神経小児科の診療内容(患者さんへ)

神経小児科は神経病院開院の翌年、昭和56年(1981年)5月から診療活動を開始しました。以来41年にわたり、小児期発症のあらゆる神経疾患を診療しています。

神経小児科で診ている病気と診療方針

 てんかんが一番多いです。その中でも、点頭てんかん(ウエスト症候群)、ドラベ症候群、レノックス症候群などの難治性てんかんの患者さんの診療が中心となっています。てんかんの正しい診断・治療のためには、発作が起きた時の脳波を捉えることが重要ですが、そのためのビデオ-脳波同時長時間記録を積極的に行っています。また抗てんかん薬のみでは発作のコントロールが困難な場合には、脳神経外科(てんかん外科)に相談して、外科手術について検討しています。
 脳性麻痺、脳の形成異常、母斑症、染色体異常症の患者さんも多いです。これらの患者さんでは、てんかんの他に肺炎や腸閉塞などの全身の合併症を生じることが多いので、これらに対する治療も行っています。
 代謝の病気や神経変性疾患が多いのも当科の特徴です。これには、ミトコンドリア病、ライソゾーム病、糖原病、ポルフィリン症、白質変性症、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、シャルコー・マリー・トウース病などが含まれます。これらは治療の難しい病気ですが、糖原病に対する酵素補充療法や、脊髄性筋萎縮症に対する遺伝子治療など、新しい治療に取り組んでいます。将来の治療に繋がることを目指して、神経変性疾患の遺伝子検査を大学病院などに積極的に依頼しており、これが新しい遺伝子の発見にも繋がっています。
 免疫の仕組みに異常が起こり、自分の脳や神経を自分で攻撃してしまう自己免疫性神経疾患という病気があります。急性散在性脳脊髄炎、自己免疫性脳炎、多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、重症筋無力症などが代表的な病気です。過眠症のナルコレプシーにも自己免疫が関係していると言われています。当科にはこれらの病気の患者さんも多く、ステロイド療法や大量免疫グロブリン療法を行っています。自己免疫性脳炎の患者さんには、リンパ球に対する特異的な抗体を使う治療も行っています。
 筋肉の病気では、筋ジストロフィー症や先天性ミオパチーの患者さんを診ています。これらの病気では呼吸筋が障害されて、在宅人工呼吸器療法が必要となることがあります。この場合には、当院独自の在宅訪問診療システムを通じて、また往診をしてくださる近隣のクリニックの先生方と密接に連携して、呼吸器を付けた状態でも安全で快適な在宅生活がおくれるよう努力しています。
 当院では、体が自分の意志とは無関係に勝手に動いてしまう”不随意運動症”という病気に対して、脳深部刺激療法などの先端的医療に取り組んでおり、最近は不随意運動症の患者さんの入院がとても増えました。詳しくは「取り扱っている主な疾患」のページをご覧ください

外来のご案内

神経病院は入院専門の病院ですので、外来は同じ敷地内にある東京都立小児総合医療センターの神経内科外来で行っています。小児総合医療センターにも神経内科があり、ここの先生方とも連携して診療をしています。また神経に関わる救急患者さんの診療は、小児総合医療センターのERにて総合診療科や救命救急科の先生方と一緒に行い、痙攣重積、急性脳炎・脳症、脳血管障害などの救急患者さんを診察しています。神経病院では夜間・休日でも脳のMRIが撮影できますので、必要がある時には神経病院に来て頂いて検査をしています。
小児総合医療センターは救急(ER)受診以外は原則紹介・予約制ですので、受診される場合にはかかりつけの先生に紹介状を書いていただいて、小児総合医療センターの予約センターにお電話ください(電話 042-312-8200)。神経病院の医師の診察をご希望の場合には、予約時にその旨お伝えください。外来受診のご案内につきましては、小児総合医療センターのホームページもご覧ください。
在宅人工呼吸器療法などを行っていて病院受診が難しい患者さんに対しては、神経病院の在宅訪問診療システムにより、医師や看護師が定期的に往診をしています。

入院のご案内

入院は神経病院の小児病棟(7A病棟)でお受けしています。令和3年度に入院された小児神経患者さんは840人でした。完全看護ですので付き添いは不要で、お母さんがお仕事をしていたり、ご家庭に他のお子さんがいらっしゃる場合にも、安心してご入院頂けます。またご遠方からいらした患者さんのご家族が宿泊できるドナルド・マクドナルドハウス(ふちゅうハウス)が病院のすぐ近くにあります。
重症患者さんはICUにご入院頂き、麻酔科と協同で全身管理を行います。

当科の特徴

神経専門病院の中の小児科という利点を生かし、脳神経内科、脳神経外科、神経耳科、リハビリテーション科、神経放射線科、検査科などの院内神経専門科と密接に連携して、お子さんの神経難病に対する高度専門医療を行っています。特に、不随意運動症に対する脳深部刺激療法などの先端的医療に力を入れています。また、お隣の都立小児総合医療センターの各小児専門科(循環器科、内分泌・代謝科、腎臓内科、感染症科、臨床遺伝科、外科、整形外科、形成外科、眼科、児童・思春期精神科、集中治療科)の先生方にもお力添えいただき、神経疾患の患者さんの合併症治療に関しても質の高い医療を行っています。