ギラン・バレー症候群(GBS)

患者さんへ

疾患概要

ギラン・バレー症候群(GBS)は、1916年にGuillain, Barréらにより報告されて以来知られるようになった末梢神経疾患です。病理学的には炎症所見を伴う脱髄による急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy:AIDP)や軸索障害型GBSがあります。

軸索障害型GBSは運動神経の軸索が障害されるacute motor axonal neuropathy(AMAN)と感覚神経の軸索も障害されるacute motor sensory axonal neuropathy(AMSAN)とに分けられます。また軸索障害型GBSはキャンピロバクター感染の関連が強いと考えられています。

b.病態

GBSの病態は、ウイルスや細菌感染などが契機となって引き起こされる自己免疫性疾患と考えられています。血清中に各種自己抗体が出現することが報告されています。何らかの感染因子が免疫系を刺激し、抗体産生を促しているのではないかと考えられています。

c.疫学

GBSは世界中のあらゆる地域で発症し、人口10万人あたりの年間発生率は0.6~1.9人前後とされており、本邦の年間発生率は1998年の厚生省免疫性神経疾患調査研究班の全国調査では人口10万人あたり1.15人でした。GBSの約7割に先行感染症状(上気道炎症状、次いで胃腸症状が多い)が認められ。先行感染の主要な病原体としてキャンピロバクター、サイトメガロウイルス、Epstein-Barrウイルス、マイコプラズマニューモニエなどが知られています。

症状

GBSの中核症状は進行性の四肢の弛緩性運動麻痺で、手足のしびれ感が先行することが多いとされます。一般に症状の分布は左右対称で、筋力低下は遠位筋(手足)優位なことも、近位筋(上腕・大腿など)優位なこともあります。遠位及び近位が同時に低下することもあります。近位筋優位であったり、近位・遠位が同様に障害される場合は、診断が困難で、筋疾患や中枢神経障害との鑑別を要します。下肢優位、上肢優位いずれの場合もありますが、筋力低下は進行性であり、重度の場合は完全四肢麻痺となります。さらに呼吸筋麻痺に至ると人工呼吸管理が必要となります。上記運動感覚障害の他にも、運動失調、脳神経麻痺や自律神経障害など多彩な神経症候も呈することがあります。脳神経麻痺や自律神経障害は重症になる程、合併しやすい傾向があります。発症前4週間以内に40~70%に先行感染症状がありますが、はっきりしないこともあります。上気道感染や消化器感染などが先行することが多いです。小児では、先行感染の頻度はさらに高く、67~85%でみられます。感染症以外には、ワクチン接種後や手術・外傷などの後に発症した例の報告もありますが、特定は困難で、病態との関連についは明確ではありません。

種々の報告からはGBSの半数以上でなんらかの自律神経障害が見られ頻脈、徐脈、高血圧、起立性低血圧、神経因性膀胱、発汗異常、瞳孔異常など多岐にわたります。 GBSは一般に単相性の経過をとると考えられますが、2~5%で再発がみられます。

治療法・対処法

一般に、GBSは予後良好な疾患といわれますが、人工呼吸管理を要する例や、重篤な後遺症を残す例も一定数存在するため、早期からの治療開始が望まれます。治療開始にあたっては、迅速かつ正確な診断が求められます。

GBSの診断は、主として特徴的な病歴・臨床症候・診察所見を基に下されます。診断基準としては1990年に提唱されたAsbury and Cornblath基準がよく用いられます。この診断基準では、GBSに特徴的な上気道症状や下痢等の先行感染の存在、左右対称性の筋力低下、腱反射の低下・消失などがポイントとなっています。さらに、他疾患との鑑別や、脱髄型か軸索障害型かの病型診断、予後予測を行うために、末梢神経伝導検査をはじめ、脳脊髄液検査、血液一般検査、血清抗糖脂質抗体検査などの検査を実施し、脱髄型か軸索障害型かの鑑別のためには電気生理検査(末梢神経伝導検査)などが有用です。また、抗糖脂質抗体と臨床的特徴の関連については解明が進んでおり、病型・予後予測に有用です。

