消化器内科・胆膵グループで行う診断と治療
消化器内科・胆膵グループでは、胆道癌および膵癌を中心に、急性膵炎や胆管炎などの救急疾患を含め、胆膵疾患を幅広く診療しています。採血やCT・MRI画像に加えて、胆膵超音波内視鏡検査(EUS: Endoscopic Ultrasonography)および内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP:endoscopic retrograde cholangiopancreatography)などの内視鏡による診断と治療も行います。消化器内科の中でも胆膵に特化したスタッフが対応していることで、より専門性の高い診断や治療を提供しています。
目次
- 1.消化器内科・胆膵グループの特徴及び対応疾患
2.主な検査
3.実績
4.膵癌の特徴と早期診断
5.現在の取り組みと今後
6.消化器内科・胆膵グループへのご紹介方法 [医療連携機関の皆様へ]
7.膵癌高リスク外来 専用診療情報提供書(紹介状)ダウンロード
1. 消化器内科・胆膵グループの特徴および対応疾患
1-1. 診療対応している症状や疾患
当科では下記の疾患に対して専門的な精査あるいは治療を行なっています。
対象疾患
膵臓:膵癌、膵嚢胞性疾患(IPMN等)、急性・慢性膵炎、自己免疫性膵炎
胆道:胆管癌、胆嚢癌、胆石症・総胆管結石、胆管炎・胆嚢炎、膵胆管合流異常、胆嚢ポリープ
1-2. 当科の特徴:膵癌の早期診断
当院では膵癌の早期診断に特に力を入れています。膵癌リスク群と考えられる症例に対しEUSによる経過観察を行うことで、根治可能な段階での早期診断に努めています。
また近年では膵上皮内癌(膵管上皮に留まる早期の病変)の画像的特徴が報告されており、これらに当てはまる症例に対し積極的に連続膵液細胞診(SPACE:serial pancreatic juice aspiration cytological examination)を行っています。膵癌を早期診断し外科的治療に進めることで、予後改善につなげています。
2. 主な検査
2-1. 胆膵超音波内視鏡検査(EUS; Endoscopic ultrasound)
腹部エコー検査等で用いられるプローブ(センサー)が先端についた特殊な胃カメラを用いて内視鏡検査を行います。プローブを胃・十二指腸壁に当て、消化管外に位置する膵臓、胆管、胆嚢を評価します。CT、MRIで視認できない微小な膵癌や、CTで写らないX線透過性の総胆管結石を描出することができ、胆膵疾患の精査に必須の検査です。また、コンベックス型の検査機器を用いることで、確定診断に必要な膵臓・胆管の組織採取や、後述のERCPでは困難な胆管ドレナージ(EUS-BD;超音波内視鏡下胆道ドレナージ等)といった治療も行っています。全例、鎮静下で実施しています。口からの内視鏡が不安な方でも検査をお受け頂けます。
2-2. 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP; Endoscopic retrograde cholangiopancreatography)
専用の内視鏡を用い胆管および膵管を造影して、X線で透視下に評価する検査です。また様々な処置具を組み合わせてドレナージや採石術などの治療も行います。当院では通常のERCPに加えて、術後再建腸管(胃全摘・Roux-en-Y再建後や膵頭十二指腸切除術後など)に対する、小腸シングルバルーン内視鏡を用いたERCPも積極的に行っています。
3. 実績
各検査の実施件数は以下の通りです。いずれも全国有数の検査数を実施しています。
3-1. 当科におけるEUSの検査件数
検査件数 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|---|---|
EUS | 915 | 1631 | 2203 | 2416 | 3023 | 2489 |
EUSーFNA | 163 | 220 | 176 | 195 | 186 | 145 |
Interventional EUS | 8 | 13 | 11 | 14 | 11 | 9 |
EUSの年間毎の件数
3-2. 当科におけるERCPの検査件数
検査件数 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|---|---|
