情報統括センター

概要

広尾病院では、患者さんが安心して医療を受けられるように、情報統括センター(Information Management and Governance Center)という特別な部門を設置しています。

このセンターは、病院内の情報を適切に管理するとともに、各部署が効率的に業務を遂行できるよう、業務方針の整理や新ツール・プログラムの提供を行っています。また、システム同士をつないで部門間の調整を行ったり、調達についてのアドバイスを行ったりするなど、多様な活動を通じて医療現場を支援しています。

システム開発(特色に詳述)を通して、患者さん一人ひとりに合ったきめ細かな医療サービスを提供し、医療スタッフの負担を減らして業務効率化を図っています。同時に、病院職員間のコミュニケーションを改善し、気づきを共有化する仕組みが常時稼働していることで、病院全体の診療能力を高め、安全で信頼できる医療環境づくりを進めています。このような取り組みを通じて、患者さんが安心して治療を受け、より快適で安全な入院生活を送れるための重要な礎となっています。

特色

情報統括センターには2つの大きな特徴があります。

 1.組織構成と運用

いわゆるシステム委員会と異なり、医局、看護部、薬剤部、放射線科、計画課、医事課などの部門を超えて、課長クラスで週1回合議しています。各部門内の問題を共有し、部門間の意思疎通を高めています。問題を分析し、システム開発で解決できるもの、現状のシステムの利活用で解決できるもの、運用で解決できるものに分けて、院内のシステム費用を適正化しています。事務部門も参加することで、問題の把握、調査、予算調整、意思決定、実行まで、一体的に運用しています。

 2.病院情報システムの院内開発体制

医療者自らがユーザの視点から電子カルテを補完するシステムを開発しています。その代表的なシステムがHiPERです。 

HiPER2.0(Hiroo information system for Pediatrics and Emergency Room 2.0)の概要と機能紹介

HiPERは2003年に救急現場と小児科領域での診療支援システムとして構築され、2005年の電子カルテ導入に伴い病院全体の支援を目的に、リアルタイム診療支援装置として再構築され、HiPER2.0として現在に至ります。 

特徴は患者情報だけでなく、病院内で行われる医療行為を漏れなくリアルタイムで把握し、誰がどこで何を行い、何を知っていて何を知らないのかをモデル化することで診療を支援します。「コミュニケーションコントロール」を通して人と人、人と機器の認識のズレを検知しコミュニケーションを改善することで、個々の持つパフォーマンスを最適化し、病院全体の能力を引き出しています。 

院内PHSを利用したAI音声による連絡は、該当患者のカルテを開くことなく医師や看護師に患者情報を伝えることに役立っています。これを実現するためには、適切な相手の選別やタイミングの調節が必要です。そのために、院内の職員の位置情報を含めた高度な業務解析モデルが活用されています。 

PreRRS(Pre-Rapid Response System)

HiPERの代表的な機能の1つが、PreRRSです。Rapid response system(RRS)は病状増悪を早期に察知し、迅速に対応することで、院内心停止などを減少させる医療安全管理システムです。従来は患者さんの状態を看護師が確認し、カルテに記載した後に対応するものでした。PreRRSは、看護師がカルテ記載をする前(Pre)に、モニタリングデータから機械学習で状態悪化を検出し、リアルタイムにカルテ記載を解釈、統合的に病態を理解し、担当看護師にPHSで直接伝えることにより、さらに早期の段階で医療介入を可能にします。また、定期的な症例検討会を実施し、現在も機能向上の見直しを継続しています。

このシステムは当院の情報統括センターが独自に開発しました。効果として、重症化前の早期介入による患者アウトカムの改善、予期せぬ心停止や緊急ICU入室の減少、在院日数の短縮と医療の質の向上が確認されています。

 新たな取り組み

電子カルテ情報共有サービスが始まろうとしています。その医療情報の交換規格がFHIRと呼ばれるものです。外部との連携を用途に始まっていますが、将来的には院内の情報のすべてがFHIRでやり取りされるようになると見込まれています。それに備えて、オープンソースによるFHIRの開発環境を構築しています。

 

組織構成
医局3名
看護部門1名
薬剤部門1名
放射線部門1名
事務部門5名(医事課、計画課、総務課など)

実績

「リアルワールドの機械学習応用 PreRRSについて」 SEAGAIA MEETING 2024 IN 宮崎

「HAPI FHIR によるJP Core Observation LabResultプロファイルの実装経験」 第29回日本医療情報学会春季学術大会

最終更新日:2025年8月28日