診療内容(泌尿器・移植科)

当院の泌尿器・移植科は東京女子医科大学泌尿器科と連携しています。

(※腎移植に関する情報は腎移植についてをご覧ください。)

診療内容

 泌尿器科の領域範囲はとても広いことが特徴です。泌尿器科の担当する臓器は主に尿路(腎臓、膀胱、尿道など)・男性生殖器(前立腺、精巣、陰茎など)です。尿路とは、尿を産生する腎臓、尿を運搬する腎盂・尿管、尿を貯める膀胱、尿を排出する尿道までのことをいいます。生殖器は、男性生殖器(精巣・精巣上体、前立腺、陰茎)を泌尿器科が担当し、女性生殖器は婦人科が担当しています。
 泌尿器科で扱う疾患は上記の臓器に生じる様々な疾患が対象であり、それらを大きく分類すると、下記の5つのグループに分類されます。
①排尿に関する疾患(前立腺肥大症、頻尿・夜間頻尿、過活動膀胱、尿失禁、神経因性膀胱など)
②尿路・生殖器の腫瘍(腎臓癌、腎盂・尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍など)
③尿路感染症(腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、精巣上体炎など)
④尿路結石(腎、尿管、膀胱結石)
⑤小児の尿路疾患(包茎、停留精巣、夜尿症、先天性疾患など)
どの分野に力を入れているかはそれぞれの病院の規模や立地環境、専門医療スタッフの人数などによります。
 たとえば、その地域(医療圏)で唯一の総合病院の泌尿器科であれば、幅広く診療することが求められる一方、大都市圏で多くの医療施設があれば、最先端の医療(ロボット支援手術や治験など)を提供する病院(大学病院など)、標準的な医療(一般泌尿器科手術やがんの検査など)を提供する中規模の市中病院、外来診療が主体の泌尿器科クリニックと住み分けられています。
 当院は東京の新宿駅に隣接するアクセスの非常によい病院です。周りには最先端の医療を提供している複数の大学病院が存在しているため、当院の泌尿器科では、一般的な泌尿器科疾患の診断および治療に力を入れています。もし当院で対応が困難な高度な医療が必要と判断された場合には、東京女子医科大学泌尿器科をはじめとした近隣大学病院や他の専門病院へご紹介させていただきます。

