転移性脳腫瘍に対する外科的治療

<どのような場合に外科的治療が必要ですか?>

更新日 2026年4月21日

転移性脳腫瘍に対する外科的治療の適応は、慎重に検討する必要があります。

  • 脳転移の大きさ、部位
  • 脳転移の周囲の浮腫の程度
  • 症状の有無
  • 原発がんの状態、抗がん剤は効くのか
  • 患者さんの全身状態

以上を踏まえて、放射線治療科、原発がんの診療科と協議し、手術摘出にリスクを上回るメリットがあると判断した場合に手術適応としています。

脳転移に対する手術適応の一般的な指標として、米国の脳腫瘍学会から以下のような項目が挙げられています。

  •  注目情報画像で診断がつかないもの
     注目情報脳転移による神経症状があるもの
     注目情報大きい脳転移
     注目情報脳転移以外、他の臓器に転移がないもの

Aizer et al. Neuro Oncol. 2022

<脳の機能を守りながら脳転移を治療する>

当院では、脳機能を温存しながら転移性脳腫瘍を治療するために、手術、放射線治療、化学療法を柱とした、集学的治療戦略をとっています。重要な機能の領域に近い腫瘍に対しては、覚醒下手術をお勧めしています。覚醒下手術により神経機能を確認しながら腫瘍の摘出を行うことで、機能温存しながら最大限の腫瘍摘出が可能となります。機能領域に残存させた腫瘍に対しては、放射線治療、化学療法を組み合わせて治療を行っています。放射線治療に関しては、正常脳への照射線量を最小限にする照射法を選択することで、機能温存を図っています。化学療法に関しては、遺伝子解析に基づく個別化した化学療法を選択することで、抗腫瘍効果を最大限にしつつ、これも機能温存に結びついています。

<脳機能を守るための覚醒下手術>

覚醒下手術とは、手術中に麻酔から覚醒してもらい、症状を確認しながら脳腫瘍を摘出する方法の1つです。頭蓋骨を開けたり閉めたりする間は麻酔で眠っていただき、腫瘍摘出の間は麻酔を切って覚醒してもらいます。手術中の痛みは、十分な局所麻酔でコントロールされます。当科では、覚醒下手術を年間50件以上行っており、麻酔科、手術室看護師、神経機能評価のスタッフ、生理検査スタッフなどが覚醒下手術に習熟していますので、覚醒下手術を安全に施行することが可能です。

その他、機能温存のための手術を行う方法として、術前にfunctional MRIを施行し脳機能局在を把握すること、MRI tractographyにて神経線維束を描出し、腫瘍との関係を事前に把握することで、機能損傷のリスクを減らしています。術中のNavigation systemを使うことで、実際に摘出中の視野の何処に重要な神経線維束が走っているかを表示させ、手術の安全性を高めています。

<覚醒下手術の実際の流れ>

手術前の準備

  • 手術前の言語機能、運動機能を確認するため、リハビリテーション科による詳細な神経機能評価があります。
  • 手術中に行う神経機能評価を事前に行うため、中央大学神経心理学教室の先生方の診察があります。
  • 手術前日~数日前の夕方に手術室にご案内し、実際の手術のときと同じ体勢で手術台の上に寝ていただき、体位の確認を行います。体勢が辛くないよう、微調整を行います。
  • 手術中にリラックスできるような好みの音楽CDを事前にお預けください。

 手術当日

  • 手術室に朝9時に入ります。なお、麻酔科医が全面的に麻酔管理を実施します。
  • 医師の指示に従って手術台に寝ていただきます。楽な姿勢をとれるようにご協力しますので、苦痛があれば申し出て下さい。
  • まず血管の確保(点滴)を行い、心電図などのモニターを装着します。酸素マスクを着けて静脈麻酔により鎮静、鎮痛を行い軽く眠るような感じになります。
  • 手術中に首の痛みが生じる場合は、麻酔科医により頸部の神経ブロックを行います。
  • 尿の管を挿入し、違和感がないように膀胱内に麻酔薬を注入します。
  • 頭部に局所麻酔の注射をして、頭部固定用の装置を取り付けます。
  • 皮膚を切開する部位に局所麻酔を注射し、開頭します。
  • 硬膜を開けた時点で鎮静剤、鎮痛剤の投与を一旦中止します。徐々に目が覚めてくることと思われます。
  • まず、脳の表面を電気刺激しながら、以下の機能がどこに分布しているのかを確認します。

    注目情報運動機能:手を握る、肘や肩を動かす、足を動かす、目を開け閉めする、しゃべるなどを行っていただきます。
    注目情報言語機能:言語機能のマッピングをおこないます。術前に練習したように、文章の復唱、物の名前、質問に答えるなどの検査をします。
    注目情報その他の脳機能:記憶、計算などの高次機能に関して、術前に調べた検査と比較し脳機能の悪化がないか確認します。また腫瘍の場所によっては、聴神経や顔面神経などの脳神経の機能、脊髄を走る運動、感覚神経の機能などを確認しながら手術を行います。
  • 腫瘍摘出に入りますが、摘出中も常に神経機能を確認しながら進めます。

摘出終了後

  • 再び寝ていただき、開けた頭蓋骨を元に戻して、皮膚を縫合閉鎖します。
  • 手術が終了したら麻酔薬を中止します。
  • 目が覚めたらCTを撮影して集中治療室に入室します。