行度の低く、乳房温存手術では乳房の変形が強くなることが予測される場合は形成外科医と協力し乳房切除術と再建手術を同時に行う手術も行っております。2015年全乳房切除術111例の内21例(19%)に行っております。

薬物療法

各種ガイドライン(乳癌診療ガイドライン、NCCNガイドライン、ザンクトガーレン、ASCCO)に基づいて治療方針を決定しております。術前化学療法、術前ホルモン療法も率先して行っております。2015年は乳癌手術症例373例の内、92例(25%)に術前治療を行い、手術を行っております。

放射線療法

放射線科乳腺専門医と協力し、術後放射線療法、及び、再発治療を行っております。

臨床試験

臨床試験は標準治療を改善していくものであり、臨床試験が治療の最良の形を示す可能性があります。臨床試験は乳癌患者さんに多大の恩恵を与えるものと考えており、率先して協力しております。