当院の造血幹細胞移植後の再発に対するドナーリンパ球輸注の変遷

研究題名:Changes in donor lymphocyte infusion for relapsed patients post-hematopoietic stem cell transplantation(当院の造血幹細胞移植後の再発に対するドナーリンパ球輸注の変遷)

令和7年10月

研究者所属・氏名

輸血・細胞治療科/臨床検査科 黒澤修兵

平易な要約

造血幹細胞移植は、白血病などの血液疾患を根治へ導く治療法の一つです。しかし、移植後の再発は依然として大きな課題です。私たちは、ドナーリンパ球輸注(Donor lymphocyte infusion,DLI)という治療を、再発後に適応のある患者様に実施してきました。DLIとは、造血幹細胞移植の時と同様の手法でドナーからリンパ球を採取し、複数回に分けて患者様に点滴し、がん細胞を攻撃する力を高める治療です。本研究では、1994年から2024年の30年間にDLIを実施した75例を解析し、投与データの詳細や治療成績の変化を記述しました。近年はBCL2阻害薬やFLT3阻害薬などの新薬と組み合わせることで、再発後でも長期寛解を維持する患者様が増えております。これらの経験をもとに今後も研鑽を重ね、移植後再発に対する有効な治療法の確立を目指していきます。本研究成果は2025年1月29日に国際誌『Frontiers in Immunology』に掲載されました。

ドナーリンパ球輸注(DLI)を実施した患者数の推移
都立駒込病院でドナーリンパ球輸注(DLI)を実施した患者数の推移 (2024年3月時点)

研究者のコメント 

本研究は、移植医療における重要な治療選択肢であるDLIの30年間にわたる歩みを、当院の経験として体系的に記録したものです。75例という患者数は国内でも屈指の規模を誇り、これまで知見の限られたDLIの貴重な臨床データを提供しました。元々は内堀雄介先生と名島悠峰先生が学会発表された研究であり、論文化にあたって小医も共同で執筆する機会を頂きました。両先生には多大なるご指導とご助力を賜り、心より感謝申し上げます。75例のうち、最初の投与は1994年に遡りますが、その患者様は病気を克服し現在も通院中です。長年駒込病院の移植医療を支えてこられた全ての医療スタッフ、そして懸命に治療に臨まれた患者様とご家族に、深く敬意と感謝を捧げます。

関連URL

https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2025.1521895/full(外部リンク)