平衡機能障害

患者さんへ

疾患概要

平衡機能障害

人間が、バランスをとって歩いたり、動いたときに物をぶれないように見たりすることは、眼からの情報や、足底の感覚に加えて、両耳の中にある内耳感覚、の3つの情報が脳へ伝えられ、脳神経でそれらの情報を統合して、再び、眼球や頭部・体の動きを調整する指令を下す、といった機構(平衡機能)で成り立っています。神経難病疾患の患者さんでは、こうした平衡機能の障害が生じることによって、めまいやふらつきなどの症状が生じることがあります。脳の中の眼球運動の指令に関わる部位は、眼球運動の異常を詳しく調べることで、どの部位の障害かを知ることができます。当科では、当院入院中の神経筋疾患患者さん(脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、パーキンソン病とその関連疾患、などの脳神経内科疾患、神経小児科疾患、脳神経科疾患によって生じためまい・ふらつきについて、内耳から脳神経までの平衡機能の不具合を反映する眼球運動の異常を評価することによって、その障害部位を特定したり、疾患によってみられる特徴的な所見を検討し、神経難病の補助診断の1つとしての役割を担っています。

症状

めまいは、耳の疾患で生じることが多い症状ですが、脳神経に原因があるめまい・ふらつきの場合、酔っぱらっているわけではないのに、歩くと千鳥足になったり、階段を降りるときにふらつきを強く感じたたり、話しにくさ、飲み込みにくさといった、脳神経障害によるのどの症状が一緒に生じたりすることがあります。

治療法・対処法

治療法・対処法

ENG当科では、顔にシール状の電極を張り付けて、スクリーン上に投影された光の点や線をみていただくなどした際の眼球運動の異常所見を記録して評価します(電気眼振図計による平衡機能検査)。また、内耳機能の評価法として、平衡機能を司る前庭神経のみならず、聴覚を司る蝸牛神経の働きを評価するために、聴覚系検査を行い、内耳から蝸牛神経の障害を調べることができます。脳神経障害によるのどの症状に関しては、内視鏡により、口からのどの奥までの話す、飲み込むなどの運動麻痺の評価を行うことができます。

患者さんへのワンポイントアドバイス

同じ疾患でも、機能障害の部位や程度はことなりますので、まずは、専門医師の診断をお受けいただき、現在の機能障害の現状について、正しく評価してもらうことが大切です。一般的には、めまい・ふらつきがある場合、脚立の上に立つ、駅のプラットホームの端を歩く、人込みの中を歩く、などは、転倒・転落の原因となるので、避けた方がよいでしょう。

当科の専門医

脳神経内科、神経小児科、脳神経外科の各主治医からのご依頼を受けて、神経耳科医師が、平衡機能、聴覚機能、嚥下機能、などの脳神経障害に起因した各種機能の評価を担当します。

医療関係者へ

疾患概要・病態

天井つりさげENG

脳脳幹機能障害をきたすと、追従運動、急速眼球運動、固視の障害が生じるため、精密に眼球運動異常を評価することで、小脳や脳幹などの中枢前庭機能の評価が可能です。当科では、座位での検査が困難な患者さんでも対応可能な天吊り型スクリーンが常備されており、ストレッチャー仰臥位で記録可能な電気眼振図計を用いて、水平および垂直眼運動系の精密な平衡機能検査により、各種神経変性疾患の補助診断としての役割を担っています。

当院で行っている臨床研究・実績など

各種神経変性疾患における神経耳科学的所見(眼球運動異常)について、国内外の学会で報告しています。

  1. 第79回日本めまい平衡医学会総会2020.教育セミナー:神経難病における神経耳科学的所見.内藤理恵
  2. XXX Barany Society Meeting 2018. Visual fixation suppression of caloric nystagmus in progressive supranuclear palsy. Naito R, Watanabe Y, Naito A, et al.