第2号 消化器内科

患者向け広報誌「OHKUBO
第2号 消化器内科

大久保病院 消化器内科 部長 鈴木 智彦

大久保病院
消化器内科 部長 鈴木 智彦

専門分野
肝疾患、特にウィルス性肝炎の診断と治療
特殊腹部超音波検査を用いた肝硬度、肝脂肪量の評価


早期発見・早期治療のための、消化器検査

日本人の「悪性新生物(がん)」での死亡率は一貫して上昇傾向にあり、1981年以降死因順位1位となっています。日本人の2人に1人が一生のうちにがんと診断され、男性の4人に1人、女性の6人に1人ががんで亡くなっています。そして、がんで亡くなる人の約4割が消化器がんです。どの病気にも言えることですが、がんも発見が遅れるほど死亡リスクが高くなり、発見が早期であるほど治癒率が向上します。がんを早期に見つけ、治療するためには内視鏡検査を含む消化器検査が重要です。

治療を開始した時のきっかけでは、「健康診断・がん検診等」で「がん」が見つかった人達の方が、「自覚症状」が出た後に「がん」が見つかった人達に比べ、「治療によって完全にがんを取り除くことがほぼ確実にできそうな状況」である者の割合が高いという調査結果も出ています。

内視鏡検査で分かる、自分のからだ

内視鏡検査でポリープが発見された場合、そのまま切除することもあります。ポリープは良性であっても長年放置すればがん化するものもあるため、ポリープが見つかった場合は定期的に内視鏡検査を受けて経過を観察します。

また、大腸などに憩室(けいしつ)という袋状のくぼみが出来やすい方がいます。通常憩室は複数あっても痛みもなく問題はありませんが、便秘などの原因によって炎症(憩室炎)や出血(憩室出血)が見られることもあります。内視鏡検査では、自分が憩室を持っているかどうかがわかるので、腹痛や発熱、血便などで病院に行った場合の診断の助けになります。

15歳から39歳の『AYA世代』と言われる若い世代、特に30代では消化器がんが多く、ぜひ内視鏡検査を受けてほしいと思います。AYA世代は就学や就労、妊娠・出産など大きな転換期を迎える時期です。
もし検査の結果、がんやポリープが見つからなかったとしても、食道から胃、十二指腸・大腸に病気の心配がないと分かることは、仕事や子育てに忙しい世代にとっては大事なことだと思います。

内視鏡検査への心理的・身体的ハードルを、より低く

内視鏡検査は、外来で1日で済む検査です。自覚症状がない状態からさまざまなリスクを発見できるうえ、病気が見つかった場合には「早期発見」となるので治療の選択肢が広がり、治癒率が高くなります。

とは言え「痛いのでは?」「辛いのでは?」という先入観を持つ方も多いので、大久保病院では受診のハードルを下げるためにさまざまな工夫をしています。

  1. 鎮静剤の使用

    大久保病院では内視鏡検査を受ける方全員にヒアリングを行い、希望や必要に応じて適切な量の鎮静剤を使用します。苦しいイメージがあるかもしれませんが、鎮静剤を使用することで緊張を和らげて苦痛の少ない検査を受けることができます。

  2. 女性医師による検査

    大腸内視鏡検査は特に女性にとっては抵抗がある検査であり、恥ずかしさにより検査から遠ざかってしまっている方もいるのではないかと思います。当院では大腸内視鏡検査を担当する女性医師が複数人いますので、お気軽にお問合せください。

  3. 透析患者さんへの対応

    都立病院系列の中で腎疾患診療の中心的な役割を果たす当院の腎センターと連携し、透析患者さんの検査を積極的に行っています。入院して検査を受けることもできますので、透析中の方も安心して検査を受けることができます。

内視鏡検査に勝る検査方法はない

内視鏡検査にはカメラだけでなくさまざまな道具を装着できるので、特殊な光を照射して病変部分を探したり、直接触わったり、病変の一部をつまんでとってきたり、画像だけで診断するよりも多くの情報を得ることができ、より正確に診断することができます。
内閣府の調査では、内視鏡検査を含むがん検診を受診していない理由として、「必要ならいつでも受診できる」「費用がかかり経済的にも負担になる」「受ける時間がない」を挙げる割合が高くなっています。
しかし、がんを早期に発見することで、治癒率が向上するだけでなく、治療時の身体的・経済的負担も軽くなります。
「何も自覚症状がなく健康だと思っている時にこそ、内視鏡検査を受けてほしい」というのが私たちの願いです。そしてもちろん、食道のつかえ感や胃のもたれ感、ちょっとしたお腹の張り感や排便時の出血など、「普段と違うかな?」と感じた時にも、ぜひ気軽に検査を受けてほしいと思います。


★詳しくは、消化器内科のウェブページ消化器センター紹介ページをご覧ください。