肺がんかなと思ったら

肺がんかなと思ったら

肺がんについて

2017年にがんで死亡した方は男女合わせて37万人おり、肺癌は男性で第1位、女性は第2位であり、男女合わせて第1位となっています。また2006-2008年に肺癌と診断された人の5年相対生存率は男性27.0%、女性43.2%です1)。
肺がんは死亡数が多いがんですが、近年診断および治療について進歩してきています。

肺がんの種類
まず肺がんの種類についてお話します。肺癌は大きく4つの種類(組織型)に分けられます。一番多いのは腺癌(約半数程度)で、そのほか大細胞癌(数%程度)、扁平上皮癌(20-30%程度)、小細胞癌(10-15%程度)があります。前2者は肺の奥のほう(肺野型)、後2者は肺の入り口(肺門型)に認められることが多いのが特徴です。肺門型はタバコとの関連性が高く、喀痰にがん細胞が含まれることがあります。初期には胸部X線でははっきりわからないことがあります。治療方針からみると小細胞肺癌(SCLC)と非小細胞肺癌(NSCLC)に分けられます。

1、 CT検査

胸部X線でかげ(陰影)が認められたら、陰影の性状や大きさ、リンパ節の転移などをCTで検査をします。

2、 内視鏡検査(呼吸器内視鏡検査(気管支鏡検査))

しなやかに屈曲するファイバーを口(もしくは鼻)から入れていきます。診断のためには組織を採取しなければいけません、肺野型のものに関しては適応があるものに対しては超音波ガイドシース(EBUS-GS)を使用して病変にあたっているかどうか確かめながら生検(組織を取ること)を行います。肺の中のリンパ節の組織を採取する場合には超音波がついている内視鏡を使用(超音波内視鏡)して生検します(EBUS-TBNA)。

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肺がんになったら

当院で行っている肺がんの治療法

現在、肺がんには大きく分けて3つの治療法があります。当院では標準治療を基本とし、ご高齢の方や合併症をお持ちの方には状態に合わせて治療を選択しています。

1 手術

  1. 1、胸腔鏡手術 
  2. 2,開胸手術

2 化学療法

<小細胞肺癌(SCLC)の治療>
SCLCは増殖速度が速く早期にリンパ節転移や遠隔転移を認めるため、手術療法は選択されないことが多いです。放射線治療や化学療法、または両者を組み合わせた治療が選択されます。治療法の選択にはがんが局所にとどまっている(限局型(LD))かいないか(進展型(ED))かに分類します。LDの場合には放射線化学療法が選択されますが、EDの場合には抗癌剤化学療法が選択されます。抗癌剤に対する治療反応性は良好ですが、治療薬が少ないため、治療後にすぐに大きくなってしまった場合には治療が難しくなります。

<非小細胞肺癌(NSCLC)の治療>
NSCLCの場合には、できるだけ手術をする方向で進めますが、がんの進展具合(臨床病期)により切除不能NSCLCと判断された場合には、抗癌剤化学療法を選択します。抗癌剤化学療法には大きく分けて3種類あります。分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、従来から使用されている抗癌剤の3つです。それぞれどの薬が適切かをがん細胞に対して詳細な検査を追加することで判断して治療を行っていきます。それぞれ単独だけではなく、2種類もしくは3種類の薬を組み合わせた治療も行われます。

    1. 分子標的薬
      人間の体は細胞が集まってできていますが、細胞が分裂する際に遺伝子をコピーしていますが、コピーしそこない(突然変異)が起きることがあり、それが細胞の増殖にかかわる遺伝子に起きた場合にがん化してしまいます。その遺伝子をドライバー遺伝子といい、その中で次々に増殖が起こってしまうアクセルのような働きをしている遺伝子をがん遺伝子と呼び、異常なたんぱく質を合成してそれががん細胞の表面に発現しており、そのたんぱく質が細胞内に信号を送り増殖します。肺癌領域ではEGFR、ALK、ROS-1、BRAFなどが知られています。その標識をターゲットにした薬を分子標的薬(キナーゼ阻害剤)といいます。遺伝子異常が認められた場合には治療効果が非常に高く、安定した状態が続きますが、効果は残念ながらずっとは続きません。
    2. 免疫チェックポイント阻害薬
      がん細胞の表面には、がん細胞を攻撃する免疫細胞と結合(くっつく)する部位(PD-L1)があり、免疫の働きを弱めています。そのブレーキの役目を果たしている部分を免疫チェックポイントと呼び、そのブレーキを阻害(解除)することで再び免疫細胞の働きを強めてがん細胞を攻撃させようとする治療法です。いろいろながん細胞に効果がある可能性があります。分子標的薬と違い、どのような患者さんに効果が出るのかはまだわかっていません。

肺がん画像4

  1. 従来の抗がん剤
    がん細胞は次々に増殖するので、その増殖を止めようとする治療が、従来から使用されている抗癌剤です。細胞自体を殺すという意味で殺細胞性抗癌剤と言われます。脱毛、白血球数の減少、嘔気、嘔吐など副作用が強めですが、副作用を抑える治療も以前より進歩しています。
    *参考文献
    1. 国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」
    2. がん免疫.jp

3 放射線療法

ご高齢の方で手術が困難な方や、肺の機能の低下などで手術が困難な方に対して行う治療(放射線治療)です。抗癌剤と組み合わせて根治を目指す化学放射線治療と疼痛の緩和を目指した緩和照射があります。