臨床検査部門で受けられる検査を紹介します

(1)検体検査

検体検査は尿や血液、臓器に含まれる様々な成分や量、形態を調べることで、病気の診断や治療効果を確認できます。大きく8つの部門に分かれています。それぞれの部門には多数の検査項目があり、医師は患者さんの症状や訴えから必要な検査項目を選択して依頼します。

一般検査(尿・ 便など)

尿は血液が体内循環して腎臓でろ過してつくられます。尿を調べることで腎臓だけでなく、体の様々な情報を得ることができます。尿検査は尿定性検査と尿沈渣検査に分けられます。便検査は便中潜血反応検査と寄生虫卵検査があります。

一般検査イメージ図
一般検査イメージ

血液学的検査

私たちの体を流れている血液は、細胞成分と血漿成分に大きく分けられます。細胞成分は赤血球、白血球、血小板です。血漿成分は止血のための凝固・線溶因子が含まれます。白血病や貧血、その他血液疾患の有無が分かります。

血液学的検査のイメージ図
血液学的検査

生化学的検査

血液の血漿成分からフィブリノーゲンを除いたものを血清と言います。血清中には脂質、糖質、電解質など様々な成分が含まれています。医師は患者さんの病気に合わせて、必要な項目の成分量測定を依頼します。この検査を総称して生化学的検査と呼びます。臨床検査技師は生化学分析機器などを使用して正確な検査データを提供します。異常値が出たからと言って直ぐに病気だとは限りません。医師は臨床症状や他検査の結果と合わせて総合的に診断します。

生化学的検査のイメージ図
生化学的検査

免疫学的検査

私たちの体には、もともと無い細菌やウイルスなどの異物が侵入すると抗体という物質をつくって体を守ろうとする働きがあります。血清中に抗体ができているか、またその量はどの位かを調べる検査です。抗体の異常産生によるアレルギー反応や免疫異常が原因で起こる炎症などの鑑別にも役立ちます。

微生物学的検査

私たちの体から採取される喀痰、糞便、尿、血液などを染色、培養して病原菌を検出・特定します。都立病院では細菌検査室から医師への病原菌情報の連絡体制を整えています。臨床検査技師は院内感染制御の一環として病棟ラウンドにも参加しています。

微生物学的検査のイメージ図
微生物学的検査

遺伝子学的検査

病原体遺伝子検査・体細胞遺伝子検査・遺伝学的検査の3種類があります。

  1. 病原体遺伝子検査
    ヒトに感染症を引き起こす外来性の病原体(ウイルス、細菌等微生物)の核酸(DNAあるいはRNA)を検出・解析する検査です。
  2. 体細胞遺伝子検査
    癌細胞特有の遺伝子の構造異常を検出するなど、病状とともに変化する可能性のある一時的な遺伝子情報を明らかにする検査です。
  3. 遺伝学的検査
    ヒトが生まれつき保有する遺伝学的情報を明らかにする検査です。都立病院では専門医による十分なカウンセリングと院内倫理委員会での承認、個人情報保護に配慮して検査を実施しています。

輸血関連検査

病気や事故、手術で出血した成分を補充するのが輸血療法です。輸血前には認定輸血検査技師などが適合試験を行い、安全に輸血を行なえるように万全な対応をしています。輸血するのは赤血球、血小板、血漿成分などです。患者さん本人から採取した自己血の保存も適切に行っています。

病理学的検査

病理学的検査には主に組織診検査、細胞診検査があります。臨床診断の確定、病変の広がりぐあいや病期の判定を病理専門医が診断します。患者さんの治療方針を決定するために重要な検査です。
病理(細胞診)専門医、細胞検査士、電子顕微鏡技士と臨床検査技師が協力して専門性の高い検査を行っています。

病理学的検査のイメージ図
病理学的検査

(2)生理検査

生理検査は心電計や脳波計、超音波装置などの医療機器を用いて患者さんの体や臓器の状態を検査します。医師は患者さんの症状や訴えから検査項目を選択して検査の依頼をします。レントゲン検査、CT検査、MRI検査、RI検査などのデータと臨床症状とを合わせて病気の診断や治療効果を総合的に判断します。

