放射線治療について
放射線治療は、がん治療の三本柱のひとつとされ、外科療法や薬物療法(抗がん剤による治療)と並んで重要な役割を担っています。その中でも、放射線治療は身体への負担も比較的少なく、さまざまながんの治療に適用されています。
当院では、各種がん病巣への強度変調放射線治療(IMRT)やHyperArcを用いた脳定位放射線治療(SRT)、体幹部定位放射線治療(SBRT)などの高精度放射線治療から疼痛緩和に代表される緩和的放射線治療まで幅広く実施し、がんの種類や病状、患者さんの全身状態に応じて最適な放射線治療を提供しています。また、前立腺がんに対する組織内照射(永久挿入密封小線源治療)や骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんに対する内用療法(塩化ラジウム223)なども実施しています。
放射線治療は単独で行われることもありますが、手術や薬物療法と組み合わせた集学的治療が行われる場合もあります。当院では、放射線科治療担当者と各診療科医のバックアップのもとに、包括的な放射線治療を実施しています。また、緩和ケアやメンタルケア、リハビリテーション、栄養課、薬剤科など関連する部署とのコミュニケーションを取り合い、患者さんにとって最善の治療を選択できるよう体制を整えています。
高精度放射線治療
当院では、画像誘導放射線治療(IGRT)、強度放射線治療(IMRT)、定位放射線治療(SRS/SRT/SBRT)などの高精度放射線治療に取り組んでいます。
- 画像誘導放射線治療(IGRT)
照射直前に取得するX線画像やCT画像を基に、治療計画画像との照合を行い、ミリ単位の精度で位置合わせを行います。これにより、病巣部に正確に放射線を照射することができます。 - 強度変調放射線治療(IMRT)
病巣部の形状に合わせた放射線の強度分布を作り、周囲の正常組織への影響をできるだけ抑えた治療を行うことができます。
当院では、強度変調回転照射(VMAT)を実施しています。治療精度を高めつつ照射時間を大幅に短縮した効率的な照射を行い、患者さんの負担軽減に貢献します。 - 定位放射線治療(SRS/SRT/SBRT)
IGRTやIMRTといった高度な技術を組み合わせ、病巣部へ高線量の放射線をピンポイントで照射します。頭部のみならず体幹部定位放射線治療(SBRT)にも対応しています。
緩和的放射線治療
がんによる疼痛や出血などをはじめとする身体症状の改善や生活の質(QOL)の向上を目的として行われる放射線治療です。
緩和的放射線治療では、患者さんの全身状態の把握や自覚症状の有無、他覚症状の把握、症状の原因となっていると考えられる病変の特定や病歴の把握などが大切です。また、緊急的な放射線治療が必要な症例(脊髄圧迫や上大静脈症候群、気道狭窄)にも柔軟に対応していますのでご相談ください。
永久挿入密封小線源治療
当院では、密封された放射線源(ヨウ素125シード)を前立腺に直接挿入し、前立腺がんの治療を行う組織内照射(永久挿入密封小線源治療)を実施しています。(2005年からの総数:450人余り)
密封小線源治療は、周囲への被ばくを抑えつつ、病巣に放射線を集中照射します。開腹手術不要で、輸血の心配がなく合併症リスクが低い治療方法です。前立腺内に限局している低~中リスク群のみならず、高リスク群では、ホルモン療法と外照射を併用することでさらに高い治療成績が期待できます。
また、ハイドロゲル(商品名:SpaceOAR)を前立腺と直腸の間に注入することにより副作用の軽減が期待できます。

内容療法
ラジウム-223(医薬品名:ゾーフィゴ)は『骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌』に対して治療を行います。ゾーフィゴは、アルファ線放出核種であるラジウム-223を医薬品として実用化した放射性医薬品です。ラジウム-223には、骨の成分であるカルシウムと同じように骨に集まりやすい性状があり、体内に注射すると、活発な代謝をしているがんの骨転移巣に運ばれます。ラジウム-223から放出されるアルファ線が、骨に転移したがん細胞を攻撃します。アルファ線は、エネルギーが高く、細胞を破壊する力が強いという特徴がありますが、その力が届く距離は体内で0.1ミリメートル未満と短いことから、正常細胞に影響を及ぼすことはありません。
使用装置
令和7年3月にVarian社製の高精度放射線治療装置『TrueBeam 』を導入しました。
当院のTrueBeamにはさまざまな補助装置が搭載され、質の高い放射線治療を実現します。
高エネルギー放射線発生装置(リニアック)
- TrueBeam(トゥルービーム)Varian社製の高精度放射線治療装置。定位放射線治療(SRT/SBRT)から、強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)まで、多様な照射方法に対応しています。
照射精度が非常に高く、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えながら、腫瘍を的確に治療することが可能です。また、呼吸位相に合わせた画像の取得や照射も可能となっており、様々な部位に対し精度の高い放射線治療を実施することが可能です。
補助装置
- HyperArc(ハイパーアーク)
TrueBeamに搭載される頭部の定位放射線治療(SRS/SRT)専用のシステムです。(北多摩北部医療圏では当院のみのシステム:令和7年8月現在)
脳腫瘍に対して、複数病変を一度に、短時間かつピンポイントに治療することができます。これにより、従来よりも患者さんの負担が軽減され、効率的な脳定位放射線治療が可能です。 - IDENTIFY(アイデンティファイ)
TrueBeamに付属する光学式体表面モニタリングシステムです。天井に設置された3台の光学式カメラを使用し、患者さんの体表面をサブミリメートルの精度でモニタリングします。これにより、治療前の位置合わせの精度向上や治療中の体動検出を行い、照射精度の向上を図ります。
放射線治療計画装置
- Eclipse:(Varian社)
三次元原体から、IMRTやVMAT、SRTなどの高精度放射線治療まで複雑な治療を計画立案するシステムです。当院のEclipseには、モンテカルロ相当の線量計算アルゴリズムを搭載しており、線量計算精度の高い治療計画の立案が可能です。
- RayStation:(RaySearch社)
Eclipseと同様に、高精度に放射線治療の計画を立案するシステムです。モンテカルロアルゴリズムを搭載しており、不均質領域の線量計算精度が非常に高い装置です。
医療スタッフ体制
- 放射線治療専門医:2名
- 診療放射線技師:6名
(うち放射線治療専門放射線技師:2名、放射線治療品質管理士:2名) - 放射線治療専従看護師:2名
放射線治療実績(2021年4月~2025年3月)
前立腺 | 235件 |
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乳腺 | 116件 |
子宮・卵巣 | 78件 |
造血器リンパ系 | 46件 |
脳・脊髄 | 34件 |
消化器 | 33件 |
骨転移 | 81件 |
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脳転移 | 16件 |
患者さんの受け入れについて
受診を希望される場合は、「患者地域サポートセンター 地域連携支援グループ」(内線: 2073· 2169 ) へご連絡ください。
なお、前立腺がんに対する放射線治療については泌尿器科外来(内線:2440 ) を窓口としております。
放射線治療棟のご案内(エリアマップ)
当院は、地下1階の「放射線治療棟」になります。以下の経路でお越しください。
(本館の地下1階からは行かれませんのでご注意ください。)