 このホームページでは、泌尿器科疾患の一般的なお話をさせていただき、泌尿器科への受診を検討する際の参考にしていただければと思います。

それでは、泌尿器科の疾患グループごとに説明していきます。

① 排尿に関する疾患
 前立腺肥大症、頻尿・夜間頻尿、過活動膀胱、尿失禁、神経因性膀胱など
・前立腺肥大症
 前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の出口に接し、内側に尿道が通っています。前立腺が肥大すると、内側の尿道を圧迫して尿が出にくくなるなどの排尿障害がみられます。組織学的な前立腺肥大は、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%にみられますが、そのうち治療を必要とする方の頻度は約25%と言われています。排尿障害を放っておくと、残尿(排尿後も膀胱に残る尿の量)が増え、残尿感や頻尿症状が現れたり、尿路感染や腎不全(腎機能の悪化)などの病気を引き起こすことがあります。
・頻尿、夜間頻尿
 頻尿の原因は様々ですが、過活動膀胱、残尿の増加、多尿(尿量が多いこと)、尿路感染、腫瘍、心因性に分けることができます。男性では前立腺肥大症に伴う症状としてみられることも多いです。また、女性では後述する過活動膀胱による症状としてよくみられます。多尿とは、1日の尿量が増えた状態をいいます。膀胱や尿道に問題がなくても、糖尿病などの内分泌疾患、水分の多量摂取、薬剤(利尿剤)、コーヒーやお茶、アルコール摂取による尿量の増加が頻尿の原因となります。また、膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染が起こると、膀胱の知覚神経が刺激されて頻尿になります。膀胱がんの重要な症状は血尿ですが、まれに膀胱癌による膀胱刺激症状として頻尿がみられることもあります。心因性の頻尿は、トイレのことが気になって何回もトイレに行ってしまう状態で、趣味など何かに没頭している時や、就寝中にはあまり症状がみられないことが特徴です。
・過活動膀胱
 膀胱に尿が十分溜まっていないのに、膀胱が勝手に収縮するという病気で、急に尿がしたくなって我慢ができず(尿意切迫感)、トイレに何回も行くようになります。また、尿が間に合わずに漏れてしまうこともあります(切迫性尿失禁)。過活動膀胱は日本で1000万人以上の男女が罹患する頻度の多い病気です。脳卒中などの脳や脊髄の病気のために膀胱のコントロールが効かなったり、前立腺肥大症による排尿障害のために膀胱が過敏になるなどの原因で発生しますが、加齢により起こったり、原因不明であったりすることも少なくありません。
・尿失禁
 尿失禁とは自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことで、40歳以上の女性の4割以上が経験しており、実際に悩んでおられる方は大変多い病気です。大きく別けると、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流性(いつりゅうせい)尿失禁、機能性尿失禁に分類されます。腹圧性尿失禁は女性の尿失禁の中で最も多く、週1回以上経験している女性は500万人以上といわれています。重い荷物を持ち上げた時、咳やくしゃみをした時などお腹に力が入った時に尿が漏れてしまうのが特徴で、加齢や出産を契機に尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が緩むために起こることが多い疾患です。また、急に尿がしたくなり、我慢できずに漏れてしまうのが切迫性尿失禁です。先述した過活動膀胱や前立腺肥大症が原因で起こったり、脳血管障害などで脳からの排尿の指令がうまくいかなくなった時などに起こります。
・神経因性膀胱
 排尿を管理している脳や脊髄、末梢神経などが損傷し障害されることで起こります。症状は原因となる神経疾患の部位により異なります。脳や脊髄(頚髄、胸髄、腰髄)の病気の場合(脳血管障害、パーキンソン病など)は、排尿反射の抑制が効かなくなることで、膀胱が勝手に収縮してしまう状態になり、頻尿や尿意切迫感などの症状が現れます。一方で、下位脊髄(仙髄より末梢の神経)の病気の場合(二分脊椎症、脊椎管狭窄症、手術による膀胱への末梢神経障害など)は、排尿反射がうまく起こらなくなり、膀胱の収縮が障害され、排尿困難(尿の勢いがない、残尿が残るなど)の症状が現れます。

 当院ではこれらの疾患の検査、診断を行っております。また治療についても、生活指導などによる行動療法やリハビリテーション、薬物療法から手術療法(経尿道的前立腺切除術など)まで幅広く行っております。

