診療内容 (胃外科)
【目 次】
1. 対象疾患
2. 診断・治療の流れ
3. 治療法
4. 当科の治療の特色
5. 実績
6. 先端医療・治験
7. セカンドオピニオンのご案内
1.対象疾患
当科では、長い歴史の中で培った治療経験と最新の技術を組み合わせて、胃がんを中心とした胃疾患を対象として診療を行ってきました。扱う胃疾患は、良性、悪性を問わずさまざまな胃疾患、およびに関連する周囲臓器の治療を行なっています。
・胃がん
・食道胃接合部がん
・GIST、悪性リンパ腫などの胃悪性腫瘍
・肉腫
・胃粘膜下腫瘍
・減量手術が必要な肥満症
・食道裂孔ヘルニア、腹壁ヘルニア
2.診断・治療の流れ
当院では、消化器内科・内視鏡科、腫瘍内科、放射線診断部、病理科など各専門医との合同検討会(胃キャンサーボード)を原則毎週開催しています。食道と胃にまたがる領域に発生する食道胃接合部がんに関しては、食道外科ともキャンサーボードで協議し、密に連携をとっています。この胃キャンサーボードにて、患者さんにとってよりよい治療を多方面から検討し、それぞれの患者さんにあった専門医療が提供できる体制をとっています。

① 初診
血液検査、胸腹部レントゲン、心電図、呼吸機能などに加え、必要に応じて心臓超音波、下肢静脈超音波検査、腹部超音波検査などを行います。胃がんは高齢の方も多く、心疾患や血栓症がみつかった場合は、手術の前に対策を講じています。
② 検査
上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査、胸腹部CT検査などを行います。
③ 手術オリエンテーション外来
体調や禁煙状況などの確認、検査結果、治療方針の説明、必要な追加検査などについてお知らせします。
手術の予定が少し先になる場合もご安心頂けるよう、予め治療の概要をお伝えします。なるべくご家族と一緒に来院するようお願いします。
<外科手術の方>
④ 入院日・手術日のお知らせ
中止していただく内服薬がある場合があります。
⑤ 入院
詳しい治療方針の説明をさせていただきます。入院後に上部消化管内視鏡検査を行うことがあります。
⑥ 手術
<外科手術以外の方>
⑦ 消化器内科や腫瘍内科への紹介
3.治療法
当科では原則として科学的根拠に基づく標準治療を行います。ここでは主に胃がんにおける標準的な治療法を紹介します。
(1)内視鏡切除
胃カメラを用いて、がんをくり抜く部分切除です。リンパ節転移の可能性が極めて低い早期がんを主に対象とします。内視鏡的切除が選択された場合でも、内視鏡的切除後の検体の評価によっては、根治性の観点から、追加の外科手術をお勧めする場合もあります。
(2)外科手術
全身麻酔下で根治を目的とした胃の切除を行います。遠隔転移のない進行胃がんなどを対象とします。病変の位置や進行度により、胃やリンパ節の切除範囲が決まります。主な切除方法は以下です。
• 胃全摘術:胃の全切除
• 胃亜全摘術:胃の小弯側は全切除するが、胃の噴門(入口)と極小の胃は温存。
• 幽門側胃切除術:胃の幽門(出口)を含んだ胃切除。胃の約2/3を切除。
• 噴門側胃切除術:胃の噴門(入口)を含んだ胃切除。胃の約1/3~1/2を切除。
• 胃分節切除術:胃の噴門(入口)と幽門(出口)を残した胃の切除。
• 胃局所切除術:胃の部分的な切除。
<切除方法の例>



(3)薬物治療
抗がん剤や分子標的薬などの薬物投与による治療です。術後補助療法としての治療と、切除不能進行胃がん・再発胃がんに対する制御目的の治療の2種類があります。
- 手術後補助療法
根治的な胃切除術がなされた後、体内に遺残している微小な腫瘍による再発を予防することを目的としています。これまでにさまざまな臨床試験が行われた結果、一部を除く術後病理ステージII, IIIに対して、化学療法を行うことが推奨されています。手術後に行う、再発予防を目的とした抗がん剤治療を術後補助化学療法と言い、体調や化学療法の副作用をみながら、半年間から1年間をかけて行います。 - 切除不能進行がん・再発胃がんに対する制御目的
日本や世界中で行われた多数の臨床試験の結果、有効な薬剤が使用されるようになってきました。胃がんでは、一次治療、二次治療、三次治療として、効果が認められている薬剤を使用することが推奨されています。
(4)放射線治療
主に出血に対する予防目的に行います。根治を目的とした治療法ではなく、出血や痛みを和らげる治療です。
4.当科の治療の特色
当科では直近20年間で約3000例の胃がん手術を行っており、その治療成績をデータ化し、画一的な治療ではなく、患者さん一人ひとりに合った治療を行っています。
駒込病院胃外科では、根治性と低侵襲の両立、そして完治が難しい胃癌に対してもあきらめない治療です。根治性を損なうことなく低侵襲で機能温存を追及した手術(ロボット支援下胃切除術、腹腔鏡下噴門側胃切除術、腹腔鏡下胃局所切除術、神経温存胃切除術など)を行なっており、術後の体力を低下させないことも重視しています。
根治性と低侵襲の両立
(1)低侵襲手術 ― 腹腔鏡下手術とロボット支援下(ダビンチ)手術―
従来、胃の開腹手術ではお腹を15~20cmほど大きく切って行うので、術後長く痛みが残ります。傷も大きく、腸の動きが正常化するのも遅く、日常生活を取り戻すのに時間がかかりました。
一方、お腹に小さな穴を開けて行う低侵襲手術(腹腔鏡下手術やロボット支援課手術)は、体を大きく傷つける必要がないため、高齢者や体力のない方におすすめできる治療法です。最新の臨床試験の結果、低侵襲手術は早期がんだけでなく進行がんにも適応が広がっています。
当院では、手術支援ロボット「ダビンチXi」を2018年8月に導入し、すべての胃切除術に対応可能です。当院では進行がん症例や食道胃接合部がんなどの高難度症例を含め、胃がん手術の約9割の手術をロボット支援下手術で実施しております。また、2024年10月に最新の手術支援ロボット「ダビンチSP」を新たに導入し、より低侵襲な治療として選択肢を増やしています。


