東京都立神経病院身体的拘束最小化のための指針
令和7年4月1日作成
令和7年5月30日改定
身体的拘束最小化に関する基本的な考え方
身体的拘束は、患者の行動の自由を制限することであり、尊厳ある生活を阻むものである。患者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人一人が拘束による身体的・精神的弊害を理解し、身体的拘束廃止に向けた意識をもち、緊急・やむを得ない場合を除き身体的拘束をしない診療・看護の提供に努める。
基本方針
- 身体的拘束は原則禁止とする
- 身体的拘束の定義
身体的拘束とは、抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいう
〈身体的拘束の用具〉
[1]ミトン型手袋
[2]マグネット式抑制ベルト(胴)
[3]小児用抑制チョッキ
[4]手・足首ベルト
[5]車椅子用安全ベルト
[6]その他医師が必要と認めたもの - 緊急やむを得ず身体拘束を行う場合の要件
緊急やむを得ない場合の事由で、[1]生命に関わる時(切迫性)、[2]他に替わる方法がない時(非代替性)、[3]身体的拘束が一時的である事(一時性)の3つの要件がすべて満たされた場合で、かつ患者もしくは家族の同意及び医師の指示があること
〈切迫性の判断基準〉
[1]生命維持、回復のためのチューブ類を抜去することで状態悪化に繋がる場合
[2]手術直後に安静や安全が守れない場合
[3]痙攣時において身体保護が必要な場合
[4]意識障害や見当識障害により不穏行動があり、危険行動が予測される場合
[5]小児や理解力の低下があり、治療上必要な体位(安静)が保てない場合
[6]病的反射や不随運動等により意思で体動を抑えられない場合
[7]自傷、他害の恐れが強い場合
身体的拘束最小化のための体制
院内に身体拘束最小化チームを設置する
- 構成メンバー
[1]精神科医師
[2]脳神経内科医師
[3]副看護部長
[4]公認心理師
[5]MSW
[6]認知症看護認定看護師
[7]他の活動内容に応じて委員長が必要と認める者 - チームの役割
[1]定期的にチーム会議を行う
[2]身体的拘束の実施状況を把握する
[3]身体的拘束の実施状況について管理者を含む職員に定期的に周知する
[4]身体的拘束ラウンドを実施し、多職種の視点において身体的拘束の最小化に向けた医療・ケアを検討する
[5]定期的に指針・マニュアルの見直しをする
[6]身体的拘束最小化のための職員研修を年1回実施する(全職員対象)
身体的拘束解除に向けた取り組み
- チューブ類の自己抜去防止
患者の状態をアセスメントしチューブ類挿入による苦痛を最小限とする
[1]チューブ挿入による苦痛の緩和をする
・苦痛の少ないチューブの種類やサイズを選択する
・痛みや不快感のサインを把握する(鎮痛剤投与も検討)
・固定部位の観察と清潔の保持を適宜行う
[2]環境の調整をする
・チューブ挿入について適宜わかりやすく説明を行う
・チューブに注意が向かないよう視界に入らない調整をする
・チューブ挿入によって行動の妨げにならぬようにする
・関心を寄せられる活動を取り入れ、無為に過ごす時間を減らす
[3]チューブ類の早期抜去に向けた介入を行う
・挿入目的を明確にして、抜去の方向性を検討する
・早期抜去を目標にして、多職種とのカンファレンスを行う - 転倒予防
[1]対象者の行動の理由を看護職が受け止める
否定や説得をしない 真意を確かめる
[2]自立的な動作を支援する環境づくりをする
手の届くところに必要な物を置く ベッドの高さや位置等を移動しやすくする
[3]排泄ケアを配慮して行う
排泄パターンを把握し、先回りして排泄誘導を行なう
[4]心理面への対応とコミュニケーションを良好にする
頼みやすい信頼関係を築く
生活史や価値観を踏まえて言葉の真意を汲み取る
[5]生活リズムの調整をする
夜間の不眠を解消し日中の活動を促す
向精神病薬の使用について
向精神病薬使用時は、専門家に相談し薬剤使用による拘束とならないようにする。また、向精神病薬使用にあたっては、非薬物療法を前提とし最小限の薬剤で症状の軽減に努めていく
身体的拘束を行う場合の基準
医療事故予防マニュアル