脊椎腫瘍センターの概要
令和7年6月
脊椎腫瘍はいわゆる脊柱(せぼね:骨)にできる腫瘍です。発生部位により頚椎(くび)、胸椎(せなか)、腰椎(こし)、仙骨(でん部)腫瘍に分類されます。
脊柱そのものから病気が生じる場合(原発性脊椎腫瘍)もありますが、主にがんからの転移によって引き起こされることが多いことが知られています。治療の進歩により、がん患者さんの長期生存が可能となった一方、肺がん、乳がん、前立腺がんなどが骨転移を引き起こし、これが脊柱にまで及ぶことがあります。転移性脊椎腫瘍は、特に脊柱を破壊することで痛みや麻痺を引き起こし、患者さんの生活の質(Quolity of life:; QOL)に大きな影響を与えます。
脊髄の損傷が進行し、完全麻痺に至ると、神経機能の回復は難しく、QOLが大幅に低下することが多いことが知られています。また、がんの終末期において自力で動けなくなることは、精神的な苦痛を引き起こし、予後の悪化を招きます。このような患者さんに対して、早期に病変を発見し、適切な治療を行うことが非常に重要です。
当院では脊椎腫瘍センターを開設し、整形外科、放射線科、骨軟部腫瘍科、リハビリテーション科、総合診療科、緩和ケア科が密に連携を取り、総合的な判断で治療方針を決定することで質の高い医療の提供を目指しています。
目次
1. 脊椎腫瘍の分類と症状
 1-1. 原発性脊椎腫瘍
 1-2. 転移性脊椎腫瘍
2. 症状・診断
 2-1. 症状
 2-2. 診断
3. 治療 
 3-1. 手術
 3-2. 放射線療法
 3-3. 薬物療法
4. 診療体制
5. 患者さんへの支援
6. 外来予約方法
- 1. 脊椎腫瘍の分類と症状
- 脊椎腫瘍は、大きく分けて脊椎そのものに病気ができる原発性と、他の臓器から転移してきた転移性の二つに分類されます。
- 1-1.原発性脊椎腫瘍
- 原発性脊椎腫瘍は、脊椎そのものから発生する腫瘍です。 
 良性腫瘍(例:類骨骨腫、血管腫):通常、緩やかに成長し、隣接する組織への浸潤は少ないです。
 悪性腫瘍(例:脊索腫、骨肉腫) :より侵襲的で、迅速に成長し、周囲の組織に広がることがあります。
 種類も豊富で若い方からお年寄りの方までの幅広い年齢層にみられますが、稀な病気です。
- 1-2. 転移性脊椎腫瘍
- 転移性脊椎腫瘍は、他の部位で発生したがんが血流やリンパ系を通じて脊椎に転移することによって発生します。一般的には、肺がん、乳がん、前立腺がん、腎がんなどが脊椎に転移しやすいとされています。転移性腫瘍は、中・高齢者に多い傾向にあり、一般的に脊椎腫瘍が発見された場合にはこちらの病気であることが多いです。 
- 2. 症状・診断
- 2-1.症状
- 脊椎の痛みと神経症状があります。初期では、体を動かした時に生じる腰背部痛などがあります。脊椎が腫瘍によって崩れたりつぶれたりすれば、体の支柱である背骨が曲がったりずれたりして痛みのため姿勢を保てなくなります。腫瘍が大きくなって背骨の中を通る神経の本幹(脊髄)やその枝(神経根)を圧迫するようになると、手足の麻痺や排せつの障害がおこります。脊椎腫瘍の初期では、それと似たような症状を起こす脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどと間違えられることもあります。 
- 2-2. 診断
- すでにがんの診断と治療を受けている場合は、その転移巣の可能性を考慮しつつ全身の検索を行います。一方、原発巣が不明の場合は、採血検査、種々の画像検査所見を参考に原発巣の検索をおこないます。状況に応じて脊椎腫瘍の生検検査を行うこともあります。腫瘍の局在や神経の圧迫程度の評価にはMRIが有用です。また、原発性脊椎腫瘍では画像による診断後に、生検検査を行い最終的な組織診断を得ます。 
- 3.治療
- 腫瘍の種類、占拠部位、病期などを総合的に評価して治療法を選択します。 - 3-1.手術
