膵臓と膵臓癌の検査

超音波内視鏡検査ご存じですか?

膵臓って何?

膵臓は、胃の裏側、みぞおちの少し下あたりに位置していて、長さ15〜20cmほどの左右に細長い形をしています。膵臓は肝臓や胃腸など、他の臓器に比べると比較的小さくお腹の奥の方にある臓器です。

脾臓

膵臓って何をしているの?

膵臓の主な役割は2つあります。

  1. 消化を助ける(外分泌機能)
    食べ物を分解するための「膵液」を分泌します。
    この膵液には、炭水化物・タンパク質・脂肪を分解する酵素が含まれていて、食べ物が腸で吸収されやすくなるように助けてくれます。
    また、胃から送られてくる強い酸を中和する働きもあります。
  2. 血糖値を調節する(内分泌機能)
    「インスリン」や「グルカゴン」といったホルモンを分泌して、血糖値をコントロールします。
    この機能がうまく働かないと、糖尿病などの病気につながることがあります。 

この膵臓にできた癌のことを膵臓癌と言います。

膵臓癌って怖いというけど、どうして?

膵臓はお腹の奥の方にある臓器なので、病気が見つかりづらいというところにあります。
全国的に見て、発見された膵臓癌の5割弱(45.8%)がStageⅣとされています(注1)。
(Stageとは癌の進み具合を表します。基本的にStage0が一番早く、StageⅣが一番進んだ段階です)
(注1) がん情報サービス 院内がん登録テータ 2019-2023年より

また、膵臓癌は、治療が効きづらい癌とも知られています。5年生存率(癌と診断されてから5年後の状況)は、膵臓癌全体で1割強とされています。これは、胃癌や大腸癌の6割強と比較するとかなり低い数値です。しかも、その膵臓癌が近年増加傾向にあります。 

膵臓癌の症状

膵臓癌の症状には、腹痛、体重減少、全身倦怠感など、他の病気でもよく見られるようなものや、黄疸といった他の病気ではあまり見られないものがあります。
ただ、症状が出た段階では、病気が進行していることが多く、当院において黄疸で見つかった膵臓癌(2016-2020年)の約半分はStageⅣでした。 

そのため、膵臓癌を何とかしようと、早期に発見するための取り組みが全国的に行われています。当院でも膵臓癌の早期発見に力を入れています

 どんな人が膵臓の検査をうけたらいいの?

 全ての人に対して一律に膵臓の検査を行うことは、あまり意味があることとはされていません(検査ができる数には限りがあり、また、身体への負担の問題があるからです)
そのため、ある程度、膵臓癌リスクが高いとされている方に対して検査をすることをお勧めしています。 

当院が検査をお勧めしている方。

  • 画像検査で膵臓に異常(膵管拡張・膵嚢胞、膵石灰化 など)を認めた方
  • 新しく糖尿病と診断された、もしくは糖尿病が突然悪化した方
  • 血液検査で膵臓関連の数値(アミラーゼ、リパーゼなど)や腫瘍マーカー(CA19-9など)が高い方
  • 血縁者に膵臓癌を患った方がいる方
    (それ以外でも膵臓の検査を行うことは可能です。担当医にお問い合わせください)

 膵臓の検査ってどんなものがあるの?

採血検査や健康診断で行われる腹部エコー検査以外に膵臓の画像検査には以下のようなものがあります(これらの検査は全て日帰りでできます)。

造影CT検査
MRI(MRCP)検査
超音波内視鏡検査(EUS)

造影CT検査

X線を使って体の内部を立体的に画像化する検査です。断面(スライス)画像を多数撮影し、コンピューターで再構成することで、膵臓を評価します。さらに、膵臓のみではなく、膵臓周囲の状況も同時に評価することができます。
基本的には危険性の少ない検査ですが、被ばくの問題や、また、膵臓をみるために造影剤が必要(造影剤を使用しなくても検査はできますが、膵臓の評価は難しくなります)であり、その副作用の問題があります。
また、小さな病変や膵管・膵嚢胞の評価はMRIやEUSの検査に劣ります。

CT検査

CT検査についてもっと知りたい方は、放射線科CT検査をご覧ください。

MRI(MRCP)検査

強力な磁場と電波を使って体内の詳細な画像を撮影する非侵襲的な検査です。
放射線を使わないため、被ばくの心配がなく安全性が高いのが特徴です。
また、造影剤を使用しなくとも検査することができ、CT検査よりも膵管の様子や膵嚢胞の様子を見るのに優れています(検査目的によっては造影剤を使用します)。
ただし、磁力を使用した検査の為、体内に金属がある方(ペースメーカーや骨折の古いプレート、外せない装飾品(入れ墨、ネイルなど))については検査ができないことがあります。
また、閉所に20-30分入るために閉所恐怖症の方には検査が不向きです。

MRI検査
MRI検査についてもっと知りたい方は、放射線科MRI検査をご覧ください。

超音波内視鏡検査(EUS)

先端に超音波発生装置がついた内視鏡を使用した検査です。その内視鏡を胃内に挿入し、胃や十二指腸から膵臓をみることができます。細かい膵臓の病気を見つける力がCTやMRIよりも優れています(注2)。
また、膵嚢胞や膵管の内部の状況を細かくみることができます。
(注2)Kanno A. et al Multicenter study of early pancreatic cancer in Japan Pancreatology 18:61-67:2018より
この検査は特殊な装置と技術が必要になるため、検査可能な病院は限られています。
通常の内視鏡よりも径が太い内視鏡を使用するため鎮静剤・鎮痛剤を使用した検査になります。また、内視鏡自体に伴う合併症・偶発症の可能性があります。

内視鏡

これらの検査を、個々のお身体・膵臓の状況に合わせて選択して、膵臓癌の早期発見に努めます。

●検査結果からさらに精密検査が必要になった場合には、膵臓の細胞検査を検討します。
(こちらは入院検査になります)
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
内視鏡的逆行性膵管造影+膵液採取(ERCP+SPACE)

超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)

超音波内視鏡から針を出して膵臓腫瘤の細胞を採取する検査です。膵臓腫瘤の細胞検査として広く行われています。EUS-TAともいわれます。
当院では1泊2日の入院での検査を行っています。

脾臓写真

内視鏡的逆行性膵管造影+膵液採取(ERCP+SPACE)

膵臓腫瘤は見られていなくとも、膵管の変化から膵臓癌が否定できない時に行われる検査です。内視鏡を膵管の出口のある十二指腸まで挿入して、細いチューブを留置します。そのチューブから数日かけて膵液を採取してその細胞検査を行います。
特に問題なければ、3-4日の入院となりますが、検査に伴い膵臓の負担になるリスクがあり、膵炎が起きた場合には入院期間が長くなります。

内視鏡写真