外科 診療分野

消化器がん(胃・大腸)
消化管内腔の粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり無秩序に増えていくことにより発生します。早期では自覚症状はほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合もあります。
当院では消化器内科と連携し、ガイドラインに沿って総合的に診断します。手術は、安全性と根治性を考慮して、適応のある方には腹腔鏡での手術を行っております。

★ストーマ(人工肛門)ケアの支援
当院には、ストーマ造設後の処置やスキンケアについて相談できる認定看護師がおります。ストーマ用品の選択、生活指導など、より専門的な知識と熟練したケアを提供します。入院中にストーマについて指導を受けることで、退院後の生活への移行をスムーズにします。

  • 胆嚢(たんのう)結石症
    胆嚢(たんのう)は腹部の右上を占める肝臓に付着している臓器です。胆嚢は、肝臓で作られた消化液である胆汁を濃縮して一時的に貯めておく、貯蔵庫のような働きをしております。胆嚢の中に生成した胆石が胆嚢管に詰まってしまうことで胆嚢の炎症を起こすことがあります。
    胆石があっても、腹部の症状がない場合は胆嚢を摘出する必要はありませんが、何らかの症状のある胆嚢結石症の治療の基本は腹腔鏡下胆嚢摘出術です。胆嚢を取ってしまっても、胆汁はそのまま消化管に流れていきますので、問題はありません。術後に脂っこい物を食べた時にお腹がゆるくなる方もいらっしゃいますが、たいていの場合は数か月すると治まります。
  • ヘルニア(鼠経ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなど)
    ヘルニアとは、腸管や脂肪などのお腹の内容物が、腹壁の弱くなった部分(鼡径管、臍、腹部手術痕など)から飛び出す状態のことで、いわゆる脱腸と呼ばれることもありますが、腸の病気ではなく、腹壁が弱くなってしまったために生じる疾患です。自然治癒は期待できないので、治療は手術が原則です。
    放置すると、腸がはまり込んでしまい、強い痛みとともに、その膨らみが元に戻らなくなることがあります。その状態を嵌頓(かんとん)と言います。その場合は早急に医療機関を受診してください。腸管壊死を起こしている場合は緊急手術の必要があります。
    最近、歩くと患部に痛みが出てくる、膨らみが大きくなってきた、などの症状がある場合は早めにご相談ください。また、症状に緊急性がない場合は、手術時期のご相談も可能です。
    当院では腹腔鏡下の手術を積極的に行っており、手術前日に入院し、手術後の翌日に退院するも可能です(最短2泊3日)。

    説明図
    ヘルニア
    ヘルニア嵌頓
    鼠経ヘルニア体表からの手術の場合の創部
    腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術の創部
    ヘルニア手術後1
    ヘルニア手術2
  • 虫垂炎
    虫垂炎とは何らかの原因で虫垂に炎症がおこる病態のことです。
    「盲腸(もうちょう)」と呼ばれることもありますが、盲腸は虫垂の根元の大腸の一部を指す言葉です。
    虫垂炎の治療法は[1]手術、[2]抗菌剤での保存的治療の二つがあります。腹膜炎をおこしている場合は手術が必要です。炎症が軽度の場合や限局している場合は抗菌剤で治療を行うこともありますが、再発の可能性があります。
    虫垂炎を繰り返す場合は、炎症が落ち着いている時期に予防的に切除することをお勧めしております。炎症を起こしている時よりも合併症(感染など)の可能性が低く、入院期間も短く済みます。単孔式の腹腔鏡手術(傷がおへそ1か所のみ)も行っております。お気軽にご相談ください。
    説明図
    正常な虫垂
    虫垂炎
    腹腔鏡下虫垂切除術の創部
    単孔式虫垂切除術の創部
    痔核(内痔核、外痔核)
    痔核とは肛門周囲の血管が腫れて瘤(こぶ)になったものです(いわゆるイボ痔)。症状としては、痛み、排便時の鮮血などがあります。慢性的な便秘や下痢で肛門に負担がかかったり、排便時にいきむことによっても悪化しますので、痔の炎症を抑える座薬を使用するとともに、下剤の調整を行います。また、アルコールや香辛料を控えたり、血流をよくするために適度な運動やお尻を温めることも効果的です。
    座薬、緩下剤、生活習慣の改善を行っても改善しない場合は手術を行っています。
    当院では結紮切除術(けっさつせつじょ)を主に行っております。
  • 直腸脱
    直腸脱とは、肛門から直腸の粘膜および直腸壁全層が脱出してしまうものです。特に高齢の女性に多く、骨盤底部の筋肉を含めた組織の衰えが原因と考えられていますが、精神科疾患のあるかたの場合は、慢性便秘にともない、腹圧を強くかけてしまう、いきむ習慣がやめられないかたが多くいらっしゃいます。そのような場合は経肛門手術では再発が多いため、当院ではメッシュを使用した腹腔鏡下直腸固定術を行っております。
    排便時や長時間の歩行後に脱出し、椅子に座ると元に戻ってしまう患者さんも多く、診察室での診察時には脱出しないことも多いため、確定診断が困難です。そのような場合には、スマートフォンのカメラなどで構いませんので、脱出している時の写真を事前に撮影していただくと診断ができます。ご本人を連れて来られるのが難しい場合、ご家族が、脱出時の写真をお持ちになって、外来で相談していただくことも可能です。

    ※直腸脱については 松沢通信2023年September号をご覧ください。

    <手術>
    腹腔鏡でおこなっております。
    臍部は12mm、他は5mmの創が4か所です。
    直腸を挙上し、直腸の背側にメッシュを挿入。メッシュ、直腸、仙骨を縫合し、固定を行っております。メッシュは腹腔内に露出しないようにしています。(メッシュが腸管損傷や癒着の原因とならないように腹膜を縫合し、メッシュを置いた空間は閉鎖しています。)
  • 説明図
    直腸脱出状態
    2
    手術後
    4

    直腸背側にメッシュを挿入

    5

    強い腹膜とメッシュと直腸左側壁を縫合して、直腸を挙上します。

    S状結腸の長い方の場合は重積を予防するために、仙骨岬角のレベルよりも頭側へ、メッシュを広く固定します。

    8

    メッシュが露出しないように縫合し閉鎖します。

  • 手術実績

  • ( )内の数字は、腹腔鏡手術
    項目2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度2023年度
    胃がん手術5(5)3(3)1(1)1(1)14(1)
    大腸がん手術13(8)16(11)11(10)4(1)11(8)10(4)
    肝切除術100000
    胆嚢摘出術25(25)17(17)13(13)4(3)11(9)12(12)
    鼡径ヘルニア手術27(25)61(51)23(18)8(2)20(11)24(16)
    腹壁瘢痕ヘルニア手術2(2)2(2)3(3)000
    臍ヘルニア手術1(1)2(2)0003(3)
    乳房切除術411674
    虫垂切除術4(4)6(6)2(2)4(4)6(4)4(2)
    急性腹症手術5(2)2(1)2(2)1(1)28(1)
    痔核根治術571232
    直腸脱9514(1)6(6)12(12)
    その他95(1)14(4)19(3)35(6)12
    年間総手術件数110(72)127(94)72(53)53(16)102(44)95(47)