患者申出療養について
「患者申出療養」は、困難な病気と闘う患者さんの思いに応えるため、先進的な医療について、患者さんの申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものです。保険診療との併用が認められています。
当科では、以下の患者申出療養に対応しています。
ご希望の際は、患者さんからの申出を受け、主治医が患者さんとお話し合いをした上で、実際に対応できるかどうか検討させていただくながれとなります。
早期乳がんの患者さんを対象とした患者申出療養
「経皮的乳がんラジオ波焼灼療法」
もともと先進医療として承認された技術ですが、既に新規登録が終了しています。
新たに希望する患者さんにも対応できるよう、2019年3月から患者申出療養による実施が認められました。
治療の特徴 | 皮膚の表面から乳がんに電極を刺し、ラジオ波帯の高周波電流によりがん細胞を死滅させる技術です。 小さな傷で済むため体の負担を減らせます。乳房を切除する必要がありません。 ラジオ波焼灼療法(RFA)とは |
対象 | 主な条件 ・針生検で原発の乳がんと診断されていること。 ・がんの大きさが1.5 cm以下で、乳腺内にとどまっていて、まだリンパ節や 他の臓器などには転移をしていないこと。 ・今回の乳がんに対して化学療法、ホルモン療法、放射線治療などの治療歴が ないこと。 ・年齢が20-85歳の女性であること。 ・術後患側乳房への放射線照射が可能であること。 ・放射線照射終了後3か月時点での乳房造影MRI検査及び遺残癌細胞がないか どうかを確認するための組織検査に同意があること。 ※このほかにも細かな条件がありますので、治療を希望される方は主治医に ご確認ください。 |
費用 | 417,800円(患者申出療養の費用) ※上記に加えて、通常の乳がん治療にかかる保険診療の費用の自己負担分を お支払いいただきます。 |
問合せ先 | 東京都立駒込病院 乳腺外科 03-3823-2101 受付時間:平日9:00-17:00 |
ラジオ波焼灼療法とは
ラジオ波焼灼療法とは、専用の針を刺して通電させ、針の先端周囲の温度を上げることでがん細胞を死滅させる治療方法です。がん細胞は、ある一定の温度以上に熱すると死滅することが知られています。
経皮的乳がんラジオ波焼灼療法は、乳がんに電極を差し込み、ラジオ波を発生させて周囲の温度を上げることでがん細胞を死滅させ、手術で取り除いたのと同じ効果が得られます。乳房に針を刺すだけで治療が終結しますので、乳房を大きく切ることなく治療を終了することが可能です。(図1)
ラジオ波焼灼療法は、現在、肝細胞がんに対しては保険診療として認められており、一般的な治療として広く行われています。経皮的乳がんラジオ波焼灼療法は、この技術や装置を乳がんの根治治療に応用したものです。(図2)
図1
ラジオ波焼灼療法イメージ図

図2
Cool-tip RFAシステム

乳がんに対するラジオ波焼灼療法では、現在肝細胞がんに対して一般的な治療として行われる際に使われている装置(Cool-tip RFAシステム)を使用します。
Cool-tip RFAシステムでは、専用の針を乳がんの中心に刺した後に通電することにより、針の先端周囲の温度を上げることでがん細胞を死滅させます。
がんの大きさ、病変の場所などにより、針先周囲の3.1cmの範囲が熱焼灼できる針と2.3㎝の範囲が熱焼灼できる針とを使い分けます。
治療開発の流れ
早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法(RFA)は、平成25年8月に先進医療制度としての実施を承認され、平成25年8月より開始されました(RAFAELO試験)。既に予定数の症例を登録完了し、現在、通常の手術と比較した治療成績の評価を待っている状況です。
上記のRAFALEO試験は5年間の追跡期間が予定されているため、その間、新たな患者さんはRFAを受けることができません。そのため、この期間にも新たな患者さんがRFAを受けることができるよう、患者申出療養制度を用いて、新たに臨床研究が計画されました(PO-RAFAELO試験)。
この試験は、患者申出療養制度としての実施が承認され、平成31年3月より開始されました
PO-RAFAELO試験への参加について
経皮的乳がんラジオ波焼灼療法(RFA)は、PO-RAFAELO試験に参加することにより、患者申出療養制度下において保険診療との併用で行うことが認められた治療です。
通常の乳癌治療にかかる保険診療費用の自己負担額のほか、ラジオ波焼灼療法に関する費用を全額自己負担でお支払いいただきます。
また、試験に参加するためのいくつかの基準に合致し、試験の計画に沿った診療計画に同意していただく必要があります。