 - 脊椎後方固定術 - 状況に応じて、以下の手術を行います。 
 ①椎体形成術
 破壊された椎体にセメントをつめて補強する
 ②脊椎後方固定術
 金属製のボルトとロッドで脊椎を補強する
 ③除圧術
 骨や腫瘍を削り神経の圧迫を解除する
 ④腫瘍脊椎骨全摘術
 腫瘍に侵された脊椎を手術で切除する- 詳細は整形外科のホームページをご覧ください。 
- 3-2. 放射線療法
 - 通常照射と定位照射 - 放射線治療は、以下のような幅広い目的で用いられます。 - ①痛みのある骨転移に対する疼痛緩和目的 
 ②脊髄圧迫に対する神経機能の改善目的
 ③オリゴ骨転移に対する根治目的 などです。- 照射方法には、少し広い範囲にマイルドな線量を照射する「通常照射」と、狭い範囲に強力な線量を照射する「定位照射」があります(右図)。 - それぞれの照射法には異なる特性があるため、患者さんの病態に合う方法をご提案します。 - 詳細は以下をご覧ください。 
 通常照射:がんの症状緩和のための放射線治療
 定位照射:骨転移の定位放射線治療
- 3-3. 薬物療法
- 腫瘍により骨が脆くなり骨折を起こす(病的骨折)予防のために、薬物による治療を行うことがあります。副作用として口腔内の歯、あごの骨のトラブルが起こることが知られておりますので、予防目的に当院の歯科口腔外科と連携した診療を行っております。がんそのものに対する薬物治療はそれぞれの診療科で行います。 
- 4.診療体制
- 脊椎腫瘍センター長:整形外科 杉田 守礼 
 副センター長:放射線科治療部 伊藤 慶
 転移性脊椎腫瘍:整形外科 藤原 正識
 原発性脊椎腫瘍:骨軟部腫瘍科 平井 利英
 放射線診断:放射線科(診断部) 高木 康伸
 リハビリテーション:リハビリテーション科 長尾 卯乃
 内科的バックアップ:総合診療科 久保田 尚子
 緩和ケア(疼痛管理他):緩和ケア科 鈴木 梢- 外来予定表(整形外科) - 月 - 火 - 水 - 木 - 金 - AM - 藤原 正識 - 杉田 守礼 - 藤原 正識 - 杉田 守礼 
- 専用の外来はないため、放射線治療依頼であれば放射線科治療部、原発不明がんで内科的要素が強ければ総合診療科、紹介目的が明確でなければ整形外科にご紹介ください。また、画像検査による確認をご希望される場合には、医療連携担当にご連絡いただければCT、MRI、PET検査を当院で行うことも可能です。 
- 5. 患者さんへの支援
- 『脊椎腫瘍センター』では、がん治療に伴う痛みや麻痺、身体的な制限が患者さんに与える影響を最小限に抑えることを目指しています。治療方法については、患者さん一人ひとりに合った個別のアプローチを提供しています。また、治療と並行して、患者さんが抱える心理的・社会的な問題にも対応できるよう、リハビリテーション科や緩和ケア科と連携し、包括的なサポートを行っています。 
 リハビリテーション科のページ
 緩和ケア科のページ- 患者さんにとって、外見や身体的な変化が大きな負担となることが多いため、脊椎腫瘍センターでは、その負担を軽減するための医療的な支援を行い、患者さんの生活の質の向上を図ります。 
- 6.外来予約方法<医療関係者が直接ご予約を取得される場合>- 直接、医療連携担当宛てに、以下のどちらかの方法でご連絡ください。 - 受付時間:平日9時~17時、土曜9時~12時 
 直通電話:03-4463-7534 (医療関係者専用)
 F A X:03-4463-7537(医療関係者専用)- <患者さんご自身で予約を取得される場合> 
 患者さんに当院医師宛ての診療情報提供書(紹介状)をお渡しください。
 当院の予約専用電話にご連絡ください。- 受付時間:平日9時~17時、土曜9時~12時 
 電話番号:03-3823-7890
 


 
      