小児専門医療 鎖肛・ヒルシュスプルング病

 鎖肛(直腸肛門奇形)は5000出生に1人の割合で発症する生まれつき肛門の形成異常がある病気です。病型(高位、中間位、低位)によって治療方針が大きく異なり、新生児期に肛門形成を行う事もあれば、新生児期に人工肛門を造設し、乳児期に肛門形成の手術を行う事もあります。造影検査や超音波、MRI画像を用いて正確な診断をして治療方針を決定する事が重要です。排便機能の長期遠隔成績は低位型では良好な事がほとんどですが、中間位、高位型では高度の便秘や便失禁などの排便障害がみられる事があります。術後は排便機能を獲得するまで、医療側とご家族とよく話し合いながら治療・管理を進めていきます。また総排泄腔遺残、外反症などの疾患に関しても泌尿器科と合同で手術を行い、経験豊富な医師、看護師のもと移行期医療に至るまでサポートを行っております。

 ヒルシュスプルング病は生まれつき腸管の神経節細胞が欠如してしまう病気で、正常な腸蠕動が得られず、便秘や腸閉塞をおこす病気です。多くは新生児期や乳児期の繰り返す嘔吐やおなかの張りが強いなどの症状をおこし、無治療で経過をみると腸炎や腸に穴が開いてしまう(穿孔)ことで危険な状態になることもあります。治療は腸管神経がない腸を切除して、神経節細胞のある正常な腸を引き下ろして肛門につなげる手術を行います。手術後も便秘や腸炎症状が起こる事があり、外来で長期的なフォローアップが必要な病気です。

 当院では2010年の開院以来2023年まで、鎖肛は207例(高位33例、中間位38例、低位118例、総排泄腔遺残14例、直腸肛門狭窄4例)、ヒルシュスプルング病は69例の手術実績があり、全国的にも有数の治療経験を有する施設です。ヒルシュスプルング病に関しては臨床研究として「共焦点内視鏡を用いた腸管神経節細胞可視化」の研究を2014年に開始し、従来の術中迅速病理診断に代わるより低侵襲で迅速性、正確性に優れた病変部位の診断と術後の良好な排便機能を目指した研究を進めています(Shimojima et al. Neurogastroenterol Motil. 2020)。鎖肛に関しても術後の排便機能の客観的評価として肛門内圧検査を施行しており、術後排便機能を改善することを目的とした臨床研究にも積極的に取り組んでおります。

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こどもたちの全身における病気、けがに対して外科的に(手術で)治療します。治療範囲は顔面から手足の先まで全身に渡り、年齢も生まれる前の胎児から新生児、乳児、幼児、学童と幅広く診療に当たっています。難治症例や病態が多臓器に渡るような症例においては関連各科と共働して治療にあたります。カンファレンスを開催し、意見を出し合って患者さんにとって最良の結果が得られるよう、チャレンジ精神とチームワークで質の高い医療を実践しています。