脳神経内科

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診療科長からのメッセージ

脳神経内科は、脳、脊髄、末梢神経、筋の様々な異常を診療する科です。日本においては、「神経内科」が正式な名称ですが、精神科を表す「精神神経科」、「神経科」、「心療内科」と混同されることが多い状況でした。そこで当院では、「脳神経系」の異常を扱う内科という意味を込め、「脳神経内科」という診療科名を採用しております。

脳神経内科が扱う症状は、(1)意識・認知機能・高次機能の障害、(2)運動機能の障害、(3)感覚機能の障害、(4)自律神経機能の障害、(5)突発性の機能異常、などがあります。傾眠、昏迷、昏睡などの意識レベルの低下から、物忘れや行動異常、知的機能の低下、失語などの症状を扱います。運動機能異常としては、呂律が回らない、嚥下困難(飲み込むことができない)、手足の力が入らない、筋肉がやせる、立つことや歩くことができない、転びやすい、ふらつく、手足がこわばったりつったりする、手足がふるえる、などの症状があります。感覚機能異常は、様々な痛み、しびれ、感覚の鈍さが該当します。また自律神経の症状としては、立ちくらみ(起立性低血圧)、排尿排便障害(何回もトイレに行く、便が出にくい)、発汗障害などがあります。また突発性の症状は、頭痛(緊張型頭痛、片頭痛など)、めまい、痙攣発作、意識消失発作などが含まれます。

脳神経内科が扱う疾患は非常に多く、おそらく数ある診療科の中でも最も多いのではないでしょうか。脳血管障害(脳卒中)は最も多い疾患ですが、そのほか神経変性疾患、脊髄障害(ミエロパチー)、末梢神経障害(ニューロパチーなど)、筋疾患(筋炎・筋ジストロフィーなど)、てんかんなど多岐にわたります。これらの疾患は一般の内科では診断や治療が困難であることが多く、専門医による早期診断、早期治療が必要ですので、該当する方は早めに当科を受診されることをお勧めします。

これらの疾患の中で、とくに神経難病と言われている疾患は当科の専門領域です。厚生労働省は、平成26年に「難病の患者に対する医療等に関する法律」を制定し、現在306疾患を指定難病として医療費助成を行っております。その中で神経難病が占める割合は大きく、当院では難治性・再発性・進行性の神経難病に対して、診断、治療、リハビリテーション、在宅ケア、緩和ケアなどを一貫して提供しています。診断時から通院困難となった進行期に至るまで、長期にわたって継続診療を行っている点が、当院の最大の特徴の一つです。とくに当院は東京都神経難病医療ネットワーク事業の拠点病院に指定されており、通院治療のみならず、必要に応じて在宅訪問診療を行いながら、終末期緩和ケア、人工呼吸器ケア、地域との多専門職種によるチームケアなどを展開しております。

当院の脳神経内科は、豊富なスタッフと検査設備を有しています。日本神経学会認定神経内科専門医および指導医が20名以上常勤医として働いており、脳神経内科領域の広い専門分野をカバーしています。また、若手医師および研修医の指導をおこなっています。詳しくはスタッフの紹介ページをご覧ください。

当院は開設以来、入院専門病院として診療を続けており、外来診療は同じ多摩キャンパス内の多摩総合医療センターにて当院のスタッフが出向いて行っております。このため、神経病院での治療を希望される方は、まず多摩総合医療センターにある脳神経内科外来を受診していただくことになります。高度の専門性を求められる神経難病や希少性疾患についても、セカンドオピニオンを含め積極的に外来で診察をしています。また、筋萎縮性側索硬化症外来、パーキンソン病やジストニアなどに対する脳深部刺激療法外来、多発性硬化症に対する特殊治療の外来なども行っております。また神経病院内では、眼瞼けいれんや顔面けいれんに対するボトックス治療外来や各種治験薬に関する外来を行っております。

当院開設時には原因が不明で治療法がないといわれてきた神経難病も、近年のめざましい医学の進歩により原因の解明が少しずつなされ、新しい治療が導入された結果、完治できないまでも病状のコントロールができる疾患が増えてきました。また当院は、社会・医療制度の変動の中、医療やケアの提供のみでなく、社会福祉政策にも提言をし続け、自らも変革を繰り返してきました。今後神経系の研究や医療技術は急速に進歩すると思われますが、当院としても診療、教育、臨床研究において地域貢献するとともに、国内・国外に向けた情報発信をこれからも続けていきたいと考えています。

脳神経内科部長 菅谷慶三