GBSの治療方針

a. 治療法の選択

GBSに対し有効性が確立されている治療法として単純血漿交換(plasma exchange:PE)および免疫グロブリン静注療法(intravenous immunoglobulin:IVIg)があり、これらは同等の有効性があると考えられています。

IVIgはヒト免疫グロブリン400mg/kg/日を4~6時間かけてゆっくり点滴静注し、これを5日間連日投与する方法です。

PEは1回につき、40ml/kg体重の血漿処理を行います。患者さんの病状、年齢や体格、持病などの背景によりこれらの治療法を選択します。

その他の治療法として本邦で高頻度に選択される二重膜濾過血漿交換(double-filtration plasmapheresis:DFPP)、免疫吸着(immunoadsorption plasmapheresis:IAPP)があります。

副腎皮質ステロイドは単独での使用による治療効果は否定されています。

呼吸筋麻痺、嚥下障害、不整脈や血圧の変動などの自律神経障害などを伴う重症例の場合では、厳重なモニタリングや、人工呼吸・循環管理などの集中治療を要する場合があります。

患者さんへのワンポイントアドバイス

過労をさけ、かぜなどへの罹患を防ぎましょう。またキャンピロバクター腸炎の原因としては生肉の摂取や不衛生な調理環境が考えられますので、ご注意ください。

当科の専門医

脳神経内科のすべての医師が対応可能です。


医療関係者へ

疾患概要・病態

ギラン・バレー症候群(GBS)は、1916年にGuillain, Barréらにより報告されて以来知られるようになった末梢神経疾患です。病理学的には炎症所見を伴う脱髄による急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy:AIDP)や軸索障害型GBSがあります。

軸索障害型GBSは運動神経の軸索が障害されるacute motor axonal neuropathy(AMAN)と感覚神経の軸索も障害されるacute motor sensory axonal neuropathy(AMSAN)とに分けられます。また軸索障害型GBSはキャンピロバクター感染の関連が強いと考えられています。

b. 病態

GBSの病態は、ウイルスや細菌感染などが契機となって引き起こされる自己免疫性疾患と考えられています。血清中に各種自己抗体が出現することが報告されています。何らかの感染因子が免疫系を刺激し、抗体産生を促しているのではないかと考えられています。

c. 疫学

GBSは世界中のあらゆる地域で発症し、人口10万人あたりの年間発生率は0.6~1.9人前後とされており、本邦の年間発生率は1998年の厚生省免疫性神経疾患調査研究班の全国調査では人口10万人あたり1.15人でした。GBSの約7割に先行感染症状(上気道炎症状、次いで胃腸症状が多い。)が認められ、先行感染の主要な病原体としてキャンピロバクター、サイトメガロウイルス、Epstein-Barrウイルス、マイコプラズマニューモニエなどが知られています。

症状

GBSの中核症状は進行性の四肢の弛緩性運動麻痺で、手足のしびれ感が先行することが多いとされます。一般に症状の分布は左右対称で、筋力低下は遠位筋(手足)優位なことも、近位筋(上腕・大腿など)優位なこともあります。遠位及び近位が同時に低下することもあります。近位筋優位であったり、近位・遠位が同様に障害される場合は、診断が困難で、筋疾患や中枢神経障害との鑑別を要します。下肢優位、上肢優位いずれの場合もありますが、筋力低下は進行性であり、重度の場合は完全四肢麻痺となります。さらに呼吸筋麻痺に至ると人工呼吸管理が必要となります。上記運動感覚障害の他にも、運動失調、脳神経麻痺や自律神経障害など多彩な神経症候も呈することがあります。脳神経麻痺や自律神経障害は重症になる程、合併しやすい傾向があります。発症前4週間以内に40~70%に先行感染症状がありますが、はっきりしないこともあります。上気道感染や消化器感染などが先行することが多いです。小児では、先行感染の頻度はさらに高く、67~85%でみられます。感染症以外には、ワクチン接種後や手術・外傷などの後に発症した例の報告もありますが、特定は困難で、病態との関連についは明確ではありません。