循環器(心臓)系検査

循環器系の代表的な疾患は狭心症、急性心筋梗塞、心筋炎、心筋症、心臓弁膜症、不整脈です。臨床検査では、心電図検査、負荷心電図検査、血圧検査などを行っています。

循環器(心臓)系検査のイメージ図
循環器(心臓)系検査

脳波検査

大脳から出る極微小な電流を脳波計で増幅してグラフ化し観察するのが脳波検査です。けいれんを起こした時、意識障害、てんかん疑い、脳腫瘍、脳死などの診断に有用です。

脳波検査のイメージ図
脳波検査

誘発電位検査

主に聴性誘発電位検査、視覚誘発電位検査、体性誘発電位検査の3種類が行われています。

  1. 聴性誘発電位検査
    聴覚神経の伝導路や脳幹に異常があるかどうかを調べる検査です。小さなお子さんの場合は睡眠薬で眠ってから検査します。
  2. 体性誘発電位検査
    末梢神経から大脳皮質、脳幹に至る感覚神経の経路に異常がないかを調べる検査です。
  3. 視覚誘発電位検査
    モニター画面に白黒格子模様の画像を見ることや光によって視覚刺激をします。大脳皮質の反応を見ることで視覚神経の経路に異常がないかを検査します。

筋電図・神経伝導速度検査

筋電図検査は筋萎縮の症状がある場合に行う検査です。筋の異常、収縮の異常、神経から筋への刺激の異常の鑑別ができます。
神経伝導速度検査は四肢のしびれや脱力がある患者さんが末梢神経障害を疑う時に行う検査です。

  • 筋電図検査
    手足の筋に小さな針電極を刺し筋肉を刺激します。筋の活動をグラフ化して判断する検査です。針を刺しますので痛みを伴う検査です。
  • 神経伝導検査
    手足の末梢神経を電気刺激して刺激が神経を伝わる速度を計測します。末梢神経に異常があるとその速度が低下します。
神経伝導速度検査のイメージ図
神経伝導速度検査:A,BからCまでの到達時間を測定し、速度を計算します。

呼吸機能検査

喘息や肺の病気を疑う時に行う検査です。肺活量、努力性肺活量検査は10分程度で簡単に検査できます。医師は検査数値とグラフから病気を判断します。他に詳細に調べる残気量検査、肺拡散能検査等もあります。臨床検査技師は良いデータを得られるように大きな掛け声で検査します。肺に病気がない人でも手術前に肺活量、努力性肺活量検査を行う場合があります。

呼吸機能検査のイメージ図
呼吸機能検査

超音波検査

超音波を臓器に当ててその反射の強さを画像化して観察します。対象臓器はさまざまで心臓、肝臓、甲状腺、乳腺、消化管に用いられています。最近では関節などの整形外科領域も含めて医療で広く利用されています。目的に応じて動画や静止画で観察します。超音波検査士は的確な画像や計測値を医師へ報告します。機器は小型化されて病室での検査にも便利です。

超音波検査のイメージ図
超音波検査

聴力・平衡機能検査

  1. 聴力検査
    一般に聴力検査は標準純音聴力検査をさし、防音室でヘッドホーンを両耳にあて、左右別々に検査をします。聞こえる最も小さな音の大きさを調べ、難聴があるかどうか、難聴があればその種類や程度がわかります。
  2. 平衡機能検査
    めまいの訴えがあるとき、その原因、程度などを調べるために行われます。重心動揺検査や眼振検査などがあり、平衡異常を他覚的に把握したり平衡機能障害の病巣局在診断や、治療効果の客観的な評価を行います。

サーモグラフィ検査

体表から放射される熱を赤外線として感知して画像化します。血行障害、自律神経異常、末梢神経障害、体温異常、腫瘍などの熱分布を調べます。また、冷水や圧迫などの負荷試験を行うこともあります。

サーモグラフィ検査の写真
サーモグラフィ検査