人工膝関節置換手術
変形性膝関節症とは
膝の軟骨が変性・摩耗し、歩行時の痛み等の症状が出現する疾患です。 高齢化に伴い、患者数は年々増加しています。治療方法は保存治療と手術療法があり、ここでは最も一般的な手術である人工膝関節全置換術についてご紹介します。
人工膝関節置換手術について
人工膝関節手術は、関節疾患に対して1980年代になって世界的に広く行われるようになり、その後人工関節に用いられる新素材の開発や手術方法の改良によって世界中で手術が行われています。日本でも年間8万件以上が行われる一般的な治療法です。人工膝関節置換術は変形性膝関節症、慢性関節リウマチなどの疾患による膝関節の障害の治療に行われ、関節の痛みを軽減させ、歩きやすくし、生活の質の改善が見込めます。
全置換型人工膝関節(TKA:Total Knee Arthroplasty)(写真1)と部分置換型人工膝関節(UKA:Uni Knee Arthroplasty)(写真2)があります。
TKAは、膝関節を構成する大腿骨と下腿骨の両方と膝蓋骨の関節面を人工のコンポーネントに取り換える手術です。大腿骨と下腿骨の関節面をチタンやコバルト・クロム合金などの強靭な金属やセラミックで取り換え、下腿骨側にポリエチレン製のコンポーネントを装着します。UKAは大腿骨と下腿骨の内側のみを取り換えます。
(写真1)リウマチ性膝関節 
(写真2)変形性膝関節症 ナビゲーションシステムを用いた精度の高い人工膝関節手術
保存療法(鎮痛薬、装具療法、関節内注射など)で十分な改善が得られない変形性膝関節症や膝関節骨壊死症に対して、人工膝関節置換術(全置換術・部分置換術)を行っています。当院では全症例にナビゲーションシステムを使用し、骨切り角度や下肢アライメントをリアルタイムに確認しています。これにより、正確な骨切り・インプラント設置精度の向上・術者間のばらつきの低減を実現し、安定した手術成績につなげています。
患者さんの生活背景や術後に目指す活動レベルを丁寧に伺い、単顆置換術(UKA)・全置換術(TKA)など最適な術式を選択します。また、術後疼痛管理にも力を入れ、スムーズなリハビリテーション開始を支援しています。術後アンケートでも高い満足度をいただいております。
合併症
ゆるみと再置換手術
TKAは成績の安定した手術です。ほとんどの場合、長期間にわたって、膝の痛みが軽くなり、歩行が楽になります。ただし膝の曲がりについては、最新の深屈曲対応型でも正座が難しい場合があります。人工関節の性能が向上し、設計上深屈曲が可能でも、膝関節周囲の筋肉や腱などの軟部組織が衰えて、正座に耐えられなかったりするからです。またリハビリをあまりやらないと曲がらないうちに固まってしまうこともあります。人工関節は時間がたつと骨と金属との間でゆるんでくる場合があります。現在では技術の進歩と素材の開発により、人工関節自体は、手術後10年程度問題がないように設計され、さらに長期間20年から30年機能するようになってきています。しかしリウマチのような骨破壊が進行する病気を伴えば、長期の耐久性はこの限りではありません。
合併症と危険性
TKAは決して小さな手術ではありませんが、現在では、十分に安全な手術となっています。それでも感染(化膿)、静脈血栓症、肺梗塞、肺塞栓、人工関節の脱臼などの起こり得る合併症や危険性について知っておくことは大切です。
| 感染(化膿) | 人工関節は、感染(化膿)がおきると、治るのに長期間の治療を要する場合が多く、感染を起こさないように細心の注意を払います。手術で切開した部分に感染がおきないよう、無菌手術室で行い、予防的に抗生剤を用いて対処します。 |
|---|---|
| 血栓症 | 静脈血管内に血の塊ができることがあります。血栓症といいますが、手術後、足の裏を断続的に圧迫する器械を装着し、血栓形成を予防します。手術した部位からの出血が止まったら、保険適応となっている血栓予防薬を使用します。弾性ストッキングも使います。血栓ができると、血栓が血行性に体内を移動して、肺梗塞や肺塞栓をおこすことがあります。万一肺塞栓が起きた場合は、総合診療科・循環器内科・呼吸器・肺外科がありますので、連携対応して治療にあたります。 |
退院後の生活
段々に日常生活に慣らしていきます。馴染んでくるのに3ヶ月から6ヶ月くらいかかります。人工関節はあくまでも「人工の」関節ですから痛みがとれたからといって、激しい衝撃を加えるような乱暴な動きをすると早くいためてしまい、ゆるみの原因となります。
費用
人工膝関節手術にかかる費用は、健康保険や介護保険を使い、高齢者医療やその他の諸制度の活用で負担軽減が可能な場合があります。当院総合相談室でソーシャルワーカーがどのような制度が利用可能かどうか調べて対応致します。諸制度の手続きをせずに健康保険を使うと、保険自己負担分の1割もしくは3割となりますが、 高額療養費制度医療費の利用申請を行うことにより、収入に応じた自己負担となります。
Q&A
- 入院期間はどれくらいですか?
- 回答
手術の傷は通常2週間くらいで治ります。手術直後2日から3日は傷の痛みも強いですが、持続的に痛み止めを注入する器械で痛みを緩和します。術後は、CPMという器械で膝の曲げ伸ばしを行い、理学療法士が、筋力をつけ、膝を曲げるリハビリを行います。
膝の状態が良くなってくると立ち上がりや歩行練習も行い、手術後2週から3週間位の入院で杖を使い歩いて、退院可能になります。両側同時に行った場合は、手術後3週から4週間の入院で杖を使って歩いて、退院できるようになります。片側のみに比べて1週間程度入院が長くなります。手術後杖を使って歩くのが4週間以上かかる場合や、杖歩行ができるようになっても更にリハビリを希望される場合はリハビリ病院に転院してリハビリを行う場合もあります。
- 同時両側手術はやっていますか?
- 回答
左右どちらとも変形が強く、障害が著しい場合、1回の手術で両側の人工膝関節置換術を行う場合があります。片側のみ行い、再度反対側を行う場合もありますが、片側だけ膝の変形が矯正され、反対側がそのままなので脚の長さが異なるため、脚長差が生じてリハビリが進みにくい場合があります。このような時両側同時に行うとリハビリが順調に進みます。もちろん片側ずつのご希望であれば、時期をずらして2回に分けて手術を行うことも可能です。両側同時に行う場合、侵襲が大きくなり、体への負担が強いられますので、合併症や年齢、体力を考慮して手術するかどうかを判断する必要があります。
最終更新日:2026年4月30日

