先天性気管狭窄症
先天性気管狭窄症は窒息による命の危険があり、その診断・治療は難易度が高く、小児外科医のみならず呼吸器科医、集中治療医、麻酔科医、心臓血管外科医、看護師、臨床工学士等のスタッフで構成される熟練のチームが必要です。対応可能な施設は非常に限られており、当院では北海道から九州にいたる日本全国より診断・治療方針の相談や実際の診療を受け入れています。2017~2025年に電話やメールを含め連絡を受けた患者さんの数は97例で、そのうち最終的に気管形成術に至ったのは49例(51%)でした。搬送は救命・集中治療部が対応し、救急車や新幹線だけでなくヘリコプターや飛行機を用いることもあります。搬送後は関係各科で日々細部にわたって議論を行い、手術適応や方法、タイミング、集中治療管理などを決定し診療に当たっています。手術はスライド気管形成術を基本とし、前身の清瀬小児病院から数えるとこれまでに108例の手術を施行しました。このうちセンター開院後(2010年~2026年3月)は87例で、79例(91%)が生存退院しています。重度先天性心疾患合併、片肺低形成・無形成合併、体重3キロ以下での根治手術など高難度症例であっても手術にて救命し無事に退院できた患者さんが増えてきています。生存退院された患者さんのうち術後に気管切開を要したのは7例(9%)のみで、多くの患者さんが普通の生活を送ることができています。今後もそれぞれの症例によって異なる病態に対応し、チーム全体で常に成績向上に向けて努力を重ねてまいります。


小児呼吸器疾患
上記先天性気管狭窄症以外にも先天性嚢胞性肺疾患(先天性肺気道奇形・気管支閉鎖症等)、肺・縦隔腫瘍、気胸、難治性肺感染症、気管・気管支軟化症、声門下狭窄症、横隔膜ヘルニア・横隔膜弛緩症、膿胸、乳び胸、漏斗胸・鳩胸といった胸郭変形等に対する手術、気管支鏡治療を行っています。小児においてこれらの疾患は頻度が少なく、その診断・治療に習熟した小児外科医や呼吸器外科医は極めて少ないのが現状です。当院には豊富な経験があり、呼吸器外科専門医・気管支鏡専門医資格を有する本邦唯一の小児外科指導医も在籍しています。また、小児専門病院では本邦唯一の呼吸器外科専門研修連携施設・気管支鏡関連認定施設でもあります。嚢胞性肺疾患等に対する肺葉切除・肺区域切除は、患児の体格や病変の部位等を勘案し、完全胸腔鏡下または胸腔鏡補助下に行っています。必要な患者さんには出生当日であっても緊急手術を行います。縦隔腫瘤(縦隔腫瘍や気管支原性嚢胞等)に対しては主に完全胸腔鏡下手術を行っていますが、巨大な病変に対しては胸骨正中切開等を選択し、ECMOや人工心肺を使用することもあります。気管・気管支軟化症には気管後方固定術・大動脈吊り上げ術・大動脈後方固定術・ティッシューエキスパンダー挿入術等を組み合わせて対応しています。声門下狭窄症に対しては気管支鏡下のレーザー治療や肋軟骨移植による喉頭気管形成術等を行います。横隔膜ヘルニアや横隔膜弛緩症には開腹・開胸術だけでなく腹腔鏡・胸腔鏡での修復術も行っています。乳児難治性乳び胸に対してはリンパ管造影・胸管結紮術・胸膜癒着療法を担当しています。漏斗胸ではNuss法とRavitch変法のいずれも施行しており、鳩胸の手術にも対応しています。すべての疾患に対し無理に鏡視下手術にこだわることなく、安全性と長期的予後を最優先に考えて診療することを心がけ、一般の小児外科施設や呼吸器外科施設では対応困難な重症患児の治療にも他科スタッフと力を合わせて積極的に取り組んでいます。
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