概要
高気圧酸素治療とは、通常の気圧より高い圧力環境のもとで酸素を吸入することで、血液中にたくさんの酸素を溶かし体内の酸素濃度を上げる治療です。体内の酸素濃度を上昇させること、高い圧力を体にかけることで、下記の効果が得られます。操作に関しては、専門の知識を持った臨床工学技士が行っています。
高気圧酸素療法の効果
酸素供給の増加
高気圧下では血液中に溶ける酸素量が増え(血中酸素濃度の上昇)、酸素が届きにくい組織にも酸素が行き渡ります。
特に、虚血(血流の悪い)組織の修復が促進されます。
炎症の軽減と浮腫(むくみ)の促進
血管の透過性が改善され、炎症性サイトカインの抑制や浮腫の改善に寄与します。
創傷治癒の促進
細胞の再生や血管新生(新しい血管の形成)を促進し、慢性創傷や糖尿病性足潰瘍などの治癒を促進します。
感染防御作用・抗菌効果
一部の細菌(嫌気性菌)に対して酸素が毒性を持ち、壊死性筋膜炎やガス壊疽などの治療に有効です。
白血球の機能改善により、免疫機能も向上します。
当院での適応疾患
- 突発性難聴
- 骨髄炎又は顎骨壊死
- 放射線障害
- 難治性潰瘍を伴う末梢循環障害
- 脊髄神経疾患
- 放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍
- 重症頭部外傷後若しくは開頭術後の意識障害又は脳浮腫
- 腸閉塞
- 皮膚移植
- 重症軟部組織感染症(ガス壊疽、壊死性筋膜炎)又は頭蓋内膿瘍
- 急性末梢血管障害
・重症の熱傷又は凍傷
・広汎挫傷又は中等度以上の血管断裂を伴う末梢血管障害
・コンパートメント症候群又は圧挫症候群 - 脳梗塞
- 重症の低酸素脳症
- 網膜動脈閉塞症
当院の高気圧酸素治療

当院の装置は「第2種装置」と呼ばれている多人数用(6人用)です。
通常治療は10分かけて2気圧(水深約10mの気圧と同等)まで加圧し、60分過ごして頂きます。その後15分かけて大気圧まで減圧します。トータル治療時間は90分です。
治療中はリクライニングチェアで、酸素マスクを用いて酸素を吸入します。装置内にはテレビも設置しております。また、装置内にはマイク・カメラも設置しており、いつでも技士が対応出来るため安心して治療が受けられます。
初診の流れとしましては、まず症状による各診療科診察予約のうえ、医師の診察にて適応を確認後となります。
治療にあたってのご注意
治療には酸素を使用しています。事故防止のため、以下のものは持ち込み禁止です。
- 機械類
補聴器・携帯電話・時計など電池を使用する機器(本・雑誌は持ち込み可) - 白金カイロ・使い捨てカイロ
- マッチ・ライター等発火物
治療前に服装・持ち込み物のチェックを行うためご協力のほどお願いいたします。
高気圧酸素治療実績
令和6年度実績
のべ患者数 171名
主たる疾患(上位4疾患)突発性難聴 108名
- 突発性難聴 108名
- 骨髄炎または放射線障害 40名
- 難治性潰瘍を伴う末梢循環障害 7名
- 腸閉塞 5名

