看護師のストレスケア

看護師のストレスケア

主なストレス要因と対応

一般病棟からCOVID-19感染症専用病棟への転換に伴い、これまで経験のない特殊な環境や、高齢者の介助、病室内や浴室の清掃、隔離環境のため不穏患者が出てきてしまった時の対応など、初めての領域での戸惑いや不安が、看護師のストレスに大きな影響を与えました。

病棟の再編成による診療科の変更、新たな治療法や未確立なマニュアルを用いた業務、防護具着用による身体的な負担や、急な配置転換で、十分な気持ちの整理ができずストレスを感じていたケースもありました。配置転換先の業務に慣れない状況でリーダー業務や新人育成などの役割を担うことに対するストレスもありました。

こうしたストレスへの対策として「人間関係の構築」「前向きに考える」「知識・技術の習得」などの問題焦点型コーピングを行いました。また、評価的サポートとして「他者からの肯定的評価」を受けることで、異動先の病棟での役割の自覚、承認、動機付けがなされ、自己肯定感が上昇するとともに今後の方向性の発見ができ、ストレスが緩和されました。

コロナ禍のストレス要因と克服要因
~患者受け入れに対する心境の変化に影響を与えた要因~

インタビュー形式でグループ面接を実施し(2021年11月~12月)、看護師の心境の変化の有無や、変化に与えた要因を明らかにしました。

心境の変化に影響を与えた内的要因は、「看護師としての誇り」「慣れ」「互いに支えあう気持ち」で、外的要因は「社会からの影響」「周囲の人からの支援」「病院としての体制整備」でした。

メンタルサポートの取組

スタッフの抱える精神的ストレスを調査し、ストレス緩和につなげるアプローチとして、臨床心理士と共に検討して、「こころスケール」を用いたワールドカフェ(注)を月に4~5回、計19回開催しました(活動期間:2020年9月1日~2021年3月31日)。不安や怒り等の感情を聞いてもらい共感してもらうこと、臨床心理士からの支持的な言葉かけがあることで、つらい気持ちが整理され、ストレス緩和の一助になりました。また、自分のつらさをあるがままに受け入れ、否定的感情が緩和されて自己効力感が増し、COVID-19対応をともに継続していくという前向きな気持ちにつながりました。

(注)ワールドカフェ:看護師が4人1組のグループでくつろいだ雰囲気で日頃思っていること等を話し、互いに傾聴する。臨床心理士にも可能な限り入ってもらう。

こころスケール

医療従事者の身体的・心理的・社会的負担がある中で、組織として、健康維持やメンタルヘルスの新たな支援体制に取り組みました。一般的なメンタルサポート体制としては、病棟カンファレンスでの看護師長や先輩ナース、エキスパートナースへの対応の振り返りに際して、その時々の感情や様々なことについて話し合う体制がとられています。さらに、専門的なメンタルサポートが必要な場合は、病院・病棟管理者の協力の下、精神看護専門看護師、精神科医師、臨床心理士から構成される「こころのケアチーム」が個人相談などで支援する体制を取り入れています。

こころのケアチーム フロー図

重症化しやすい高齢者への対応業務のリーダーとなっている中堅看護師は、身体的・精神的などの多角的なアセスメント、急な状態変化による業務増加の負担を感じていました。メンタル支援として、「ケアする人をケアする~職員のこころの健康を意識する取り組み~」を行いました。

こころの相談案内

COVID-19を受け入れ始めた当初から、コンサルテーション・リエゾンを担当する精神科の医師が1日1回の定期的な病棟ラウンドのなかで、職員の日々の気持ちの把握に努めました。医師と相談して職員の「声なき声」を拾い上げて支援できるように、COVID-19に対する「ご意見箱」を設置し、職員から寄せられた意見を医師が要約して、看護師長全員にフィードバックしました。医療職員がCOVID-19陽性となり職場復帰したときにも、医師が個人面接を行うことで、職員も管理職も精神的に支えられました。 

看護部メンタルサポート