呼吸器内科

呼吸器内科・緩和部門の概要と紹介

当院呼吸器内科では、呼吸器疾患全般の診療を行っています。予防医学を重視しており、禁煙外来や肺炎球菌ワクチン等の予防接種を積極的に行っています。肺炎、気胸、膿胸、肺がん、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、睡眠時無呼吸症候群、結核の診断と治療には特に力を入れています。これらの疾患に対して、薬物療法や酸素療法を始めとして、胸腔ドレナージ、非侵襲的陽圧換気療法、人工呼吸器等の治療も積極的に行っています。重症度が高い場合には、連携する高次医療機関と連携して治療を行っています。リハビリテーションの介入も積極的に行っています。 

主な呼吸器疾患と当院の診療の特色について

  1. 肺がんの予防と診断、治療

    肺がんの予防(主に禁煙外来)
    精神障害のある患者さんのための禁煙外来を開設しています。禁煙補助薬による治療を基本とします。精神科病院の特性を活かして、禁煙治療中の精神科的サポートが行えます。医師、看護師、ケースワーカーを中心にチーム医療で禁煙治療をサポートします。当院は、保険診療での禁煙治療のみ行っています。

    肺がんの早期発見
    精神障害のある患者さんが、何らかの理由によって自治体や勤務先などの定期検診が受けられていない場合に、外来や入院にて定期的な胸部X線と必要に応じた胸部CTを撮像し、肺がんの検査を行っています。放射線科医と協力して速やかに読影を行い、確実な読影結果の確認を行っています。

    肺がんの確定診断
    各種検査の結果にて肺がんが疑われる場合に内科的診断が可能と考えられる病変であれば、気管支鏡検査や胸部CTガイド下生検を行っています。当院では、2022年3月からガイドシース併用気管支内超音波断層法が導入されましたので、末梢型肺がんに対する早期診断率の向上も期待できます。精神障害があって検査がご不安な場合も、精神科医の診察や薬剤調整などを行い、必要に応じて鎮静を行うことで安心して診断ができるようにサポートします。

    肺がんの治療
    診断の結果にて肺がんと診断され、手術治療や放射線治療の適応があり、尚且つそれらの積極的治療を希望される場合、当院では肺がんの手術治療や放射線治療はできませんので、近隣の病院を御紹介します。内服での肺がん治療、もしくは点滴による肺がん治療は当院でも行うことができます。点滴による肺がん治療は、当院は全例入院治療にて行います。尚、当院では投与できない薬剤が治療薬として最適な場合には、他院の外来化学療法室と連携して治療を行います。
  2. 呼吸器感染症全般と誤嚥性肺炎の診断、治療、再発予防

    呼吸器感染症(肺炎など)
    細かく病歴聴取と身体所見を取ることを心がけ、肺炎を代表とした呼吸器感染症の治療を行っています。グラム染色や直接抗酸菌塗抹染色(チール・ニールセン染色)及び核酸増幅法の一つであるTB-LAMP法は院内にて当日中に行うことが可能です。肺炎に対しては適切な抗微生物薬を使用し、耐性菌を誘導しないよう適正な抗菌薬使用を推進しています。肺炎の原因が感染症だけでは無いこともあるので、必要に応じてCT検査や気管支鏡検査を積極的に行い、肺炎と診断され易い腫瘍やびまん性肺疾患、異物などの精密検査も行っています。

    誤嚥性肺炎
    誤嚥性肺炎は呼吸器の障害で発症するものではありません。背景に脳卒中後遺症、神経筋疾患、精神科における治療薬の副作用等が原因となって嚥下機能低下を招いていることがあります。当院では誤嚥性肺炎の丁寧な診断と治療、そして予防に尽力しています。リハビリテーション科スタッフ、言語聴覚士、摂食嚥下認定看護師、内科医、精神科医の多職種連携によって嚥下機能評価と訓練を行います。必要に応じて認定を受けた医師によって嚥下内視鏡を行い、正確に嚥下評価を行います。吟味の上で適切な食事形態を選択し、嚥下訓練を行っていきます。神経疾患や抗精神病薬などが原因による嚥下機能障害が発生している可能性が強く疑われる場合には、神経内科専門医による診断と治療介入、精神科医による精神科治療薬の調整を行います。口腔内不衛生も誤嚥性肺炎の発症に関与するため、精神障害者の歯科治療に長年携わってきた歯科医と衛生士が口腔環境を評価し、必要に応じて齲歯治療や適切な義歯作成を行い肺炎の再発を予防します。喫煙者の場合には禁煙指導、肺炎球菌ワクチン未接種の場合には積極的に肺炎球菌ワクチンの接種を行っています。
  3. 都内でも極めて少ない精神障害者の方に発症した結核症の診断と治療が可能な病院

