
CAR-T細胞療法とは
CAR-T細胞療法(Chimeric Antigen Receptor T-cell therapy)は、患者さん自身のT細胞に遺伝子改変を加え、がん細胞を攻撃する能力を高めて体内に戻す細胞免疫療法です。
既存の抗がん剤治療で病勢制御が難しい再発・治療抵抗性の悪性リンパ腫に対して、高い有効性が報告されています。
以前は複数回の抗がん剤治療を経た後に行われていましたが、現在は初回治療後に再発した段階で実施可能となっています。
当院で実施可能なCAR-T製剤
当院では、以下のCAR-T製剤を用いた治療を行っています。
- アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel, イエスカルタ®)
- チサゲンレクルユーセル(tisa-cel, キムリア®)
対象疾患(保険適応)
CAR-T細胞療法の対象は、保険適応に準じて以下の疾患です。
- 再発・治療抵抗性 大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、形質転換リンパ腫を含む)
- 再発・治療抵抗性 濾胞性リンパ腫
診療の流れ

リンパ球採取(アフェレーシス)
専用機器を用いてT細胞を採取します(3〜5時間程度)製造
採取した細胞は製造施設に送られ、CAR遺伝子導入・培養を経て製剤が完成します(約4〜6週間)ブリッジング治療
CAR-T製造期間中、病状の進行を抑えるため化学療法や放射線治療を行うことがありますリンパ球除去化学療法
CAR-T細胞を投与する前に、抗がん剤(フルダラビン+シクロホスファミド)による前処置を行いますCAR-T細胞の投与
完成したCAR-T細胞を体内に投与します。
投与後は、CAR-T細胞ががん細胞を攻撃する際に発生する免疫反応(サイトカイン放出症候群[CRS]や神経毒性[ICANS])に注意しながら慎重に経過を観察します
一般的に約1〜1.5か月の入院が必要です退院後のフォローアップ
治療効果の判定と、副作用・合併症の長期的なモニタリングを継続して行います
主な副作用
CAR-T細胞療法に特有の副作用として、以下のものが知られています。
- サイトカイン放出症候群(CRS):発熱、血圧低下、酸素低下など
- 神経毒性(ICANS):言葉が出にくい、見当識障害、重症例では意識障害やけいれんなど
- 血球減少(白血球・赤血球・血小板の減少)
- 感染症
- 副作用の程度は個人差があります。当院では、経験豊富な医療スタッフがチームで対応し、安全管理に万全を期しています。


CAR-T細胞療法は、従来の抗がん剤では治療が困難であったリンパ腫に対し、新たな希望となりうる治療法のひとつです。
多摩総合医療センターでは、多摩地域の患者さんが都心まで移動することなく、地域で最先端のがん免疫療法を受けられるよう努めています。



