感染管理対策の工夫

感染管理対策の工夫

PPE不足への対応と正しい着脱方法の徹底

マスク、ガウン、手袋の供給が不安定な中、一般病棟でのPPE(マスクやゴーグル、ガウンなどの個人防護具)の運用方法を見直し、サージカルマスクの使用制限、ポリエチレン製以外のガウンの積極的な活用を進めました。毎週の対策会議(幹部、感染症科医師、感染管理認定看護師、新型コロナ患者受入れ病棟師長等が参加)においてPPEの確保や運用を検討したほか、PPEの使用量削減のため病棟のゾーニングを実施。患者ごとのPPEの交換を減らすことができ、職員の業務量の縮減にもつながりました。

挿管時の医師のPPE着脱確認
N95マスクのフィットテスト研修の様子

PPEの再利用を経験したことがない看護師の知識習得と感染予防意識の向上のため、継続して安全な着脱と再利用ができるよう取り組みました。具体的には、N95マスクに蛍光塗料を塗布して着脱時と保管時の汚染部位を可視化し、これに基づいてマスクの内側が汚染されない着脱方法を看護師間で検討して、保管方法の周知徹底を行いました。また、N95マスクとゴーグルを装着した状態でガウンを着用することにより汚染リスクが高まるため、リスクの大きい行動を明確にしてチェックリストを作成し、感染症内科病棟に勤務する看護師全員にチェックを実施しました。長時間装着した状態のN95マスクの定量的フィットテストも行い、漏れ率を数値化することで意識向上を図りました。

場面別 PPE早見表

必要なPPEを供給できるよう、物資担当者と打ち合わせ、在庫と使用の状況からPPEがなくなる時期を予測し、院内の対策本部で報告するようにしました。また感染対策チームで「場面別 PPE早見表」を作成し、供給体制が整うまで適切な使用を徹底しました。

外来部門の環境整備

救急外来観察室のストレッチャー:ディスポーザブルシーツなどを使用し、清掃や消毒がしやすい環境を整えました
外来部門での感染拡大を防止するためには、平素から実施している標準予防策を徹底・強化できる環境を整えることが重要です。患者が外来で使用する共有物品を必要最小限とし、使用後に清掃や消毒作業がしやすい物品の選択など外来環境を整えました。
診療室前に設置したPPE:救急外来診療室には入室時必要なPPEを固定設置し、着用徹底を促す工夫を行いました

また、外来を利用するすべての人が、自分が感染源とならないための対策に意識的に取り組めるような環境づくりが大切です。診療時における対患者の対策として、手指衛生、ユニバーサル・マスキングの徹底と3密対策を行いました。そのほか、有症状者をトリアージしたうえで診療場所や移動動線を分離し、決められたエリア内での飛沫と接触の予防策を徹底しました。一方、診療時における対医療従事者の対策として、外来に関わる全職種間で、COVID-19患者を想定した診療から検査、帰宅までの流れ、実施すべき感染対策に関する情報を共有し連携を図りました。さらに、外来患者の状況、職種、活動の種類などに応じて適切なPPEを選択・使用できるように、自施設内でPPEに関する運用を明確化しました。

面会制限への対応

業務調整用のケアボード

家族ケアの実情について病棟看護師へアンケートを実施したところ、面会の禁止や制限のため家族とのコミュニケーションがとれず、家族の思いや意向を把握しづらい状況があることがわかりました。業務調整用のケアボードに面会予定をマグネットで表示し、スタッフ間で共有して業務調整を行い、面会時間に家族対応ができるようにしました。また面会制限中はスタッフが通話の介助をしたり、入院中の様子が分かるような写真を家族に渡すなどの工夫を重ねました。

検討の様子

緩和ケア看護認定看護師と看護部でワーキンググループをつくり、「遺族の感染対策」について検討しました。遺族の方がPPEを脱衣する際に曝露することのない方法を検討するとともに、リスクを踏まえた同意書を作成し、遺族の立会いができるようにしました。

コロナ専用病棟の工夫

コロナ専用病棟のOpen-Closeを繰り返すことで、職員もコロナ専用病棟の準備は素早く「明日から(コロナ患者さんを)受けます」と看護師長が声をかけると、誰ともなくホワイトボードに準備工程を書き出し準備をしました。前回より、動きやすさを工夫し関係各所も協力し手際よく準備ができるようになりました。また当初より、病室のモニター音が聞こえるようにベビーモニターの設置、面会を外部と行えるように早期にWiFiを整備しモニターによる面会を行いました。病状が厳しい状況では、廊下をグリーンゾーンにしていたため、窓越しの最期の面会も積極的に行っていました。

ホワイトボードに準備工程を書き出し
ベビーモニター