
鈴木重明 副院長
プロフィール
略歴
1993年3月 慶應義塾大学医学部卒業
1997年4月 慶應義塾大学医学部 助手(内科学・神経)
2003年4月 ニューヨーク医科大学Depar tment of Cell Biology and Anatomy留学
2007年4月 慶應義塾大学 専任講師(内科学・神経)
2019年6月 慶應義塾大学 准教授(内科学・神経)
2025年4月 東京都立神経病院副院長
専門領域
自己免疫疾患、重症筋無力症、炎症性筋疾患、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象
ガイドライン委員
重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン(日本神 経学会)
がん免疫療法ガイドライン(日本臨床腫瘍学会)
スタチン不耐に関する診療指針(日本動脈硬化学会)
受賞
2006年 慶應医学三四会奨励賞
2009年 内科学会奨励賞
2014年 日本神経免疫学会創世賞
2016年 日本神経治療学会活動賞
業績
英文論文数 204編、h-index 54(2025年8月時点)
Google Scholar:論文リスト(外部リンク)

2002年2021年の重症筋無力症に関する英文論文数世界10位 (Yang J et al. Medicine 102:24、2023)
研究費
2000年から現在まで、研究代表者として文科省科学研究費を連続10課題獲得
KAKEN:課題リスト(外部リンク)
研究紹介
自己免疫疾患の中でも以下の3つが研究テーマです。
【重症筋無力症】
キーワード: Japan MGレジストリー、分子標的薬による新たな治療、自己反応性T細胞
重症筋無力症 (myasthenia gravis, MG) は脳神経内科の中で最も頻度の高い、神経・筋接合部における臓器特異的自己免疫疾患です。データに基づく良質なMG治療の実践を目標とする多施設共同研究 ”Japan MGレジストリ ー”を17年以上取り組んでおります(図1)。 現在は、総合花巻病院、都立神経病院、千葉大学を中心に全国で20を超える施設が参加し、MG患者さんの正確な現状、QOLを阻害している要素、治療 の問題点、最適な治療、治療目標の設定などMG患者さんからの視点から多くの研究テーマに取り組んできました。多数の論文発表し、MG診療ガイドライ ンのコンセプトの創出、欧米とのドラッグ・ラグがないように新規の分子標的薬治験を先導してきました。
今後も疾患啓発や、全国で適切な医療を享受できる環境、地域格差の是正などの社会貢献を継続していきたいと思います。

図1.Japan MGレジストリー活動の歩み
基礎的な研究では、自己反応性T細胞の研究、胸腺腫由来のT細胞機能異常に基づく多様な自己免疫疾患、難治性MGに関連するB細胞の変化について研 究を行っております。2005年に、横紋筋肉腫細胞を抗原とした蛋白免疫沈降法を確立し、電位依存性カリウムチャネル(Kv1.4)に対する自己抗体を発見しました。Kv1.4抗体はMGの重症例に検出されるだけでなく、致死的な不整脈を起こすような心筋炎の症例、免疫関連有害事象の疾患マーカーとなります。
検査会社で受託測定を行っておりましたが、諸般の事情があり現在は中断しており、ご迷惑をおかけしております。
【炎症性筋疾患】
キーワード:自己抗体、免疫介在性壊死性ミオパチー、RNA免疫沈降法
炎症性筋疾患(筋炎)は免疫学的機序により筋線維が障害される疾患の総称で、さまざまな病態機序を背景にもつ疾患のあつまりです。
私は国立精神・神 経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部(西野一三先生)と共に「筋炎の統合的診断究」を展開し、自己抗体測定から全国の患者さまの診断に貢献してきました。これまで、自己抗体を切り口として炎症性筋疾患の診断、病型分類、治療などについて研究を進め、その臨床的意義を解明してきました。 近年、あらたな自己抗体の登場や疾患概念に大きな変化がありました。すでに20以上の自己抗体が報告されており、炎症性筋疾患の60%–80%の症例でいずれかの自己抗体が検出されると推測されます。炎症性筋疾患の中でも、免疫介在性壊死性ミオパチー (immune-mediated necrotizing myopathy, IMNM)を主要なテーマにしております。全身の筋力低下が重篤であり、また再発を繰り返すことも多く、現在行われている免疫治療では効果が不十分な患者さんが大勢いるのが現状です。今後は分子標的薬など新たな治療が必要です。多くの自己抗体が存在することは、臨床医の先生にとって「どの抗体を測定 したらいいのか?」と混乱を招く状況になっているものと思います。これらの 自己抗体を一括して測定できるシステムがあればいいのですが、現実的には一 部が保険収載であり、その他は受託測定や一部の研究室でしか測定できないも のがあるのが難点です。我々の施設では、多くの自己抗体を発見するのに役立 ったRNA免疫沈降法による測定法を継続しています(図2)。

図2.免疫沈降法による筋炎自己抗体の測定
【免疫チェックポイント阻害薬による神経障害】
キーワード:免疫関連有害事象、irAE病態解析コンソーシアム、傍腫瘍神経 症候群
がん免疫療法で使用される免疫チェックポイント阻害剤が広く使用されるよ うになり、免疫関連有害事象 (immune-related adverse events, irAE)の 診断と治療はますます重要になってきます。免疫チェックポイント阻害薬によ る神経障害 (irAE)は薬剤を投与されたがん患者さんの3%–5%で出現しま す。多彩な神経疾患が起こるだけでなく、一般的な臨床特徴と異なり、急速に 症状が進行し、重篤な場合が多いです。 私は日本臨床腫瘍学会のirAEガイドラインの委員や免疫チェックポイント 阻害剤を扱っている製薬会社の副作用対策委員を拝命しております。また多方 面の学会における教育講演やシンポジウムでirAEについてお話する機会をい ただいてきました。がん専門医やコンサルテーションを受ける先生方への適切 な理解につながり、微力ではありますが安全ながん治療にお役にたてるよう活 動しております。2017年には、オプジーボが原因で発症するMGの論文を発 表し、主要な全国紙で取り上げていただき(図3)、海外からの多くの研究論 文で参考文献として引用されております(被引用回数415回、2025年8月時 点)。irAEが発症する免疫学的機序については不明な点が多いです。irAEは偶発的 に発症するため、世界的にもまだ研究が進んでいないのが現状です。免疫学的 メカニズムが解明されれば、薬剤と関係のない通常の自己免疫疾患の治療にも役立つ可能性があります。京都大学がん免疫総合研究センターが中心となり多施設共同研究「irAE病態解析コンソーシアム」が開始される予定で、都立神経病院は神経障害の研究を行う予定です。
最近のトピックスとしてがんが原因 で神経障害が出現する傍腫瘍神経症候群と神経系irAEの関連が注目されています。神経障害の原因はT細胞で中心であると考えられますが、自己抗体、特に従来から知られていた神経抗体の関与の可能性があり、今後の研究をすすめていく予定です。