種々の報告からはGBSの半数以上でなんらかの自律神経障害が見られ頻脈、徐脈、高血圧、起立性低血圧、神経因性膀胱、発汗異常、瞳孔異常など多岐にわたります。

GBSは一般に単相性の経過をとると考えられますが、2~5%で再発がみられます。

治療・最近の動向

一般に、GBSは予後良好な疾患といわれますが、人工呼吸管理を要する例や、重篤な後遺症を残す例も一定数存在するため、早期からの治療開始が望まれます。治療開始にあたっては、迅速かつ正確な診断が求められます。

GBSの診断は、主として特徴的な病歴・臨床症候・診察所見を基に下されます。診断基準としては1990年に提唱されたAsbury and Cornblath基準がよく用いられます。この診断基準では、GBSに特徴的な上気道症状や下痢等の先行感染の存在、左右対称性の筋力低下、腱反射の低下・消失などがポイントとなっています。さらに、他疾患との鑑別や、脱髄型か軸索障害型かの病型診断、予後予測を行うために、末梢神経伝導検査をはじめ、脳脊髄液検査、血液一般検査、血清抗糖脂質抗体検査などの検査を実施します。脱髄型か軸索障害型かの鑑別のためには電気生理検査(末梢神経伝導検査)などが有用です。また、抗糖脂質抗体と臨床的特徴の関連については解明が進んでおり、病型・予後予測に有用です。

当院では、末梢神経伝導検査、脳脊髄液検査をはじめ、脊髄MRIなどは常時対応可能であり、血清抗糖脂質抗体については院内での検査も行っております。また、診断が困難なケースに対する神経生検を行う体制もございます。

GBSの治療方針

a. 治療法の選択

GBSに対し有効性が確立されている治療法として単純血漿交換(plasma exchange:PE)および免疫グロブリン静注療法(intravenous immunoglobulin:IVIg)があり、これらは同等の有効性があると考えられています。

IVIgはヒト免疫グロブリン400mg/kg/日を4~6時間かけてゆっくり点滴静注し、これを5日間連日投与する方法です。

PEは1回につき、40ml/kg体重の血漿処理を行います。患者さんの病状、年齢や体格、持病などの背景によりこれらの治療法を選択します。

その他の治療法として本邦で高頻度に選択される二重膜濾過血漿交換(double-filtration plasmapheresis:DFPP)、免疫吸着(immunoadsorption plasmapheresis:IAPP)があります。

副腎皮質ステロイドは単独での使用による治療効果は否定されています。

呼吸筋麻痺、嚥下障害、不整脈や血圧の変動などの自律神経障害などを伴う重症例の場合では、厳重なモニタリングや、人工呼吸・循環管理などの集中治療を要する場合があります。

当院で行っている臨床研究・実績など

Kanda T, Hayashi H, Tanabe H, Tsubaki T, Oda M
.A fulminant case of Guillain-Barré syndrome: topographic and fibre size related analysis of demyelinating changes
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1989 Jul;52(7):857-64.PMID: 2769280

Yamaoka Y, Isozaki E, Kagamihara Y, Matsubara S, Hirai S, Takagi K.
[A case of Guillain-Barré syndrome (GBS) following human parvovirus B19 infection].Rinsho Shinkeigaku. 2000 May;40(5):471-5. Review. Japanese.
PMID:11002730

.Nagamine S, Fujiwara Y, Shimizu T, Kawata A, Wada K, Isozaki E, Kabuta T.
Association of ubiquitin carboxy-terminal hydrolase-L1 in cerebrospinal fluid with clinical severity in a cohort of patients with Guillain-Barré syndrome.. Neurol Sci. 2015 Jun;36(6):921-6. doi: 10.1007/s10072-015-2137-x.
PMID: 25739945
磯崎英治,吉田寛,平井俊策.Fisher症候群およびGuillain-Barre症候群における内眼筋麻痺.自律神経,36:543-547, 1999