② 尿路・生殖器腫瘍
 腎臓癌、腎盂・尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍など
・腎臓癌
 初期では症状が出ることはまれです。画像検査が発達していなかった時代は、痛み、腹部腫瘤、肉眼的血尿などの症状で見つかる事が多かったですが、現在は、患者さんの8割近くが無症状で、がん検診や人間ドックなどで偶然発見されています。超音波検査やCT検査などを用いて診断し、初期であれば腹腔鏡のロボット支援手術による腎部分切除術が可能です。腫瘍が大きい場合には開腹や腹腔鏡にて腎摘出術が行われます。また、転移があれば薬物治療を中心に集学的治療を行います。
・腎盂・尿管癌
 腎臓で作られた尿は腎盂、尿管で膀胱まで運ばれます。腎盂、尿管、膀胱の内腔は尿路上皮という粘膜で覆われており、たばこなどの発癌誘発因子により癌が発生することがあります。腎盂、尿管の粘膜より発生する癌が腎盂・尿管癌(尿路上皮癌)です。また、腎盂・尿管癌の方の約30%に膀胱癌も発生するといわれています。最も多い症状は無痛性の血尿です。尿管が腫瘍で閉塞した際には腎臓に尿がたまること(水腎症)で発見されることもあります。尿検査や超音波検査、CT検査などの画像検査を行い、必要に応じて尿道から内視鏡を入れて尿路造影検査や尿管鏡検査を行うこともあります。治療の主体は外科的治療で、膀胱の一部を含めて腎臓、尿管を摘出します。開放手術と腹腔鏡手術を併用する方法があり、2022年にはロボット支援手術も保険適用となりました。
・膀胱癌
 先述した腎盂・尿管癌と同様に膀胱内腔の粘膜(尿路上皮)に発生する癌です。約80%は粘膜内にとどまる表在性の(浅い)癌ですが、再発率が非常に高く、再発を繰り返すうちに膀胱の筋層まで浸潤したり、リンパ節や他の臓器に転移をすることもあります。まずは尿検査や超音波検査を行い、膀胱鏡検査や必要に応じて画像検査を行います。膀胱癌が疑われれば、診断および治療目的に尿道から内視鏡を挿入して行う、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)を行います。また、切除した標本を解析し、必要に応じて追加治療を検討します。
・前立腺癌
 近年は高齢化、PSA検査の普及により急速に増加しており、男性における癌罹患数1位となっています。一般的には比較的ゆっくりと進行するため、寿命には影響しない場合もありますが、中には命にかかわるような進行癌も存在します。近年はがん検診などの血液検査でPSA高値を指摘され、無症状の早期癌の段階で発見に至る方がほとんどです。検査は血液検査によるPSA値の測定に加えて、超音波検査やMRI検査を行います。確定診断を行うためには前立腺針生検にて組織を採取し、顕微鏡で確認する必要があります。診断をもとに、病期や年齢、合併症などを考慮して、手術療法、放射線療法、内分泌(ホルモン)療法などの治療方針を決定します。
・精巣腫瘍
 男性の精巣(睾丸)にできる腫瘍で、20~30歳代の若い方に多く発生します。初期症状は乏しく、精巣の無痛性のしこりに気付き受診される方がほとんどです。多くは進行が早く、比較的早い時期に転移するため、転移による症状(腹痛、腰痛、呼吸困難、首のリンパ節の腫れなど)で気付く場合もあります。
 診断は超音波検査や血液検査にて腫瘍マーカーの測定を行い、CT検査やMRI検査などの画像検査で転移巣などの評価を行います。治療は第一に、鼠経部から精巣を精索とともに摘除する高位精巣摘除術を行います。その後、転移や腫瘍の組織型に応じて化学療法や放射線療法を追加で行います。

 当院ではこれらの泌尿器腫瘍の検査、診断を行っております。治療については、ロボット支援手術やより高度な医療の必要性があれば、大学病院など近隣施設への紹介を行っております。ご希望があれば、術後のフォローアップを当院で行っていただくことも可能です。また、前立腺癌検査(前立腺生検)や膀胱癌の経尿道的手術(TUR-BT)などは積極的に行っており、手術までの待機期間も比較的短くご案内が可能です。