    精神障害を持つ患者さんの結核症の診断と治療が可能です。お住いの地域の保健所と協力して診断や治療を行います。結核症の診療担当医は英語対応が可能であり、外国人で精神障害を持つ結核症患者さんの結核診療を行っています。喀痰抗酸菌塗抹陰性の肺結核症患者と肺外結核症の患者さんは外来治療を行っています。保健所と協力し日本版DOTS(Directly Observed Treatment Short course)を実践しています。陰圧がかかる感染症専用の精神科閉鎖病棟を45床有し、18床は結核モデル病床として過去30年以上結核患者さんの入院治療を行ってきましたが、COVID-19のパンデミックによって2020年4月以降は当該病棟を全てCOVID-19専用入院病棟として運用しており、結核症の入院治療は2022年3月の時点で休止中です。
  4. 気胸や膿胸の治療

    気胸に対する脱気や胸腔ドレナージを行っています。内科的治療にて治癒しない例に対しては、他院呼吸器外科と連携して治療にあたっています。膿胸に対しては、抗菌薬投与、持続胸腔ドレナージと線維素溶解剤を併用した保存的治療を積極的に行っています。膿胸の発症に口腔内不衛生や齲歯が関与していることが多いため、歯科と協力して治療を行っています。患者さんの疼痛や違和感の軽減のため、持続胸腔ドレナージが必要な場合には、12Fr以下の細いアスピレーションキットを使用しています。血気胸等で手術治療や集中治療が必要な患者さんは、速やかに他院と連携して転院搬送を行っています。
  5. 肺がんや慢性呼吸不全に対する緩和治療

    精神障害を持つ患者さんの肺がんや慢性呼吸不全による苦痛に対して緩和治療を行っています。在宅での終末期緩和治療を希望される場合は、身体と精神に両方アプローチ可能な往診クリニックや訪問看護ステーションと密接に連携して緩和治療を行っています。精神障害を持つ患者さんの終末期意思決定支援と適切な終末期緩和治療の提供に関して、当院が最後の砦としての自覚を持って診療しています。
  6. 気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)の診断と治療

    気管支喘息の治療で最も重要な吸入ステロイド薬や抗コリン薬を始めとした吸入薬を積極的に導入しています。吸入手技の評価と薬剤師による指導も行っています。精神障害や認知症によって、ドライパウダー製剤の吸入が困難な患者さんに対しては、加圧噴霧式定量吸入器にスペーサーを併用します。介助者の吸入援助も含めて確実に気管支末梢まで吸入薬を到達させることを心がけています。重症持続型の気管支喘息患者さんに対しては、生物学的製剤の定期的な皮下注による治療も積極的に行っています。気管支サーモプラスティーは当院では行っていないため、必要時は他院に紹介させて頂きます。
  7. 睡眠時無呼吸症候群(主に閉塞性睡眠時無呼吸症候群)

    外来または入院中に睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を行っています。検査結果に基づいて、積極的に在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)を導入しています。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因として最も頻度の高い肥満症に対しては、栄養指導の導入や、減量目的の入院治療も積極的に行っています。肥満症に合併することが多い糖尿病、脂質異常症、高血圧症、心疾患などの評価と治療も総合的に行っています。

 

主な呼吸器疾患の診療実績

2020年度(件数)2021年度(件数)
COVID-19228369
肺炎 (COVID-19以外)228219
気管支喘息140125
睡眠時無呼吸症候群7631
COPD3438
間質性肺疾患2329
肺癌148
膿胸、気胸58
肺結核23
非結核性抗酸菌症54

検査・治療

2020年度(件数)2021年度(件数)
気管支鏡検査1311

 

呼吸器内科部門担当スタッフ(2022年4月1日現在)

スタッフ専門分野学会資格等
医長
阪下 健太郎
結核・呼吸器感染症
肺がん
呼吸不全管理
日本呼吸器学会専門医/指導医
日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
日本感染症学会専門医/指導医
日本内科学会認定内科医/総合内科専門医
医員
横須賀 響子
呼吸器全般
緩和医療
日本内科学会認定医
医員
矢野 光一
呼吸器全般
アレルギー疾患
(主に気管支喘息と花粉症)
日本内科学会認定医
日本呼吸器学会専門医
非常勤医師
井口 万里
呼吸器全般日本内科学会認定医
日本呼吸器学会専門医
医学博士