(2)機能温存
胃切除後には体重が10~20%程度減少することが知られています。特に胃全摘術を行った患者さんでは、術後の食事摂取量が減ることなどにより、胃を残す手術を行った患者さんに比べ、体重の減少が多く、日常生活にも影響するため、当科では、なるべく胃の機能を温存することを心がけています。
GISTに対する腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)やCLEAN-NET、NEWSなどの、正常な胃をなるべく残す手術も行っています。
治療が難しい胃がんに対する集学的治療
- (1)食道胃接合部がん
近年、食道と胃にまたがる領域(食道胃接合部)に発生する食道胃接合部がんが増加しています。一般的な胃がんと比較して予後が悪いことが報告されており、また発生部位が胸部(胸腔)に属する食道と腹部(腹腔)に属する胃にまたがることから手術の侵襲や難易度が高い疾患です。
腫瘍の拡がりが食道胃接合部から食道側へ4cmまでの症例は腹腔側からのアプローチのみで手術を行っています。その分、狭いスペースでの操作が要求されるため手術の難易度が高くなりますが、極めて精緻な操作が可能な手術支援ロボットを用いて、当院に在籍する内視鏡外科技術認定医/ロボット支援手術プロクター(指導医)が手術を行うことで患者様の体への負担を最小限にするようにしています。
一方、腫瘍が食道胃接合部から食道側へ4cm以上拡がる症例は、胸部のリンパ節郭清も必要となるため、食道外科で治療を担当しています。キャンサーボードで食道外科とも連携をとり、食道胃接合部がんの患者様によりよい治療を提供できるよう心掛けております。また、当院では全国のがん専門病院や大学病院が協力して実施している多施設臨床研究(日本臨床腫瘍グループ:JCOG)にも参加しており、食道胃接合部がんのより良い治療開発にあたっています。 
- (2)化学療法と手術による諦めない胃がん治療
高度リンパ節転移や大動脈周囲リンパ節転移を伴う進行胃癌に対しては、多施設での臨床試験の結果に基づいて3~4サイクルの化学療法を施行後に手術を行っています。また、他臓器に遠隔転移を伴う症例は原則として化学療法による治療となりますが、化学療法が奏功した場合は根治切除を行うことで治癒する症例もあり(コンバージョン手術)、多くの診療科と密に連携を取りながら、諦めない胃がん治療を行っています。
5. 実績

胃外科のロボット支援下手術件数
低侵襲手術の中でも、ロボット支援下(ダビンチ)手術は年々増加しています。2018年の導入開始以降、ロボット胃切除術の件数は増加傾向で、現在は胃切除術全体の約9割をロボット支援下で行っています。
6.先端医療・治験
(1) 先端医療・治験とは
一般に人(患者さんや健康な人)を対象とした治療を兼ねた試験を「臨床試験」と呼びますが、そのうち、「新しい医薬品や医療機器の開発」の為の「臨床試験」を「治験」(治療試験)と呼びます。
臨床試験や治験に参加するには、病状や体調等が一定の基準を満たしている必要があり、すべての患者さんが参加できるわけではありませんが、患者さんによっては非常に有効であることも少なくありません。当科は、さまざまな臨床試験や治験を実施・分担してきていますので、担当医からご案内する場合もありますが、お気軽にご質問してください。
(2) 当院で受けられる先端医療・治療
具体的な取り組みとして、標準治療より理論的に優れた治療(より治る可能性が高い治療、より延命効果が期待できる治療、より副作用が少ないであろう治療、より合併症が少なく回復が早いであろう治療、など)を、全国のがん専門病院や大学病院と連携して、臨床試験/臨床研究として行っています。現在参加しているものとして、胃癌手術に関するもの、胃癌周術期化学療法に関するもの、高齢者に対する取り組み、GIST治療に関するものなどがあります。
<臨床試験で行う新しい外科治療・集学的治療>
食道胃接合部腺癌に対する DOS or FLOT を用いた術前化学療法のランダム化第 II/III 相試験(JCOG2203試験)(外部リンク)
→食道胃接合部がんの手術前に行う抗がん剤治療の効果、安全性を検証する臨床研究です。
cT1-4aN0-3 胃癌におけるロボット支援下胃切除術の腹腔鏡下胃切除術に対する優越性を検証するランダム化比較試験(JCOG1907試験)(外部リンク)
→胃がんに対する手術として、ロボット支援下手術と腹腔鏡下手術と比較する臨床研究です。
化学療法が奏効した診断時切除不能cStage IVB/pStage IV胃癌に対するConversion surgeryの意義に関するランダム化比較第III相試験(JCOG2301試験)
7. セカンドオピニオンのご案内
胃切除に不安のある方、他の病院での説明だけでなく意見を聞きたい方(セカンド・オピニオンの希望)のご相談を受け付けています。また、他の病院で治療が困難といわれた方もお気軽にご相談ください。
最終更新日:2026年1月