③ 尿路感染症
 腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、精巣上体炎、尿道炎など
・腎盂腎炎、膀胱炎
 急性膀胱炎は最も一般的な尿路感染症です。急性膀胱炎は女性に多く、頻尿、血尿、排尿時の痛みが特徴的な症状です。特に基礎疾患がなくても、尿道から細菌が膀胱へ侵入することで発症し、尿検査により炎症細胞(白血球)や細菌が認められます。水分摂取と抗生剤治療で数日以内に完治することがほとんどです。しかし、放置したり、基礎疾患があったりして重症化すると腎盂腎炎を併発し、高熱や腰背部痛などの症状が現れます。また、尿路結石が原因で起こる事もあります。腎盂腎炎は重症化すると敗血症を起こし、大事に至る事もありますので速やかに病院受診が必要です。
・前立腺炎
 前立腺炎は、尿道から侵入した細菌によって起こる細菌性前立腺炎と非細菌性前立腺炎があり、いずれも排尿時の痛み以外に、頻尿、会陰部(陰嚢と肛門の間の部位)の不快感や痛みなどの症状が現れます。細菌性前立腺炎は発熱や倦怠感などの全身症状を伴うこともあり、適切に治療を行わないと慢性前立腺炎に移行することがあります。
・精巣上体炎
 精巣上体炎は睾丸の痛みを伴う腫大が特徴的で、抗生剤で治療します。
 中には精索(精巣への血管や精管の束)捻転による症状の場合もあり、その場合は発症後6-10時間のGolden time(精巣が壊死せず回復可能な時間)に整復手術を受けていただくのが望ましいため、早期に病院を受診しましょう。
・尿道炎
 尿道炎はクラミジア性尿道炎、淋菌性尿道炎などの性感染症が原因であることが多いので注意が必要です。いずれも排尿時に焼けつくような痛みや尿道から膿が出て尿が濁る、尿の出口が赤く腫れる、頻尿などの症状が現れることが多いですが、中には自覚症状のない場合もあります。特に女性は症状が軽い傾向にあり、知らないうちに感染を広げているケースも少なくありません。性感染症は有効な薬を使用しないと治癒しないため、心当たりがあれば必ず病院にて適切な治療を受けましょう。
尿路結石症(腎、尿管、膀胱結石)
 尿路結石症は、腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる疾患です。泌尿器科の外来でみられる疾患の中では最も頻度の高い疾患のひとつです。特に壮年男性と閉経後女性に高頻度にみられます。腎結石は無症状で経過することが多いため、検診の超音波検査などで偶然発見されることもあります。
 腰部の鈍痛の自覚や、感染結石のために膿尿や細菌尿のみを認めることもあります。尿管結石は疝痛発作(突然に生じる激しい痛み)と血尿が典型的な症状です。腎結石は無症候のうちに経過することが多いですが、これが尿管内に落下し、結石による尿流閉塞と腎盂内圧の急上昇によって、腰背部から側腹部にかけて激痛や下腹部への放散痛が生じます。夜間や早朝に起きることが多いことも特徴です。一部は腎盂腎炎を併発し、高熱を呈することもあり、その場合は緊急の処置が必要となることもあります。下部尿管に位置する結石では同時に膀胱刺激症状を伴うこともあり、頻尿、残尿感が起こります。
 膀胱結石、尿道結石では膀胱刺激症状の他、尿流の途絶が生じることがあります。
 結石の排出時には、通常、排尿痛や違和感を伴いますが、無自覚に排石されることもあります。
 結石の治療は、内服薬などで自然排石を図る保存加療や体外衝撃波(ESWL)、レーザーで結石を破砕する治療があります。一般的には1-2か月の保存加療でも自然排石が見られない場合や結石のサイズが大きすぎて自然排石は困難と考えられる場合に破砕治療を考慮します。
 当院では現在、破砕治療は行っておりませんので、破砕が必要と考えられる方には近隣施設への紹介を行っております。また、膀胱結石に関しましては当院でも破砕治療が可能です。

⑤ 小児の尿路疾患
 包茎、停留精巣、夜尿症、先天性疾患など
 ほとんどは良性疾患で、成長とともに自然改善するものから、生活に支障をきたすために泌尿器科的な管理が必要なもの、手術が必要なものまで様々な疾患が含まれます。
 具体的な疾患としては、停留精巣、尿道下裂、性分化疾患、真性包茎、亀頭包皮炎、膀胱尿管逆流症、水腎症、膀胱直腸機能障害、夜尿症などがあります。
 疾患が非常に多岐にわたりますので、亀頭包皮炎のような外来にて対応が可能なものもあれば、小児科や小児外科の先生方とも協力し治療にあたる必要があるものもあります。
 当院には小児科医が不在のため、気になることがあればまず診察をさせていただき、必要があれば対応可能な施設への紹介をさせていただいております。