消化器内科 - 専門分野(上部)

消化器内科の診療を希望される方へ

臓器ごとにがんに熟練した医師が積極的に対応しています。受診の際には、紹介状と検査結果(病理標本、レントゲンフィルム)などの資料(コピー可)をお持ち下さい。検査を無駄なく進めることができます。
特にセカンドオピニオン外来を受診される場合は、資料をもとに専門医が治療法に対する参考意見をお伝えするので、必ずご用意下さい。
また、治療後に病状が安定した後は、投薬治療や経過観察の検査などは、かかりつけの先生に御願いすることがありますので御了解ください。

がんの診断

がんの診断は、病変をみつけること、がんの進行度を見極めることに分かれます。診断の手段となる検査法は、臓器により異なります。

消化器(咽頭・食道・胃)のがん

消化管に発生するがんの診断は内視鏡検査が中心になります。
咽頭から食道・胃・十二指腸までは、上部内視鏡検査で一括して観察します。
大腸は、腸管洗浄液で腸管内の便を排出後、肛門から内視鏡で挿入し観察します。
拡大内視鏡、NBI(Narrow band imaging)内視鏡など、最新の技術による観察により、1mm単位の初期の病変の診断が可能になっています。

写真3連

(図説明)内視鏡治療が可能な早期の食道がんを発見するために、ヨード染色やNBIシステムを用いて内視鏡検査を行っています。
左:通常観察 一見正常に見えます。
中:NBI観察 中央下に小さな赤色調の領域があります。異常を明確に認識できます。
右:ヨード染色 病変部はヨードで染色されません。生検組織診では扁平上皮癌を認めました。
大きさ3mmの病変です。

また、治療方針の決定のためには、がんの進行度を知ることが重要です。特に内視鏡切除の治療前には正確ながんの深達度診断(がんがどれくらい深く進展しているか)が必要です。NBIシステムや拡大内視鏡、超音波内視鏡などを用いて検査を行っています。

がんの治療

内視鏡切除

がんが表面にとどまり、リンパ節転移がない病変では内視鏡的に切除することが可能です。基本的に表面の粘膜にとどまる病変が対象です。切除後には病理科の専門医が病変を評価し、追加治療の必要性について検討します。追加治療の必要性について微妙な場合、あるいは内視鏡治療の対象にならない場合は、内科、外科、化学療法科、放射線科、病理科など、がんの専門医で構成される、科を横断して行う検討会(キャンサーボード)で、個々の病状に応じた適切な治療方針を決定しています。

咽頭表在癌の内視鏡治療について

中咽頭や下咽頭での表在癌は、食道癌の治療歴がある方や喫煙飲酒を日常的にされており、飲酒時に顔が赤くなる方には発生しやすいことがわかっています。
通常の内視鏡検査で病変を発見することは可能です。
表在癌、つまり上皮もしくは上皮下層にとどまる病変の場合は内視鏡で切除が可能となります。切除時は全身麻酔が必要です。咽頭内を特殊な機械を用いて広くし、病変を他の臓器で行っている内視鏡的切除方法(ESD)で取り除きます。
治療後も食事を再開するのに2-3日は要しますが、嚥下機能・発声機能など本来の機能はそのまま保たれます。

治療の実際
咽頭癌のESD

図の解説

①全身麻酔が行われ、挿管チューブが挿入された状態です。
②③病変が右の下咽頭にあることを確認しています。ヨード散布すると黄色調に変化します。
④切除する範囲を明らかにするためメーキングを施行します。
⑤上皮下層をはがして病変を切除している途中です。
⑥切除した後の像です。
⑦切除した検体の写真です。

食道癌の内視鏡治療について

治療の実際

粘膜内にとどまる病変を早期癌、粘膜下層までにとどまる病変を表在癌といいます。
これまでの診療実績から、病変の深さごとに転移の率が明らかになっており、その深さによって、食道温存が可能か否かを判断し、治療方針を決定します。
T1a-EPあるいはT1a-LPMまでの癌ではリンパ節転移がほとんどないため、内視鏡治療の良い適応です。T1a-MMあるいはT1b-SM1癌ではリンパ節転移の頻度は、10-20%です。
この深さの癌では、CTなどで明らかな転移が認められない場合は、診断的に内視鏡治療を行って、切除検体の病理組織結果を確認し、手術や放射線治療の適応を決めることも可能です。T1b-SM2,T1b-SM3の病変では、リンパ節転移は40%以上にみられるため、内視鏡治療単独での治療はおすすめできません。
これらの基本的な治療方針は、日本食道学会の食道癌診断・治療ガイドラインに示されており、当院ではこの方針に従い、各部門の専門家(内視鏡医、食道外科医、放射線治療医、腫瘍内科医ほか)が合同で週1回行うキャンサーボードで個々の患者さんに適した治療方針を検討し、集学的な治療を行っています。

断面図

内視鏡治療の実際

ESDにて病変を一括切除する治療を行っています。
食道は管腔が小さく、広範に切除すると、治療後に食道狭窄をきたすため、大型の病変の治療の際には、ステロイド局注療法を行って、狭窄予防を行っており、亜全周切除となるようなケースでも、狭窄をきたすことなく、良好な成績を得ています。
全周に広がる病変に対してもESDとその後のステロイド内服という狭窄を予防する方策を駆使し、低侵襲な治療を提供しています。
また、部位的に治療が困難な食道入口部の症例や、放射線治療後の遺残症例などに対しても積極的に治療を行っています。

ESD法(内視鏡的粘膜下層剥離術)

ナイフを用い、病変を切り取る方法です。大きな病変でも一括切除が可能です。

検体径41×33mm大、検体径32×27mm大
全周性病変のESD

全周性病変の内視鏡的切除
図の解説

①病変にヨード散布を行い、病変が全周にわたって広がっていることを確認します。
②粘膜下層を剥離して、肛門側とつなげます(トンネル作成)。
③④切除後の状態です。
⑤切除された筒状になっている検体です。
⑥⑤の検体の一か所で切り、広げた状態です。

診療実績
食道癌内視鏡治療件数


早期胃がん

1987年から胃癌の内視鏡的粘膜切除術(EMR)を、2002年から内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を開始し、年間100例以上の治療を行っています。
約1週間の入院治療が必要です。

写真3連

左:陥凹型の胃癌。
中:病変の周囲をマーキングした後、辺縁を切開し病変を剥離していきます。
右:切除された病変。