ERCP | 392 | 406 | 421 | 455 | 445 | 370 |
小腸鏡ERCP | 27 | 25 | 33 | 27 | 11 | 27 |
ERCPの年間毎の件数
4. 膵癌の特徴と早期診断
4-1. 膵癌の特徴
全悪性疾患の5年生存率(診断から5年後に生存している割合)が7割に迫る中、膵癌の5年生存率は現在でも1割程度に留まっており、極めて予後不良の疾患です。
その原因としては、以下が知られています。
①検診方法が確立されていない(≒進行して診断されることが多い)
②悪性度が高く進行が速い、小さい病変から転移をきたす
③重要血管に囲まれており、多くが外科的切除不能
④膵切除は侵襲が大きく、高齢者の治療のハードルが高い
⑤抗がん剤が効きにくい
このため、膵癌の予後改善には早期診断が最も重要となります。
4-2. 膵癌の早期診断
小径膵癌(直径が10mm未満)や膵上皮内癌(膵管上皮内に留まる病変)などが早期癌と認識されています。
早期には、一般によく行われる経腹壁超音波検査、CT、MRIなどの画像検査では描出困難な腫瘤(がんの塊り)であることも多く、膵臓のスクリーニング検査には胆膵超音波内視鏡検査(EUS)が有用です。当科では下記の膵癌リスク群に該当する方に対し、EUSおよびMRIによる定期的なフォローアップを行っています。
5. 現在の取り組みと今後
胆膵グループでは、多くの診断や治療で得られたデータをもとに、さらに多くの方へ有用な医療を届けるため、日々新しい情報を発信しています。その一部をご紹介します。
膵上皮内癌
近年、膵管の上皮内に留まる癌(ステージ 0期)である『膵上皮内癌(CIS; Carcinoma in situ)』が注目されており、当科からもその画像的特徴を報告しています。それらを有する方に対して、連続膵液細胞診(SPACE; Serial pancreatic juice aspiration cytological examination)を行い病理学的にも疑われる際に、膵切除をお勧めしています。
ここでは症例を提示します。
【症例】82歳、女性、膵尾部上皮内癌
①MRCP: 膵尾部に主膵管に狭窄と上流拡張
②T2WI(HASTE): 膵尾部に限局性萎縮(FPPA; Focal parenchymal atrophy)
③CT早期相: 膵尾部に限局性萎縮
④切除標本(HE弱拡大): 膵管上皮に腫瘍細胞が低乳頭状に増殖し、周囲膵実質に脂肪置換を認める
(参考文献)
◆Nakahodo J et al. Focal pancreatic parenchyma atrophy is a harbinger of pancreatic cancer and a clue to the intraductal spreading subtype.
Pancreatology 2022 ;22(8):1148-1158
◆Nakahodo J et al. Focal parenchymal atrophy of pancreas: An important sign of underlying high-grade pancreatic intraepithelial neoplasia
without invasive carcinoma, i.e., carcinoma in situ. Pancreatology 2020 ;20(8):1689-1697
参考URLhttps://www.tmhp.jp/komagome/section/naika/shoukakinaika/gyoseki.html
6. 消化器内科・胆膵グループへのご紹介方法 [医療連携機関の皆様へ]
心窩部痛、体重減少など胆膵疾患が気になる方、また検診にて胆膵に異常所見(膵管拡張、胆管拡張、膵嚢胞)が指摘された患者様や、先述のリスク群に該当する患者様のご紹介は、当院医療連携で承っております。また、胆管炎や急性膵炎など、良性の救急疾患についても積極的に受け入れております。
◆患者さんから直接のご予約・ご相談 03-3823-4890(予約センター直通)
※月曜から金曜(祝祭日除く)、9-17時
◆各医療機関によるご予約 03-4463-7534
※月曜から金曜の9-17時、土曜日の9-12時(祝日及び年末年始を除く)https://www.tmhp.jp/komagome/relation/introduction.html